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王太子の部屋で
しおりを挟む「で、なぜここに来たのだ?」
アイルーナとフィンデルは、ジールベルン王国の王太子の部屋に来ていた。
王太子も学園の生徒だ。
王となるために学園をまとめ、人脈を広げるために在籍している。
そのために特別に部屋を用意されていた。
セキュリティーは完璧だった。
いきなりの訪問でも招き入れるしかなかった。
フィンデルはともかく一緒に来たのがイオマミール帝国の皇女アイルーナなのだから。
フィンデルはマルクスに頭を下げ
「ここしか思いつきませんでした。申し訳ございません。」
と謝っている。
アイルーナは申し訳なさそうな素振りは一切見せず、ソファに座る。
そんなアイルーナの後ろにフィンデルは立つ。
これが二人のいつもの距離。主人と臣下である二人の。
「久しぶりね、マルクス。何年ぶりかしら?」
ニコリと笑うアイルーナ。笑ってはいるが、断ることは許さないと目が語っている。
ハァとため息をつくマルクス。
「二年ぶりだ。アイルーナ皇女が我が王国に何用だ?来訪するなどの報告はなかったが。」
「ある訳ないじゃない。来るのはいきなり決まったのだから。まぁ、許してね。私達、いとこ同士じゃない。」
ケラケラ笑いながらアイルーナは言う。
マルクスはドンと机を叩く。
「いい訳ないだろう!お前に何かあってみろ。この国はお前の帝国に滅ぼされるだろ!護衛をつける。いつまでいるのだ?」
現皇帝が娘であるアイルーナを甘やかしているのは諸国の耳にも入っている。
そんな愛するアイルーナに何かあれば、皇帝は黙っていないだろう‥
ケラケラ笑っていたアイルーナが真顔になる。
「一年よ。」
「はっ?一年?それを皇帝は知っているのか?」
ありえない期間にマルクスは驚きを隠せない。
「もちろんよ。お父様からの条件を達成するために私はここに来たの。」
「条件とは何だ?」
「それは言えない。お父様との契約違反になるから。その条件を達成すれば、私は一年後、イオマミール帝国の皇帝となるわ。将来の皇帝には優しくしておくものよ。」
アイルーナの表情をみると嘘や冗談を言っているのではないとわかる。
マルクスとフィンデルは息をのんだ。
「その契約を皇帝はのんだのか?」
マルクスが恐る恐る聞いた。
「当たり前でしょう?のんでくれなくちゃ代われないわ。暗殺なんて私の趣味じゃないもの。」
何をバカなと言わんばかりの顔をしてマルクスを見る。
見た目は色気も漂う美女だ。
だが、まだ14歳のアイルーナから暗殺などと言う言葉が軽々しく出る事にマルクスはあきれ返る。
「この事は他言無用よ。」
「話せる訳ないだろう。そんな帝国の極秘事項‥」
「じゃあ、一年間よろしくね。」
アイルーナの笑顔はとても綺麗だ。
ただ、目は笑っていない。その笑顔の裏には何かがある。
とてつもなく大きな何かが‥。
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