スーパー忍者・タカシの大冒険

Selfish

文字の大きさ
72 / 157

第72話 水の技伝授

しおりを挟む
タカシとユウジは、川辺で泥まみれになりながらも、ようやく水の試練に挑戦し始めた。モスイトスは相変わらず、ふわふわと水しぶきを上げながら歩き回り、二人に次々と「水の技」を教えようとしていた。しかし、ここから先はまさに予測不可能だった。

「よし、じゃあ次はこれだ!」モスイトスがやや興奮気味に言った。彼は両手を広げると、水面に大きな波を引き起こす。二人はその波に飲まれるのではないかと身構えるが、モスイトスはニヤリと笑って言った。

「これは『水のバランス技』だ!」

「水のバランス技…?」タカシが首をかしげながら聞き返した。

「そうだ!水は流れるものだから、バランスを取るのが重要なんだ。だから、この技を覚えれば、水に飲み込まれることもなくなる!さあ、やってみろ!」モスイトスが無邪気に言った。

「バランス?水の上で立つとか…そんな簡単なこと…」ユウジが少し自信満々に言った。しかし、モスイトスの言う通り、水は思ったよりも難しい。

「おいおい、簡単じゃなかったのか?」ユウジは足元がぐらつき、まさかの転倒。水の中にジャボンと落ちる。

「うわっ、やっぱり無理だよ!」ユウジが水面から顔を出しながら叫ぶ。

タカシも真似してやってみたが、すぐに片足を踏み外してバランスを崩し、水に引き込まれてしまった。「これ、どうやってやるんだよ…?」タカシは水面から必死に顔を出しながら呟いた。

モスイトスは二人を見て、満面の笑顔で言った。「いやいや、そうじゃないよ!水は流れているんだから、流れに合わせて動くんだ!」

「流れに合わせて…?」タカシとユウジは再び水に引きずられながら、モスイトスの言葉を必死で考えた。

「そうだ!例えば、こうやってだ!」モスイトスは川の中でしばらく足踏みをして、何かを見つけたかのように立ち止まった。そして、突然、ぴょんっと跳ねた。すると、彼の体が水に飲まれることなく、ふわっと川の上に浮かび上がったのだ。

「うおっ、なんだそれ?」ユウジが驚きの声を上げた。

「ほら、見ろ!これが『水のバランス技』だ!」モスイトスは軽やかに言ったが、その動きはまるで水の精霊が舞っているかのようで、どうにも意味がわからなかった。

タカシとユウジは、お互いに顔を見合わせた。「えっと…これって、何か変な技なんじゃないか?」ユウジがつぶやいた。

「いや、たぶん…」タカシも頷きながら言った。「でも、もう一回やってみるしかないか。」

二人は再度、試してみることにした。ユウジが先に水に足を踏み入れると、今度は流れに合わせて軽く足を動かしながら、モスイトスの真似をしてみた。だが、何度試してもすぐに足がぐらつき、またしても水に飲み込まれてしまう。

「うわぁぁぁ、むずかしい!」ユウジが慌てて水から顔を出しながら叫んだ。

タカシも挑戦したが、同じように転んでしまった。「まさかこんな技がこんなに難しいとは…!」

モスイトスは笑いながら近づいてきて、「お前たち、全然ダメだな。水に流れるように…って、ただ流れるだけじゃダメなんだよ!」と軽く言った。

「じゃあ、どうやるんだよ?」ユウジが水をかぶりながら文句を言った。

「簡単だよ!」モスイトスはまるで魔法を使うかのように言った。「こうやって…!」そう言うと、突然モスイトスは水面をパシャっと叩いた。すると、なんと水面に無数の小さな波紋が広がり、そこから突如現れた水の精霊たちが一斉に踊り出した。

「ほら、これが水の精霊たちだ!流れに合わせるだけじゃなくて、遊んでもらうことも大事なんだ!」モスイトスは得意げに言った。

「なにこれ!?精霊!?どこから出てきたんだよ!?」タカシとユウジは目を丸くして見ていたが、その精霊たちはどう見ても普通の水の中でお遊びしているだけだった。

「精霊の力を借りれば、バランスも取れるし、何でもできるんだよ!さあ、君たちもやってみろ!」モスイトスが興奮気味に言った。

「遊ぶ…って、これが水の技か…?」ユウジが半信半疑で言うと、モスイトスは頷きながら言った。

「そう!水の力を使って、精霊たちと遊ぶんだ!これが本当の『水のバランス技』だよ!」

タカシとユウジは、最初は何が何だか分からなかったが、しばらくしてようやくその「遊び」の意味が分かってきた。水の精霊たちと戯れることで、自然と水の流れに乗る感覚を掴むことができたのだ。

