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第二章 勧善懲悪
13.ウサミミちゃん救出作戦②
しおりを挟む「くっ……この男! 法律をなんだと思って」
「法律がなんだ、ルールがなんだリーゼント野郎! 言っておくが、法律なんざ人間の倫理を守る一つの価値観に過ぎないんだよ! 間違ってる倫理に物申して何が悪い!」
俺はこれでもかとイラつく顔を見せ、リーゼント男を挑発した!
「……貴様ぁっ!」
リーゼント男は俺の腹を殴り、もの凄いスピードで俺の胸を何度も殴り続ける!
「ぶはぁっ!」
鼻から、口から、耳から、至るところから血が吹き出していく!
内臓やられた、うんこが腹の内でグルグルしてる!
「はぁっ、はあっ! これで分かったか馬鹿が! この獣人(ペット)を守りたいか知らんが、お前にはそもそも守る力が無い! 秀でた能力もない、口先だけの戯け者だ!」
「そうですよ、俺はウツケもウツケ、大ウツケ! 殴られるだけのサンドバッグだ! どうだ人間、お前らの倫理は崩壊したか?」
「っこの、まだ分からんか!」
リーゼント男は俺の髪を掴み、足を思いっきり振り上げた!
あー、多分だけど膝蹴りを顔に当てるつもりだ。
この分だと俺の顔面は砕けてバケモンみたいになるんだろうな。
嫌だなぁ、整形でどうにかなるかしら。
「そこまでだ」
「あ、兄貴っ!」
スキンヘッド男が声を発した途端、興奮して我を忘れるリーゼントが止まる。
「……少年。随分と堂々としているが、死は怖くないか?」
スキンヘッド男は俺の胸ぐらを掴むと、俺の体が宙に浮く!
こいつ、ありえないくらいの馬鹿力だ!
「へっ。たかがお前たちみたいな心無い人間に殺される俺じゃないってだけさ」
「ほう。自殺願望は別に否定はしない。ただ、疑問だ。獣人(ペット)を何故庇う?」
「可哀想だからに決まってんだろ! 法に触れようが何だろうが、傷つけていい理由にはならない! 謝ればいい! お前らがウサミミちゃんに謝れば俺は手を引いてやる!」
「理解しかねるな。家畜と同等レベルの劣等種にどうして言葉をかけられる? 気にかけられる?」
「家畜じゃない、彼女は今日も必死に生きてる! それを否定するお前たちの方がよっぽど畜生だろ!」
「ほう。面白い言い回しだな。その遺言、確かに受け取ったぞ少年?」
――すると、スキンヘッドの右手が急に光り輝き始め、閃光が辺りを覆っていく!
「グリオ・グランデ・ネチフソ・イネヌム・ネーユコイネソ・ガザル」
「あ、兄貴! マジで殺すんすか!」
魔法の詠唱だ!
それも、煉獄のような弾がウネウネしてる!
こんなの食らったら、俺の体が砕け散ってなくなるんじゃないか?!
「自殺志願者は、1人で死ねないらしい。俺が手助けしたと報告すればいいだけのこと。それに、周りの傍聴人も快く証言してくれるだろう」
バスケットボール大の小型太陽が俺の目の前でメラメラと燃えている!
炎魔法なんて食らったら、俺の着ている一張羅のコートが燃え切ってしまうぅ!
「やめてください、もういいんです!」
「「「「?!?!」」」」
――その声は、小さく丸まって泣きじゃくる金髪のウサミミちゃんだった。
「もう、いいんです。私は獣人(ペット)です。フードで身を隠しながらここまで来てしまった私が悪かったんです。だから、その人を殺さないでください!」
う、ウサミミちゃん……。
「だ、そうだ。獣人(ペット)がそう言ってる。お前はすでに守る者を失った愚か者だ。殺す価値を見失った」
スキンヘッド男は発動しかけていた火炎弾を押し殺すと、俺を地面に向けて投げ飛ばした!
あっ、今、腰から変な音がした!
