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4話

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 女性が戻ってくると一枚の既製品おしきせの服を私に渡して着なさいと言う。
 彼女の名前はリリー・ガーネット。家名があると言うことはそういうことなのだろう。
 私も自己紹介をしたけどスティアと偽名を名乗り家名は言わなかった。
 私は火がろくに使えないからこそ、お目こぼしされたのだから、今までの名前で名を上げるのはまずいからね。

「スティアはこの町で働きたいんでしょ?」

「なんで、そう思うの?」

「だって、平民は国から出れないし、かといって商人でもない。となると国外追放をされた人しかないもの」
 国外追放じゃ、この空白地帯を出れないので、ここで働くしかない。売春するなら店長に紹介するわよとリリーは言う。

「売春はしないわ。私は探索者になろうと思うの」

「魔法や剣の腕に自信があるの?」
 私の細腕を見てリリーは首をかしげる。

「魔法も使えないし剣は重くて持てないわ」
 その言葉にリリーは呆れる。探索者をなめてると死ぬことになるわよと。

 なめてるつもりはなかったのだけど、私がやりたことは娼婦じゃ叶わない。

 危機意識の低い私にリリーは探索者、特に女性の探索者がどういうものか私に教える。
 女性の探索者は体の良い無料の慰安婦なのだそうだ。しかもダンジョンの奥じゃ逆らえず、置いていくと言われれば身体を差し出すしかなくなる。
 しかも仲間と言うことでお金ももらえない。

「だからこの町にいる女は娼婦をするのよ。無料でやらせるなんてバカらしいでしょ」
 リリーも昔は探索者をやったらしいのだが扱いも酷いし無料慰安婦だしで娼婦になったのだそうだ。娼婦ならお店が守ってくれるから男は無茶はできないし自分のためにもそれが最善なのだとか。
 本当のところは探索者になるための借金が膨らんで、今や辞めるに辞められないんだけどねとリリーは屈託なく笑う。

「探索者になるのにお金がいるの?」

「入信持参金は金貨10枚で毎月のお布施があって金額はランクで違うわ」
 教会が運営しているので名目が入信やお布施なのね。
 私は皮袋を取りだしお金を数えるが金貨にして7枚しかなかった。

「それじゃ足りないわよ」

「なにか良い仕事無いかしら?」
 あるならみんなやってるわよとリリーは笑う。

「本当に探索者になりたいの?」

「それしか道がないから」
 私が強い意思をもってそう言うと、リリーは店の裏に行き皮袋を持ってくると金貨を10枚私の前にだした。



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