58 / 78
第七章 ノベルvsイレイザー
55.攻略法
しおりを挟む「……ノベルくん!」
どうやらイレイザー君は不意打ちにめっぽう弱いそうですね。
あら、一体なぜなのでしょう?
さっきは上空に5丁の銃を召喚して速射したのに、全て躱してしまいました。
あれあれ、不意打ちだったらその攻撃は躱せないの?
全く同じパターンの攻撃ですけど?
「まず、1つ目の疑問。イレイザーはなぜ学生の時に、初歩的な魔法を覚えずにいきなり最強呪文を覚えようとしたか?」
「……なんスか、何が言いたいんスか!」
「だって、不思議だろう? 初級魔法は全ての基礎になる。親父が言ってたぜ、『初級魔法は詠唱が短い』ってな!」
◆
――昨日、俺と親父は、宮殿のベランダで駄弁っていた。
その時の会話だ。
『それにしても、タクヤはなんで詠唱を簡略化したんだ? 初級魔法を覚えずにいきなり上級魔法を使いたかったのか?』
『え? 詠唱ってレベルで長さが違うのか?』
『そりゃそうだろう! 初級なら2秒、中級なら5秒、上級なら10秒は詠唱が必要になる』
『え、そんな感じなの?! イレイザーの詠唱が異常に長いから、全部の魔法の詠唱がクソ長いって思ってた』
『ンなわけないだろう。イレイザー君は上級魔法をバンバン撃つ様な天才だからな。逆に、初級魔法は一切覚える気はないらしいぞ』
◆
「俺は甚だ疑問だった! 瞬発力がいる様な近接戦闘において、コンパクトな技を持ち入りたいのは世の常だ! 馬鹿長い詠唱呪文なんて唱える暇なんぞお前には無いはずだ!」
「……ノベルくん!」
『必中会心』!!
――そして俺の目の前に突然現れたイレイザーは俺の体を目掛けて一撃を入れてくる。
だからこそ、俺には好都合な相手だ!
「ぐばぁぁぁっ!」
俺の目の前にいたはずのイレイザーは、瞬きすると空中に飛んでいる。
あーあ、これでイレイザー攻略だ。
「さて問題。なぜ俺の攻撃が当たったでしょう?」
「……条件付き罠技っスか?!」
イレイザーは全身から組織液を流し、通常の亜人族と同じような回復力で傷が癒えていく。
あらあら、先ほどのあの速攻回復はどうしたよ?
「そういうことだ。イレイザーが俺の間合いに入ってきた瞬間、俺の目の前を撃つように召喚した銃にプログラミングしたってことよ。速攻回復をしなくなった感じ、そろそろ魔力は限界か? 前に言ってたもんな、全快魔法は『魔力の消費が激しい』って」
「ぐぅ……要らないことばかり覚えてる人っスね!」
「ははは! 甘えいんだよなイレイザーは! ラノベのキャラにしては攻略するヒントがあまりにも多すぎる! 自分がこの町で2番強いって過信しすぎてベラベラ情報垂れ流しすぎ! 俺を敵に回すことを一切考えてない最強拳法使い! 演技は下手くそ、矛盾だらけ! そんなんじゃ、クソラノベだって叩かれるぞ!」
俺の間合い半径50センチ以内に生体反応があると自動的に引き金を引くプログラムを作った。
この能力もステイプラーから受け継ぎ済みだ。
彼女が本当に昼寝をしている間は、街中に置いてあるフリントロック式銃は自動操銃に設定が切り替わるらしい。
悪意を感知すると弾を発射する能力……それを俺が応用して使って見せた。
「気付くとイレイザーはいつも間合いにいる。気付くといつも傷が回復している。攻撃が躱せる時と躱せない時がある。――近距離戦闘が主流なのに、詠唱が極めて長い魔法を覚えても問題がない特有魔力……。そりゃ、『爆撃や雷撃』みたいな無作為広範囲の持続魔法がなきゃイレイザーには勝てないかもな?」
「もういいっス! 遠慮なく仕留めさせてもらうっス!」
イレイザーは血眼になって俺を倒さんとしている!
その様子を見てもう何もかも理解した。
全部が全部、図星過ぎて適切な判断ができなくなってきてる!
そういうところが甘いんだよなぁ、拳法使い!
「2つ目の疑問。どうして超絶高速移動ができるイレイザーに『不意打ち』だったら弾が当たるか?」
「あぁぁぁぁぁぁ!」
イレイザーの焦りは頂点に達した!
物凄い速さで俺の前を駆け巡り、いつ俺の間合いに入ってくるか分からないこの状況!
至る所にイレイザーが映り、どれが本物の彼なのかわからない!
