わがまま妃はもう止まらない

みやちゃん

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アレンベールは雨季になると川が氾濫、夏は日照り水不足になる。そして冬は雪に覆われて家から動けない。
そんな土地だった。

今必要なことは川の氾濫と水不足の解消が最優先課題であり、工事もそれをメインにすすめられた。

ミルアージュが持ち込んだ案に合わせて出してきたマカラック、執事は人選をした。

三ヶ月しかなく人員も限られている。当面をしのぐ工事を進めようとしたが、ミルアージュにより反対された。
「一時的にしのぐようなものはいりません。時間がかかってもこれからずっと使えるように整備していきます。」

「だが、それでは農耕期に間に合わない。」
アレンベール側は焦った。

「人員を増やします。第三部隊にも手伝ってもらいますし、追加の人員支援もお願いしています。」
ニッコリとミルアージュは笑った。

領民達も無償奉仕といいながら、しっかりと食事は出ていた。
食べる物を求めて工事に参加する領民達も増えている。

大がかりな工事に使用する材料だってミルアージュが手配しているものだ。
この工事を行うだけでどれだけのお金が動いているのか…マカラック達は想像もできなかった。

第三部隊も工事を手伝っていた。そういう作業には素人だが、体力だけはあるし、役に立っていた。

しばらくするとルーマンから追加支援が届き、アンロックからは人員派遣が来た。

「姫様!久しぶりです!」
ミルアージュを見つけてアンロック軍部大将が先頭きって走ってきた。
クリストファーにはアンロックからの派遣受け入れの許可はもらっていたから近々来るとは思っていたが…

「久しぶりですね。あなたが来るとは思ってませんでした。」
ミルアージュは少し驚いたように答える。

川の氾濫を防ぎ水を確保するため池をつくり水不足の際に使用しようとしていた。
そのための技術者派遣と労働力の手配をアンロックに依頼していたので、まさか軍のトップが来るとは思っていなかった。

「そりゃ姫様からの依頼とあれば来るしかないでしょう!宰相も来たがって悔しがっていたけどな。」
ガハハと笑う軍部大将の圧は怖ろしくアレンベールやルーマンの者達は顔を青ざめていた。

「時間もないから皆を集めて会議をするわ。これで一気に進むわね。」
ミルアージュもホッとしていた。

そこから専門家や工事に長けた者たちが入ったこともあり、作業は順調に進んでいった。

はっきり言って弱っている領民達はあまり役には立っていないが、それでもしっかりと食事は出た。
ミルアージュの狙いはそこにもあったのだとマカラックは考えている。

労働で食事を得る。
ただ人から施しを受けるだけではないので受け取りやすい。
そしてルーマンの部隊とも対等に話せているのは施しではなく共に作業をする仲間だからだろう。


「なぜ、ミルアージュ殿はここまでする?」
マカラックは工事の様子を見ながらボソリと呟いた。

「それが姫様だからだ。民を守る、それ以外に他意はない。」
マカラックの独り言に軍部大将が答える。

「だが、ミルアージュ殿には何の得もない。全てミルアージュ殿のお陰なのにそれを知っている者も少ない。」

アンロックからの派遣でさえ、人気取りと陰口を叩かれているのをマカラックも知っていた。もちろんミルアージュだって知っているはずだ。それなのに自分の行なっている事を何も語ろうとはしないミルアージュに苛立ちすら感じていた。

軍部大将は苦笑いをした。
「それが姫様だ。」
先程と同じセリフという。

「アンロックでもそうだった。アンロックでの土地の改良や灌漑工事などは姫様がすすめていたが、知っている者は少ない。自分の功績などどうでも良いのだ、民が幸せに生きられるのならな。」

アンロックがどうしてこんなに技術者を持っているのか、ミルアージュがその資料を持ち、全てを理解しているのかがやっとわかった。

それはミルアージュがアンロックでやってきていた事だから。

「導く者として皆を守るため、最大限の努力をするべきです。あなたは力を使う以外に何かしましたか?この地を守るために。」

ミルアージュから言われた言葉…
その通りだったのだ。
ミルアージュはずっと頑張っていたのだ、アンロック国民のために。
こんな風にスムーズに作業を進められるようになるまでには試行錯誤し、問題も解決してきていたのだとマカラックですらわかる。

なんて自分は甘かったのだろう…
マカラックは自分が情けなく涙が溢れていた。
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