「転送」しか使えない天才高校生が異世界で国王として召喚されたけど、異世界ってもしかして天才からしたらちょろいですか?

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01.天才の異世界召喚

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「くっそ、つまんねぇな。この世界はなんでこうもつまらないんだ。ゲームの中みたいに特殊な力でもあれば……ってつまんなすぎて馬鹿みたいなこと考えちまったよ……。」


 そう言って愚痴りながら学校の帰り道を歩いているのは五歳にしてIQは測定不能の超天才の高校三年生の白田しろた 蒼馬 そうまである。




「おっ、急に目の前が真っ暗……」









「なんだ……夢か………………ってここはどこだよ。」


 蒼馬の目の前が真っ暗になったと思ったら、次の瞬間にはどこかの城の王座のようなところにいた。



「新王よ!!!」

「お前は誰だ?」


 興奮気味に蒼馬に話をかけてきたのは髭を蓄えた四十歳手前くらいの鎧を纏った屈強な男だった。

 周りを見渡すと見たことも無い豪華な装飾がされた大きな広間にいて、蒼馬は一番高い位置にある椅子に座っていた。



「申し訳ありません、興奮のあまりに名乗るのを忘れておりました。私はこの国「ギランド」の総司令官の"バドス"と申します。」

「で、これはどういうことだ?」



 蒼馬は至って冷静だった。むしろ、目が覚めた瞬間に見覚えのないところへいるという非現実的な現状にひそかに胸を躍らせていた。




「実は…………。」



 バドスが蒼馬に何が起こり、蒼馬がここに来たかを説明した。




 ここは「ラクトス」と呼ばれる世界で獣人族、長寿族、神族、悪魔族、竜族など人間以外の知的生命体が存在する場所だった。


 生命体の九割は「異能」という特殊な力を与えられる。その力は生まれた瞬間から呼吸をするかのように使い方が理解でき、同じ異能が存在しない唯一無二のものなのだという。


 ギルギースという異能「英雄召喚」によって、男の命と引き換えに蒼馬が召喚されたのであった。


 召喚された理由は「現王が亡くなり、ギランドが周辺国から侵略される可能性が極めて高い」という絶体絶命な状況を打破するために英雄に託そうという決死の覚悟からきたものだった。
 



「つまりはその超常的な力の「異能」とやらで男の命を引き換えに俺がこの世界に連れてこられたってことだな?」

「左様でございます。」

「それで、その異能っていうのは俺にもあるのか?」

「はい、あるはずでございます。担当のものを連れてきましたので、確認してみましょう。」


 バドスの後ろにいたのは眼鏡をかけた青髪で青い目をした小柄で華奢な女の子だった。



「私はユリと申します。異能は「心眼」といい、全ての物事の本質を見抜くことができます。」

「ではユリ殿よ、早速頼むぞ。」

「はい。」


 ユリは蒼馬を見ると、ユリの目は青から赤色に変色した。



「ご尊名はシロタ ソウマ様というのですね。そして異能は「転送」ですね。任意の場所へと物質を移動させられる異能でございます。」

「ソウマ様、なんと素晴らしい名を。しかし……異能は……。」


 異能を聞くやいなやバドスやユリ、周りの兵士の顔色が少し悪くなっていた。



「あぁ、任意の場所へと移動させられるか。違うな、俺はまるで昔からこの力を使えたかのように身体が使い方を覚えてるんだよ。」



シュンッ



「ソウマ様?!?!」



 蒼馬は召喚された場所から姿を消した。



シャッ



「お前、戦場なら死んでるぞ?」


 蒼馬は剣をバドスの首元へと突きつけていた。


「いったい何が起こったのですか……。」


 この場にいたもので蒼馬が何をしたか理解していたものは存在していなかった。


「異能を試したんだよ。剣と俺自身をあんたの後ろへと転送した。異能ってのも便利なもんだな。」


 そう言って、バドスの腰の鞘を指さした。



「この国、ギランドだっけ?救ってやるよ、ちょっとは楽しめそうだ。」



 こうして天才高校生の蒼馬の異世界での生活が始まった。

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