「情けねぇの! 守りたい奴から守られてやんの! ダッセェー!」
「ふん。久々に弱者を殴ってしまった。経歴が汚れるではないか」
モヒカンとリーゼントは俺にそう吐き捨て、行くスキンヘッドについていく。
「痛いっ! 耳を掴まないでください! 千切れるっ!」
「黙れ、獣畜生風情が」
スキンヘッド男は、ウサミミちゃんの耳を鷲掴みにすると、彼女が爪先立ちをしないといけない高さまであげたのだ!
どこまでも、どこまでもこいつらは!
「もう、見ていられません! ノベル、アズちゃんがこの人たちを!」
「俺が、この街のマスターになる!」
俺はそう叫び、もう一度その場に立ち上がった。
ここまで来ると、逆に殴られてみたくなってしまった。
って言うことにしておいて欲しい。
俺が狂人かどうかは読者の人たちに査定してもらう。
どうせ物語の主人公なんざ、他人に評価されてバカとかアホとか罵られる立ち回りなんだからな。
――ただ、そのバカなところを気に入ってもらえるって利点も、主人公って立ち位置にはあるんだよ!
「俺が法律を作ってやる! 獣人は可愛い、愛しい、みんなが大好きな種族だってな!」
俺は3人に大声で宣言してやった!
何があっても、あのウサミミちゃんは助けてみせる!
それくらいの見せ場はくれよ、ノベルメイカー!
「おい。コイツの耳を掴んでいろ」
「あっ、アニっ」
――瞬間、今までに感じたことがないような速さで俺は地面に叩きつけられた!
スキンヘッドの男に殴られたんだよな?!
何も見えなかった!
それも、リーゼントの時とは違う、純粋なパワーによる加速だ!
「俺はな、弱者の威勢が一番嫌いなのだ」
「はぁっ、はぁ! 俺は獣人の住みやすい街を作るぞ! マスターってやつの鼻をへし折ってやる!」
「マスターの法律は絶対だ童! これ以上何か言えば、貴様を獣人(ペット)の地位まで降格させてくれるっ! 全裸で首輪をし、小便をしろ、糞を尻に擦り付けろ! それが獣人(ペット)の有るべき姿なのだ! ぬはははははっ!」
スキンヘッド男は俺を踏みつけると、石畳は砕け散って体が沈み込んでいく!
「うがぁぁぁぁぁぁ! 息ができねぇ! もう少し下の方を踏んでくれぇ!」
「ぬはははは! この後に及んで面白い鳴き声さなぁ! さぁ、言うのだ! 『畜生めが間違っていた』と! 法律に逆らう愚か者だと認めろ!」
「嫌だ! 俺が愚か者であることは認めてやる! その代わりに獣人も絶対に認めてもらうぞこのクソハゲっ!」
ラノベあるある言いたい。
大体のラノベでは、優等種がいれば劣等種が存在する。
強者が弱者を虐げる様がなければ、強者が本当に強いのかどうか読者からは分からないからである。
その設定が物差しになり、やっと物語に緩急が現れるのだ。
だが、俺はその現状に嫌気がさしていた。
どうして虐げられなければならないのか?
なぜカーストが誕生するのか?
人間は理性があり、ルールを設ける。
だからこそ、自然に権力が生まれるのも分かる。
だが、見えない何かでねじ伏せて良い命は絶対に存在しない!
生きているのならば、平等である!
「俺が法律だ! 獣人は可愛いっっっっ!」
「っ童ぁぁぁぁぁぁ!!」
「はい、それまでっス!」
すると、突然、俺とスキンヘッドの間に男が現れたのだ!
見た感じ、かなり階級が高い貴族か?
髪の毛の色は赤で、いかにも強そうな立ち振る舞いだ。
凛々しさが自信に溢れた顔から伝わってくる!
この男、一体何者だ!
「はっ、イレイザー様?!」
「どうして2課の君たちがこんなところにいるんすか? なんで一般人を嬲ってるんスか? こんなに傍観者を集めて何かのショーっスかね? ちゃんと説明できるだけの理由があるっスよね?」
綺麗で真っ白なロングコート!
背中には大きな紋章が描かれており、その紋章は確か宮殿のステンドグラスで見たぞ!
やっぱり、この街を統べる人間の配下だ!
それに、このスキンヘッド男に対して今、『2課』って言ったよな?!
それってつまり……!!
イレイザーってやつの部下なのかコイツ?!
すなわち、チンピラ三人衆は傭兵ってことなの?!
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