異世界では副業で国家運営しています

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1話 国家運営

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「主には国を創ってもらいたい!!」

「え、普通にめんどくさいので嫌ですけど………。」



 俺は未空みそら 海斗かいと、27歳のマネージメント会社の社長だ。

 さっきの会話は神様と自称する者との会話だ。いわゆる異世界転移というもので、転移先の世界で俺のマネージメント能力を発揮して国を運営して欲しいとの事だった。

 

 俺は昔から「ものづくり」がしたかったが、手先の病気で上手く道具を操れなかった。だから、自分の出来ることを仕事にした。

 神様は俺を健康体にしてくれることとものづくりの能力を高めるな力を与える代わりに国家運営をしてくれと交渉してきた。










 そして、この出来事から3年の月日が経った。



「カイト王!!!本日は会議ですぞ!!」

「だから!俺は出ないって。お前らに仕事は任せるって言っただろ!!!」

「そんなこと仰らないでくださいよ!早く行きますぞ!」


 この俺の腕を引っ張ってくる白髪の鎧を纏ったおっさんは退役した前騎士団長だ。頭が切れて腕も立つから今は俺の補佐兼国王代理をしてもらってる。

 そう、つまり現国王は俺ってこと……。


 遡ること3年前、俺は異世界に転移させられ、ものづくりの力と交換でこの世界に送られたことはさっき話したが、その転移先で俺は王として扱われていた。

 どうやら、神様が手を回したみたいでやらで「新たな王をおくる」ってことをこの国に言いふらしやがったんだってよ。

 そうしてダラダラと王をやらされて今に至るってわけだ。


「俺は新しいを作るために研究をしなきゃダメなんだよ!!」

「それよりも王としての務めを果たしてください。」

「だから!俺は王を去年でやめるっていっただろ!任期は2年だって言ったのに、3年もヤラセやがって。もうやらないからな。」

「貴方が王をやめれば、この国はまた傾きだします。貴方がいなければこの国は終わりです!!」

「終わらねぇよ。終わらないために俺が3年間やってきたんだよ。」




 なんだかんだ愚痴をほこぼしたもののこの老体の方が頑固だから会議には出ることにした。



「あぁ、疲れた。本当に俺は辞表を書くからな。お前らが追いかけてくるなら、俺は全権力を使って逃げさせてもらう。」


 俺はそろそろ隠居してゆっくりとものづくりに勤しみたいのに、この国、「シュリンガ王国」は俺を離してくれない。


「国王様、明日は軍法会議がありますゆえ、お忘れなく。」


 このゆっくりと俺の後ろから気配を消して近づいてきた190cmくらいの緑髪高身長イケメンはユグドという。こいつが現騎士団長をしている若き天才だ。


「だからさぁ、お前がやれって!騎士団長なんだから、お前がうちのやつらをまとめればいいだろ!」

「いえいえ、私程度の頭脳ではまだ国王様には及ばぬゆえ、国王様が直々に指揮をとるのがよいかと愚考します。」

「本当にそれは愚考だ。お前がやれ。国王命令だ。」

「お断りさせていただきます。」

「なんでだよ!国王命令を断るやつがあるか!」

「この国のためですから。」



 そう、こいつは出来るやつなのだが、できるが故に自分より上のものを頼るくせがある。

 いや、どちらかというと今まで自分より上のやつがいなかったから、出来たことが嬉しくて頼ってくるという、何とも迷惑なやつだ。

 出会った頃なんかは俺の事を軽蔑するかのような目で見てきやがったのに、今となってはこれだ。確かに実力を色眼鏡なしで認められるところは俺も買っている。








~2年半前~



「カイト王よ、こちらが我が騎士団でございます。」


 俺は王になってから半年で内政を整えた。と言ってもまだ途中だったが、技術力の向上や雇用の増加、治安安定は結果が出始めて、それを周りからも評価されてきた。

 内政で忙しかったこともあり、この日に初めて自分たちの軍を見ることとなった。

 基本的には騎士団と呼ばれるものが戦場へ出て戦う。その騎士団視察をしに来た時に俺はユグドと出会った。



「かなりハードな訓練をしてるんだな。」

「えぇ、国を守るためにはこれくらいは当然です。」

「訓練内容をまず変えろ。これじゃあ、この国は守れない。全員、同じような訓練をしてれば、同じ騎士しか出来ないぞ。俺の国にはって言葉があってだな……。」



 こうして、騎士団を見に行った時にアドバイスをした。

 騎士の訓練の改善、休養日の制定、役割別の部隊分けなどなど…

 ここでユグドから目をつけられることになった。というか、意識の高い騎士からは「騎士の事もわからないやつが口を出すな」と騎士に誇りを持つものから反発された。




「お前がユグドっていうのか。平均入隊が24歳の騎士団に16歳で入団した若き天才というのは聞いている。俺のやり方に不満があると?」

「えぇ、僭越ながら貴方のやり方では騎士団が弱くなります。」

「何を根拠に?」


 こうして、2.3時間くらいユグドと話した。


「理論はわかったが、いまいち信用出来ないって面だな。わかった、では、俺に騎士団の中で弱い3人を1ヶ月預けてくれ。下から3番のヤツらを上から3番にしてやる。」



 俺はスポーツ学とマネージメント力を駆使して、死ぬほど強くした。

 そして結果はお察しの通りだ。



「国王様、これはどういう理論なのでしょうか。」

「あのなぁ、俺は他にもやることがあるんだ。お前は優秀だが、下っ端の騎士なんだ。俺に話を聞いて欲しければ騎士団長にでもなれ!!!」



 ユグドは俺を認めて話を聞いてくるようになった。それがうざくて俺はついこんなことを言ってしまった。それが運の尽きと言うやつだ。

 やつは「最短でなる方法を教えてください。これが最後の質問です。」というから、教えてやるとあっという間に半年で騎士団長へと昇格した。

 そして、ここから先は先程見てもらった通りの関係が続いているって訳だ。


 早く俺にものづくりをさせてくれ。


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