「なるほど…水の流れに身を任せるってこういうことか…」ユウジがようやく納得した顔をした。

「うーん、ちょっとおかしいけど、これでバランス取れるのか?」タカシも何とか試みた。

結局、二人は必死で遊びながら、やっとのことで水の流れに乗る感覚をつかんだ。しかし、技自体はまさに「水の民の遊び」であり、あまりにもくだらないように思えた。

モスイトスは二人の努力を見て、「よしよし、その調子だ!次はもっと面白い技を教えてやるぞ!」と、まだまだ次の技を伝授しようと意気込んでいた。

タカシとユウジは心の中で「これ、絶対に水の試練、過去最高にダメな試練だ…」とつぶやきながらも、次なる「面白技」に挑む覚悟を決めたのであった。

その後、モスイトスは「水の大爆笑技」とか「水のモンスター引き寄せ技」など、聞いたこともないような技を次々に教え始め、二人はもはや試練の意味すら忘れて、ただただその「くだらなさ」に振り回されていった。

試練の終わりが見えない中、二人は笑いながらも、いったいどんな技が待っているのか、すでに恐れているのかもしれなかった。
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件

美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…? 最新章の第五章も夕方18時に更新予定です! ☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。 ※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます! ※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。 ※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!

旧校舎の地下室

守 秀斗
恋愛
高校のクラスでハブられている俺。この高校に友人はいない。そして、俺はクラスの美人女子高生の京野弘美に興味を持っていた。と言うか好きなんだけどな。でも、京野は美人なのに人気が無く、俺と同様ハブられていた。そして、ある日の放課後、京野に俺の恥ずかしい行為を見られてしまった。すると、京野はその事をバラさないかわりに、俺を旧校舎の地下室へ連れて行く。そこで、おかしなことを始めるのだったのだが……。

おいでよ!死にゲーの森~異世界転生したら地獄のような死にゲーファンタジー世界だったが俺のステータスとスキルだけがスローライフゲーム仕様

あけちともあき
ファンタジー
上澄タマルは過労死した。 死に際にスローライフを夢見た彼が目覚めた時、そこはファンタジー世界だった。 「異世界転生……!? 俺のスローライフの夢が叶うのか!」 だが、その世界はダークファンタジーばりばり。 人々が争い、魔が跳梁跋扈し、天はかき曇り地は荒れ果て、死と滅びがすぐ隣りにあるような地獄だった。 こんな世界でタマルが手にしたスキルは、スローライフ。 あらゆる環境でスローライフを敢行するためのスキルである。 ダンジョンを採掘して素材を得、毒沼を干拓して畑にし、モンスターを捕獲して飼いならす。 死にゲー世界よ、これがほんわかスローライフの力だ! タマルを異世界に呼び込んだ謎の神ヌキチータ。 様々な道具を売ってくれ、何でも買い取ってくれる怪しい双子の魔人が経営する店。 世界の異形をコレクションし、タマルのゲットしたモンスターやアイテムたちを寄付できる博物館。 地獄のような世界をスローライフで侵食しながら、タマルのドキドキワクワクの日常が始まる。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

冤罪で辺境に幽閉された第4王子

satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。 「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。 辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。

彼の言いなりになってしまう私

守 秀斗
恋愛
マンションで同棲している山野井恭子(26才)と辻村弘(26才)。でも、最近、恭子は弘がやたら過激な行為をしてくると感じているのだが……。

嵌められたオッサン冒険者、Sランクモンスター(幼体)に懐かれたので、その力で復讐しようと思います

ゆさま
ファンタジー
ベテランオッサン冒険者が、美少女パーティーにオヤジ狩りの標的にされてしまった。生死の境をさまよっていたら、Sランクモンスターに懐かれて……。 懐いたモンスターが成長し、美女に擬態できるようになって迫ってきます。どうするオッサン!?

処理中です...