――まぁ別に不意打ちじゃなくても良い。
とりあえず、俺ですら予想できない様な乱れ技をイレイザーに向けてりゃ良いんだよ!
「じゃあ、銃弾の乱れ桜! いくぜイレイザー!」
俺は本当に適当な方向に銃を召喚し、何も考えずに撃ち放った!
俺の魔力も残りわずか!
魔力の消費を最小限に抑える威力と最低品質鉛弾だ!
500発!
残りそれだけ撃っちまえばもう俺には魔力は残ってねぇ!
あと何発弾を当てれば、あいつの考え方を変えることが出来る?!
「ノベルくん! 君のその判断力と洞察力には感動したっス! ただ、僕の能力が分かったところで状況は何も変わらない! 君は僕の姿を捉えられずに致死の一撃を受けて終わりっス!」
ほいきた、『致死の一撃』!
イレイザーは次の一撃で確実に仕留めに来る!
ならば狙うは100%急所、『瞬間強化』を利用した防御策を貫通して、なお戦闘不能にさせる確実な一撃を放ってくる!
それなら話は早い!
急所なんて言うて数少ない!
的が絞れてさらに対策がしやすい!
乱射した弾はほとんどが当たらないが、まれに風景に組織液が飛び散る!
つまり、闘技場を高速で駆け回るイレイザーには何発か当たっている証拠だ!
俺にはもはや彼の動きなど微塵も見えない!
早いも何も、彼がどこにも見えないのだ!
まるで、俺の視界から消え失せてしまったかの様にな!
残り100発ほどしかフリントロック式銃の弾が撃てないことを感じ取った俺は、ベルトに貼り付けた四次元バッグから長い長い最終兵器を取り出した。
これが、俺の考える第2の策だ!
これでも無理なら、俺はもう勝ち目は無い!
0
あなたにおすすめの小説
【完結】487222760年間女神様に仕えてきた俺は、そろそろ普通の異世界転生をしてもいいと思う
こすもすさんど(元:ムメイザクラ)
ファンタジー
異世界転生の女神様に四億年近くも仕えてきた、名も無きオリ主。
億千の異世界転生を繰り返してきた彼は、女神様に"休暇"と称して『普通の異世界転生がしたい』とお願いする。
彼の願いを聞き入れた女神様は、彼を無難な異世界へと送り出す。
四億年の経験知識と共に異世界へ降り立ったオリ主――『アヤト』は、自由気ままな転生者生活を満喫しようとするのだが、そんなぶっ壊れチートを持ったなろう系オリ主が平穏無事な"普通の異世界転生"など出来るはずもなく……?
道行く美少女ヒロイン達をスパルタ特訓で徹底的に鍛え上げ、邪魔する奴はただのパンチで滅殺抹殺一撃必殺、それも全ては"普通の異世界転生"をするために!
気が付けばヒロインが増え、気が付けば厄介事に巻き込まれる、テメーの頭はハッピーセットな、なろう系最強チーレム無双オリ主の明日はどっちだ!?
※小説家になろう、エブリスタ、ノベルアップ+にも掲載しております。
【完結】発明家アレンの異世界工房 ~元・商品開発部員の知識で村おこし始めました~
シマセイ
ファンタジー
過労死した元商品開発部員の田中浩介は、女神の計らいで異世界の少年アレンに転生。
前世の知識と物作りの才能を活かし、村の道具を次々と改良。
その発明は村の生活を豊かにし、アレンは周囲の信頼と期待を集め始める。
異世界ほのぼの牧場生活〜女神の加護でスローライフ始めました〜』
チャチャ
ファンタジー
ブラック企業で心も体もすり減らしていた青年・悠翔(はると)。
日々の疲れを癒してくれていたのは、幼い頃から大好きだったゲーム『ほのぼの牧場ライフ』だけだった。
両親を早くに亡くし、年の離れた妹・ひなのを守りながら、限界寸前の生活を続けていたある日――
「目を覚ますと、そこは……ゲームの中そっくりの世界だった!?」
女神様いわく、「疲れ果てたあなたに、癒しの世界を贈ります」とのこと。
目の前には、自分がかつて何百時間も遊んだ“あの牧場”が広がっていた。
作物を育て、動物たちと暮らし、時には村人の悩みを解決しながら、のんびりと過ごす毎日。
けれどもこの世界には、ゲームにはなかった“出会い”があった。
――獣人の少女、恥ずかしがり屋の魔法使い、村の頼れるお姉さん。
誰かと心を通わせるたびに、はるとの日常は少しずつ色づいていく。
そして、残された妹・ひなのにも、ある“転機”が訪れようとしていた……。
ほっこり、のんびり、時々ドキドキ。
癒しと恋と成長の、異世界牧場スローライフ、始まります!
