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僕のα

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 先生達がドアを出て行く時、あの香りがした。
気を失う前に嗅いだ、あの香りだ。
…いいや、その前にも…そう。…四季君を迎えにきた看護士についてきた。

 ドアの外、1つ目の部屋で声がする。あの香りの主が先生達と話しているのだろう。

…あぁ。ドキドキしてきた。

 
 
 ノックが聞こえる。香りが先に僕に届いた。
そう。…この香り。僕を包んでくれた!

 少し緊張したように入っていた人は、とても大きな人だ。真っ黒な髪に、切れ長の目はちょっと怖そうにも見える。

 僕のいるベッドの横で膝をつき目線を会わせると、じっと見つめてくる。僕の名前を呼んだ声は、とてもハスキーで甘く聞こえた。
 晃一さんは、今日僕と待合室で話をしていた四季君のお兄さんだった。

 「四季を迎えに来たときに気づいたよ。ここに、私の番がいると。どうしても会って、話をして欲しかった。急な事で戸惑うかもしれないけど、私は空、キミが欲しい。」

 会ったばかりで困るのは解るが、受け入れて欲しい。焦らせるつもりは無いと告げながら、僕の手を握り瞳を合わせる。
 
 僕は絶対、真っ赤になっていたと思う。
真摯な態度に心打たれて、つい「はい。喜んで」と
答えそうになるのを既の所でこらえた。

 …邪魔者でしかない。…役に立たない。
今まで言われ続けていた言葉が頭を過る。
 …気持ち悪いヤツ。最近よく翔に言われていた。

 僕の気持ちが表情に現れていたのか、晃一さんは僕の頭を撫でながら「心配いらない、私を信じて」
そう言ってくれた。

 僕の頭を撫でる大きな手を感じながら、僕の頭はボーっとなってくる。
 そっと後頭部にその手が周り、頭を支えながら体を横にしてくれる。

「薬が効いてきたみたいだね。お休み。良い夢を。また、明日会いに来るよ。」
額に続いて頬に、暖かくて柔らかいものを感じる。

……なんだろう、気持ち良いな…。
たぶん、僕は幸せになれる。
 そう思いながら眠った。



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