夢は果てしなく

白いモフモフ

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エルバルドの心うち

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 落選……あり得ない事だ。田舎の男爵家とはいえ血筋は良い。古い貴族同士で婚姻を繰り返してきた家系の長男が私、エルバルドだ。母は確かに貴族ではないが貴族の血筋ではあるらしい。しかも私の母は女性だ。数少ない女性というだけでも価値があるのだ。
 選ばれる自信はあった。まず、自分の容姿はそれなりに整っていると言われもている。次に貴族としての誇り。母は誇りこそ大事だと常々言っていた。
 流行の服装、話題、これも完璧だったと思う。肌を整えるために真珠から作られた高価なパックも全身に使いコンディションは最高だった。

 それなのに……。女官は私の元には来なかった。後から同じく落選とされた寝起きを共にしていた者から聞いた落選理由は理解はできるが納得しかねる話だった。

「エルバルド、キミも跡取りなのだろう?あぁ、やっぱりそうなのだね?私もなのだ。この館からは1人しか候補者が出なかっただろう。あの者は次男の上に母親は愛人らしい。つまり家を背負う役目のないものだ。推薦者とされた者達は皆、家督を継ぐ資格のない者達ばかりだ。私達は家の為に帰らなければならない。だから選ばれなかったということらしい。」

 眉を潜めて悔しさを滲ませながら教えてくれた。話を聞いて『あぁ、だからか。』とすぐに理解した。あの、出来の悪いそこつ者の弟が選ばれたのは私の代わりだったのだ。ならば、あれは私に感謝するべきだろう?そうだ。“選びたかった私は男爵位を継ぐ者だから選べなかった”のだ。“選べなかったが、私に繋がる道を残す為に仕方なく弟を選んだ”のだ。
 この後、私がとるべき行動はなんだろうか?一定の期間この後宮から出ることは出来ない……あぁそうか。『私達、選べなかった者達がここに留まらなくてはならない理由はの為』だろう。

 私は私に相応しい生活を送らなければならない。ゆったりと体を休めいつお声がかかっても良いように磨きあげていなくては。それなのにここはどうだろう。部屋は5人が一緒に寝起きし、食事も粗末で美しくない。服装もせっかく調えたのに全て取り上げられ、男爵家から持ってきた荷物と仕事着として与えられた3着のみだ。その3着も全部古着で私の服だなんて到底認められない物だ。

『見習いのエルバルド、何をしている!全て出しなさいと言われているだろう!お前の借用金は他の人の5倍はあるのだから。その首飾りももう要らないのだから返済にあてなさい。いいかい?このままでは一生をここで過ごさなければならないのだよ?』

 手に握りしめていたルビーの首飾りを取り上げられた。なんという事か。私はあるべき姿でいたいだけなのに邪魔をされるとは……。
 ……あるべき姿……そうか、そうだ。あるべき姿になれればいい。私の代わりに私が受けるはずだった場に居座る者がいる。正しい位置に戻るべきだ。
 
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