総ての海を征するもの……の正妻?

白いモフモフ

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快速艇

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 夜の海は音が響く。波と風の音、見回りの靴の音ランプが軋む音…そして息づかい。

 キシッキシッとマスト横の網梯子が軋み揺れるその下には重なり合う2人の姿がある。声を潜めていても聞こえてしまうのが夜の怖さ。

「外はダメだと…っあ……いって…」

 言葉の間に喘ぎが入るようでは説得力の欠片もない。それに毎晩のようにどこかで抱かれているのだから本当に嫌なら夕食後は部屋にこもり出てこなければ良い。そういう意味ではダメだと言ってる人物も本当は嫌では無いのだろうと思ってしまう。

「艦長~、マストの下は簡便してくださいよ~。」

 見張りの人間から一応の抗議がある。

「無視…デスヨネ。」

 見張り続けま~すと気のない声で独り言のように邪魔してすみませんと声がする。この艦ではもう慣れた光景だ。だが、見慣れてない物達にとっては苦行とも言う。港で新しく雇った物達は半分が雑用係であった理由がコレなのだが、2人に充てられたら者達が発散相手を求めてさ迷う。雑用係は大変だ。

 そんな艦に近づく快速艇があった。ノエルからの快速艇で、【大至急!】と念押しされたため夜を日につないでという言葉通り夜も飛ばしてきた。

「小型船接近!信号送ってきてます!」

 緊張感のある声が見張り台から響いた。当然下にいる2人に“離れろよ”という意味合いを含ませたが残念ながら腰使いを強めたようで「あっあっ…あぁぁ!!」と大きな喘ぎが聞こえる。

「艦長っ!!」

「待たせとけっ!!」

 待つか!と返したいがこのままでは派手に声を上げる中快速艇を迎えかねない。見張りは苦渋の選択をせざるを得なかった。

「デジレ様~、後ほんのちょっとでお客さん来ちゃいますけど、どうしますか?」

 わざとカンテラを向けてその姿を照らし、素早くイって終わらしてもらおうとしたのだが、……俺の判断は間違いだった。灯りに照らし出されたのは前を縄梯子に縛られて後ろを艦長のデカブツで貫かれ、飛ぶ寸前の姿だった。照らし出されたせいで一気に上り詰めたらしく痙攣したあと気を失ったらしい。
 この後、俺は仲間から“命知らず”という二つ名をもらうことになった。荒くれ者が“命知らずの○○”と二つ名をつけられるのは栄誉な事だが、俺の場合は意味が違う。…こんな意味でつけられたくはなかった!

 因みに、艦長はデジレ様の反応が気に入ったらしくお叱りも注意もなかったがなぜか「デジレ殿は綺麗だっただろう?」とドヤ顔で自慢された。

 快速艇の方は……多分知られてないと思う。強行軍で飛ぶように海を渡ってきたので乗組員は疲れ果てていたがうちの艦で休みまた急いで戻っていった。



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