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3話 時間魔法

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「今日も御指導、ありがとうございました!!!」

「あぁ、お疲れ様。午後はゆっくり休んでくれ。」

「はい!」


「それにしても、ルーク様は相変わらずすごい方だな。12歳なのに私たち騎士団では全く歯が立たない。」

「次期公爵様は間違いなくルーク様だな。」

「バカ、ルーク様はキース様に爵位をお譲りになるって話知らないのか?」



 俺は現在、毎朝9時から12時までの3時間、騎士団や魔法師団などオニキス家の兵士たちと実戦訓練をしている。

 それもこれも面倒事を避けるためだ。

 実戦訓練自体は別にどうということは無い。

 10歳の頃から加わり始めたのだが、最初はこっちの攻撃は当たらないのに、相手の攻撃は当たるわ と悲惨な状態だった。

 しかし、当たる直前に時間を少し戻し回避して、攻撃が外れる時も同様に時間を戻した。

 そうしていると兵士たちの目には「10歳にして攻撃を全て避け、全て当てる大大大天才」という風に映っていただろう。

 そうすることによって、兵からのかなりの尊敬が得られ、今後、俺がぐーたら過ごしても何も文句を言わなくなるという算段だ。



「ルーク、今日もご苦労だったな。ルークのおかげで兵士の士気も上がり、実力も上がり、感謝してるよ。」

「いいんだよ父さん。好きでやってる事だし、俺は公爵の椅子に座って偉そうにしてるより、身体を動かす方が性に合うからね。」

「さりげなく父に公爵にならないというのを伝えないでくれるか息子よ。」

「次の公爵はキースだよ。優秀だしキースならいい領主になるさ。」



 俺が長男でさえなければ、間違いなくこの次期公爵問題は完全解決したが、というしきたりが残っている以上はこれを覆すのがなかなかに難しい。



「もちろん、キースも才能でいえばルークに負けず劣らずというのはわかっている。しかし、優しすぎる。あまりにも優しすぎる。故にその身を滅ぼしかねないんだよ。」

「だから、そこは俺が支えるって。全部をやらせるわけじゃない。キースに出来ないことがあるなら、その時は力を貸すさ。」

「それなら、ルークがなってもいいのではないか?」

「嫌だよ、俺は自分のペースで過ごしたいんだ。それに、領民を優先的に考えたりなんてのは性にあわないからさ。」


 俺はどんな手を使っても楽をする。

 しかし、この身分に生まれてしまった以上はある程度の厄介事は覚悟している。

 だが、領主にだけはならないぞ。しかも公爵なんて位の高いのになろうものなら、厄介事なんて無数に発生するに決まっている。



「とにかく、俺はやる気ないから。いくら父さんの命令でもそれは嫌だよ。」
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