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
痩せる為に不人気のゴブリン狩りを始めたら人生が変わりすぎた件~痩せたらお金もハーレムも色々手に入りました~
ぐうのすけ
ファンタジー
主人公(太田太志)は高校デビューと同時に体重130キロに到達した。
食事制限とハザマ(ダンジョン)ダイエットを勧めれるが、太志は食事制限を後回しにし、ハザマダイエットを開始する。
最初は甘えていた大志だったが、人とのかかわりによって徐々に考えや行動を変えていく。
それによりスキルや人間関係が変化していき、ヒロインとの関係も変わっていくのだった。
※最初は成長メインで描かれますが、徐々にヒロインの展開が多めになっていく……予定です。
カクヨムで先行投稿中!
スライムすら倒せない底辺冒険者の俺、レベルアップしてハーレムを築く(予定)〜ユニークスキル[レベルアップ]を手に入れた俺は最弱魔法で無双する
カツラノエース
ファンタジー
ろくでもない人生を送っていた俺、海乃 哲也は、
23歳にして交通事故で死に、異世界転生をする。
急に異世界に飛ばされた俺、もちろん金は無い。何とか超初級クエストで金を集め武器を買ったが、俺に戦いの才能は無かったらしく、スライムすら倒せずに返り討ちにあってしまう。
完全に戦うということを諦めた俺は危険の無い薬草集めで、何とか金を稼ぎ、ひもじい思いをしながらも生き繋いでいた。
そんな日々を過ごしていると、突然ユニークスキル[レベルアップ]とやらを獲得する。
最初はこの胡散臭過ぎるユニークスキルを疑ったが、薬草集めでレベルが2に上がった俺は、好奇心に負け、ダメ元で再びスライムと戦う。
すると、前までは歯が立たなかったスライムをすんなり倒せてしまう。
どうやら本当にレベルアップしている模様。
「ちょっと待てよ?これなら最強になれるんじゃね?」
最弱魔法しか使う事の出来ない底辺冒険者である俺が、レベルアップで高みを目指す物語。
他サイトにも掲載しています。
酒好きおじさんの異世界酒造スローライフ
天野 恵
ファンタジー
酒井健一(51歳)は大の酒好きで、酒類マスターの称号を持ち世界各国を飛び回っていたほどの実力だった。
ある日、深酒して帰宅途中に事故に遭い、気がついたら異世界に転生していた。転移した際に一つの“スキル”を授かった。
そのスキルというのは【酒聖(しゅせい)】という名のスキル。
よくわからないスキルのせいで見捨てられてしまう。
そんな時、修道院シスターのアリアと出会う。
こうして、2人は異世界で仲間と出会い、お酒作りや飲み歩きスローライフが始まる。
真祖竜に転生したけど、怠け者の世界最強種とか性に合わないんで、人間のふりして旅に出ます
難波一
ファンタジー
"『第18回ファンタジー小説大賞【奨励賞】受賞!』"
ブラック企業勤めのサラリーマン、橘隆也(たちばな・りゅうや)、28歳。
社畜生活に疲れ果て、ある日ついに階段から足を滑らせてあっさりゲームオーバー……
……と思いきや、目覚めたらなんと、伝説の存在・“真祖竜”として異世界に転生していた!?
ところがその竜社会、価値観がヤバすぎた。
「努力は未熟の証、夢は竜の尊厳を損なう」
「強者たるもの怠惰であれ」がスローガンの“七大怠惰戒律”を掲げる、まさかのぐうたら最強種族!
「何それ意味わかんない。強く生まれたからこそ、努力してもっと強くなるのが楽しいんじゃん。」
かくして、生まれながらにして世界最強クラスのポテンシャルを持つ幼竜・アルドラクスは、
竜社会の常識をぶっちぎりで踏み倒し、独学で魔法と技術を学び、人間の姿へと変身。
「世界を見たい。自分の力がどこまで通じるか、試してみたい——」
人間のふりをして旅に出た彼は、貴族の令嬢や竜の少女、巨大な犬といった仲間たちと出会い、
やがて“魔王”と呼ばれる世界級の脅威や、世界の秘密に巻き込まれていくことになる。
——これは、“怠惰が美徳”な最強種族に生まれてしまった元社畜が、
「自分らしく、全力で生きる」ことを選んだ物語。
世界を知り、仲間と出会い、規格外の強さで冒険と成長を繰り広げる、
最強幼竜の“成り上がり×異端×ほのぼの冒険ファンタジー”開幕!
※小説家になろう様にも掲載しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
