夢は果てしなく

白いモフモフ

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マナーのお時間

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 僕たちはガブリエルがこういう場に相応しい格好が分かるということに安心していた。

「ねぇガブリエル。僕たちはマナーもわかって無いから、帰ったら色々と教えてもらえる?」

 僕が今後、後宮の女官として働く事になってもマナーは必要だろうというと、リアンも自分も教えてほしいと言った。

「勿論いいよ。……そうだね、もしかしたら他にも知りたい子がいるかもしれない。今日の夕食の時でも聞いてみようか?」

「うん。でもいきなり厳しくしないでね?」

 こんな話をしながらドレスを見て歩く。
ここは既製品のドレスを売る場所で、色分けで置かれている。サイズも大まかに別れていて、ここはサイズの小さい物ばかりだ。そのせいか色も派手なものは少なく、僕としては選びやすい。仕立てをお願いするとどうしても大金貨3枚はするがここのなら大金貨1枚ですむのも助かる。

 ……こんなに立派な物で大金貨1枚なら、仕立ててもらわなくても充分だよね?

 僕の思っていた事が顔に出たのか、ガブリエルが答えをくれた。

「ここの物で品質は充分だよ。デザインもすごく古い訳でもないから場に合ってると思う。でも人によっては新しい物でないと嫌という人もいるし、最新のデザインでないと、という人もいるからね。でも、今回は正装でしょ?正装というのは最新のデザインにしてしまうと失礼になる場合もある。貴族社会は伝統を重んじるからね。古い物のなかに新しさをどう入れるかでセンスを見られる事もあるよ。」

「……センス……。不安しかないよ。」

 リアンも僕もしょぼくれている。

「大丈夫。選ばれた場合は側付きになってくれた人が手伝うし、任せてもいいよ。自分が仕える側になっても最初は見習いだから覚える時間もあるし、得意な人がやりたがるからね。」

 主にガブリエルの見立てで選んでいき、見劣りはしないで尚且安価にすむよう揃えていく。それにしても、靴から下着もアクセサリーもと…僕としては下着くらい今のでも良いのではと思う。だって今身に付けている物は全てここに来てから与えられた高級品なのだから。
 そしてヘロヘロに疲れて戻ろうとした頃、別の建物からエルバルトが出てきたのに気づいた。向こうはこちらに気づかずに行ってしまったので良かったがなんともご機嫌な様子だった。

 戻ってきた僕らは他の子達にも声をかけてガブリエルからマナーや貴族社会の常識を学ぶ事にした。これから先、仕える立場になった時の事を考えると今から知っておいた方が良い。僕は一応、男爵家にいたのでカトラリーの種類や配膳は知っていたのだが実際に使いこなすのは大変だった。銀のナイフやフォークは重く、扱いづらい。
 気づくとこの館の子達は皆仲良くなっていた。ガブリエルを先生として教えてもらうため、ガブリエルにお礼は何が良いかと聞くと、一番苦手な料理を手伝ってほしいと言うので、皆で用意する事でお礼にした。毎回の食事をマナーの時間として食事マナーを学ぶ。朝の挨拶、昼のお茶の時間、とにかく時間が無いので僕たちはどこででも教えてもらった。

「大丈夫、皆慣れてないだけで食べ方は綺麗だから安心して。それからもし、自分の手に合わないと思うカトラリーは軽い素材のものに代えてもらうこともできるよ。」

 ちょっとしたアドバイスやコツを教わりながら3日後を迎えた。
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