夢は果てしなく

白いモフモフ

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騒ぎ

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 どうやって知ったのだろうか?いや、やはり全て仕組んでいたのだろうか。エルバルドが僕の館に乗り込んで来たのだ。
 例の手紙を執事のコーネフに見せて事情を話し、動いてもらおうと話していた矢先の事だった。

「おい!ルカ!いるのだろう!」
 
 乱入者に驚いた女官のカガンが必死に止めるがエルバルドと一緒にやって来た人が反対にカガンを羽交い締めにした。

「ルカ!この愚図でノロマのルカ!お兄様のお出迎えはどうした!」

 声を聞いた途端に胸が締め付けられるように痛くなり、呼吸が乱れる。一緒にいたガブリエルとリアンが背中をさすってくれたり、「大丈夫、ここには入って来れないから」と言ってくれたけれど、震えがくる。どうしてもあの家での仕打ちを思い出すのだ。
 自分の部屋のさらに奥にある寝室に3人で入り鍵をかけるようにコーネフに言われる。この寝室は内側から鍵をかけると外からは開けられない仕組みだ。壁やドアも厚く音もかなり遮ってくれる。所謂避難部屋になっているからだ。  

 リアンが窓から外を見ると、タロが凄いスピードで何処かに走って行ったと教えてくれる。しばらくすると衛兵が来たから心配ないとコーネフが知らせてくれた。コーネフの知らせ方というのは凄く単純で、ドア越しに「もう大丈夫です!」と叫ぶ方法だった。……何かもっと良い方法は無いのか?全て落ち着いたら考えようと思ってる自分に気付き、意外と短時間に落ち着きを取り戻してる自分に驚いた。

 正面ホールに降りる階段の上から、押さえつけられながらも抵抗しているエルバルドを見つける。頭を床に押さえられてるせいで僕には気付いていない。ただ、「離せ!離せ!」と喚いているようだ。
 衛兵だと思っていたのは実は衛兵とは別の後宮専用の取り締まり機関の兵士らしい。そして、何日か姿を見せなかったマーガレットもそこにいた。

 思わず、マーガレット!と叫び近寄ると、マーガレットはいつもの笑顔で抱きしめてくれた。

「遅くなりまして申し訳ございません。此方のことはコーネフと連絡を取り合い、ルカ様がまた嫌な思いをする前になんとか出来るかと思ったのですが……間に合わなかったようですね。本当に申し訳ございません。」
 
 なんと。この数日姿を見せなかったマーガレットは様々な方向からエルバルドを調べ二度と僕に接触しないようにしてくれようとしていたらしい。僕はマーガレットにずっとガブリエルとリアンが一緒に居てくれた事、そしてタロやコーネフが気づかってくれたから大丈夫だったと伝えた。

「マーガレットの方こそ大丈夫だった?疲れてるよね?僕の為に、ありがとう。」

 よく見るとマーガレットの目には疲れが出ている。どういうように調べていたのかは知らないけど大変だったのだろう。
 早くマーガレットを休ませてあげたいけどこの騒ぎでは落ち着けない。そっとエルバルドの方を見ると外へと連れていかれてるとこだった。一緒に来ていた人達も連れ出され、取り締まり機関の兵士さんが1人だけ残った。

「お怪我はございませんでしたでしょうか?騒ぎをおこした者達は直ちに厳重に処罰いたしますのでご安心下さい。」

 僕の方に向き直り姿勢を正して言った兵士さんにお礼を言うと横にいたコーネフが申し訳ございませんがと口を挟んできた。

「お待ち下さい。我が主はあの者に困っておいででした。あの者達は今回とは別に他にも処罰対象の行動があるようなのです。現在それを確認し報告しようとしていた処ですので今日中には報告に参ります。ですので処罰は少々お待ち下さい。」

 ……罰と聞いてガブリエルの話を思い出す。エルバルドは嫌いだけど、肉が裂けるほどの鞭打ちなんてのは望んでないので、そういうのはやめてほしいなと思った。
 
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