夢は果てしなく

白いモフモフ

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改めて

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 20人集まり興奮が鎮まった頃、女官長がやって来た。

「さぁさぁ、皆様方そろそろ宜しいでしょうか?」

 厳しいらしいと噂の女官長だが今回だけは仕方ないと許してくれていたらしい。話は後からいくらでも出来るからと座るように言われる。近くのソファーに3人で座ると女官長が軽いため息をついた。

「そんなに怯えずとも大丈夫ですわ。そうなさってると、まるで警戒した子ウサギのようですわよ。」

 僕たちだとすぐに解ったけど、どうかこのままで居させて下さいと思っていると「まぁ宜しいですわ」とにこやかに笑い許してくれた。

「先程、ここが最終選考と申し上げました。この後は陛下が自らお決めになります。ここには20名いらっしゃいますが全ての方が陛下のお相手を勤められる訳ではございません。ではなぜ選んだのか…この20名の中の方なら安心して陛下にお薦めできますという意味なのです。
 陛下のお相手を勤められる方はそう多くはございません。選ばれた方は心して下さいませ。」

 女官長は気を抜くなと僕たちに釘をさす。この場に残れた事で皆一様にホッとしてしまったのを知られていたようだ。その後も大まかな後宮の約束事を教わった。

「皆様はこれより姫様と呼ばれる事になります。生涯を姫様で過ごす方もいらっしゃいますが陛下のお召しがあり、陛下より階級を賜れば妃と呼ばれる事になり、さら上の階級を賜れば后になります。先ずは姫様と呼ばれるのに慣れて下さいませ。さぁ今日はお疲れでしょう、これから暮らす所へご案内し専属の女官をご紹介致します。詳しい事はそちらでお聞きください。」

 優雅に一礼すると部屋の隅に並んでいた女官さん達に合図を送った。それを受けて女官さん達は一人づつ僕たちの手をとって歩き出す。歩きながら周りを見ると心配していたエルバルトの姿がない。エルバルトと一緒にいた怖い人もいないようなので思わずホッとしてしてしまった。

 僕に付いてくれたのはさっきお迎えに来てくれた人だった。この人は名をマーガレットと名乗り、もう40年も後宮に住むという。ちょっとふくよかで優しい茶色の瞳を持っている女性だった。

 こちらですよ。と案内されたのは大きな庭と大きな2階建てに温室のついた館だった。大きさは僕のいた男爵家と同じくらいだ。おそらく1階に待合室、サロン、食堂、図書室、広間があって2階に寝室やお付きの人達の部屋があるのだろう。ちょっと贅沢なくらいだ。

「こちらでおくつろぎ下さいませ。」

 入り口の扉の彫刻に目を奪われつつ、手をとられて進むと館の中は以外とひっそりとしていた。サロンと思われる場所のソファーに案内されて腰をおろした。
 ふぅ~と一息つく間に8人の人が目の前に並ぶ。あわてて立ち上がろうするのをマーガレットさんにそっと手で押さえられて座ったままで整列を待った。

「今日よりルカ姫様にお仕えする者達でございます。」

 右側から執事のコーネフ、女官のカガン、料理長のフーガ、お付きのルダ、イワン、ベルトネルト、庭師のドートン、小間使いのタロ。最後にと教育役と専属のお付きとしてマーガレットが並んだ。

「今日より二心なくルカ様にお仕えする事を誓います。」

 とコーネフが言うと揃って頭を下げる。マーガレットから『何か一言』と目で訴えられたので、緊張しながらも立ち上がった。

「ルカと申します。慣れない立場に戸惑っております。仲良くやっていければと期待しています。皆様、どうぞよろしくお願いします。」

 立ち上がるという動作で少しだけ時間を稼ぎ、なんとか挨拶を成功させた。
 ……目まぐるしい1日だった。
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