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アンロックの第一王女ミルアージュがルーマン王国の王太子クリストファーと結婚をし、一年が経とうとしている。
ルーマン王国に嫁いで来るときには色々とあったが、ミルアージュは今、のんびりと王太子妃の日々を過ごしていた。
ミルアージュはアンロックのわがまま王女、その噂はルーマンでも有名。
アンロック王家から否定の声明は出たが、王位を狙い義弟の現アンロック王レンドランドの命を狙ったとも言われている。
最近は大人しいらしいが、猫をかぶっているだけだと言う者がルーマン王城内でも多くいる。
ミルアージュがルーマンに来て2年しか経っていない為、まだまだルーマンに馴染んでいない。
これから本性を出すのではとルーマンの王城の者達はヒヤヒヤしていた。
だからこそ、本来するべき王太子妃の役割であるお茶会での貴族達との親睦も、外交などもさせなかった。
夫である王太子クリストファーはそれでも良いと思っている。
元々ミルアージュを閉じ込めて誰にも会えないようにしたかった。
自分だけを見つめていてほしいと。
そうしないのはミルアージュに嫌われる事が目に見えているから。
だが、自分ではなく、別の者がする分にはミルアージュの怒りは自分には向かない。
その事がわかっているから知らないふりを通していた。
「暇だわ‥」
ミルアージュは元々大人しく部屋で過ごす王女ではなかった。
自分の悪評が招いた自業自得であり今の状況は仕方ないとわかっていながらも、なかなか慣れる事ができなかった。
「ミルアージュ様、少し散歩でもしますか?」
見かねたミルアージュ付きの侍女アンは声をかける。
「そうねぇ、そうしようかしら。」
普段なら大人しく自室で過ごしているのだが、ミルアージュも暇すぎて外に出れば何か気分が変わるかもと思った。
「では準備しますね。」
侍女アンは外に出るための準備をしに部屋の外に出た。
外出許可を取りに行ったのだ。
ルーマン王城内すら自由に出歩く事ができない。
ハァーとため息をつく。
護衛が二人常についているが、外出となれば後数人増やされるだろう。
クリスは護衛など私には必要ないのはわかっているはずなのに‥
私が逃げないか見張られているような気すらする。
「もう、息がつまる。」
ミルアージュはもう限界が来ていた。
クリスが望む深窓の姫だったらどんなに良かっただろうか…
バン!
と扉を開けられた。
王太子妃であるミルアージュの部屋をこんな乱暴に開ける者など誰か直ぐにわかってしまう。
「ミア!どこに行くんだ?」
顔を真っ青にしてクリストファーが部屋に走りこんできた。
ミルアージュにしがみついてギュウギュウに抱きつける。
ハァとため息をつきながらクリストファーを抱きしめかえす。
「クリス‥庭を見に行くだけよ。」
やっぱり部屋で大人しくしていた方が良かったかしらとミルアージュはぼんやり考えていた。
王太子の様子を見た護衛もアンも驚きを隠せない。
普段のクリストファーから想像もできない姿なのだ。
「では、私も行く。」
クリストファーはミルアージュの手を取り一緒に歩き出そうとする。
チラッと入り口を見るとクリストファーの補佐官が何か言いたげに立ち尽くしていた。
政務を抜け出して来たのだろう。
「クリス‥仕事に戻って」
私の我儘に巻き込むわけにはいかない。
「大丈夫だから。ミアと一緒に庭を散歩するくらいの時間はある。」
クリストファーは笑いながらエスコートしようとする。
それなら、補佐官がなぜあなたと一緒に走って来ているのよと突っ込みたい。
ミルアージュも笑いながら言う。
「もう一度言うわね、仕事に戻って。」
ミルアージュの笑顔にビクッとクリストファーは揺れる。
「わかった…じゃあ、今晩は早めに切り上げるから一緒に夕食を食べよう。」
最近、クリストファーは多忙でなかなか顔をあわせることもできていなかった。
その後ろめたさもあり、ミルアージュが外に出るというだけでこんな大騒ぎをしている。
「わかったわ。」
ミルアージュの返答をきき、クリストファーは渋々部屋を出ていった。
「驚きました。クリストファー様ってあんな感じなのですね。」
アンがまだ驚きを隠せないように言う。
他の者には驚くクリストファーの態度だが、ミルアージュにとったらいつも通りのクリストファーだ。
「昔から全く変わらないわ。」
クリストファーのミルアージュへの執着はアンロック側が警戒するほどだった。
そんなクリストファーはアンロックの王女であるミルアージュをどうしても妃にしたかった。
だから、ルーマン王国の王太子となった。
アンロックも隣の同盟国の王太子を無下にできないから。
そして今も政務の手を抜かないのもミルアージュに嫌われたくないから。
そんな残念な王太子クリストファーを知っているのはミルアージュの母国アンロックの宰相、軍部大将、そしてクリストファーの父であるルーマン国王だけだった。
ルーマン王国に嫁いで来るときには色々とあったが、ミルアージュは今、のんびりと王太子妃の日々を過ごしていた。
ミルアージュはアンロックのわがまま王女、その噂はルーマンでも有名。
アンロック王家から否定の声明は出たが、王位を狙い義弟の現アンロック王レンドランドの命を狙ったとも言われている。
最近は大人しいらしいが、猫をかぶっているだけだと言う者がルーマン王城内でも多くいる。
ミルアージュがルーマンに来て2年しか経っていない為、まだまだルーマンに馴染んでいない。
これから本性を出すのではとルーマンの王城の者達はヒヤヒヤしていた。
だからこそ、本来するべき王太子妃の役割であるお茶会での貴族達との親睦も、外交などもさせなかった。
夫である王太子クリストファーはそれでも良いと思っている。
元々ミルアージュを閉じ込めて誰にも会えないようにしたかった。
自分だけを見つめていてほしいと。
そうしないのはミルアージュに嫌われる事が目に見えているから。
だが、自分ではなく、別の者がする分にはミルアージュの怒りは自分には向かない。
その事がわかっているから知らないふりを通していた。
「暇だわ‥」
ミルアージュは元々大人しく部屋で過ごす王女ではなかった。
自分の悪評が招いた自業自得であり今の状況は仕方ないとわかっていながらも、なかなか慣れる事ができなかった。
「ミルアージュ様、少し散歩でもしますか?」
見かねたミルアージュ付きの侍女アンは声をかける。
「そうねぇ、そうしようかしら。」
普段なら大人しく自室で過ごしているのだが、ミルアージュも暇すぎて外に出れば何か気分が変わるかもと思った。
「では準備しますね。」
侍女アンは外に出るための準備をしに部屋の外に出た。
外出許可を取りに行ったのだ。
ルーマン王城内すら自由に出歩く事ができない。
ハァーとため息をつく。
護衛が二人常についているが、外出となれば後数人増やされるだろう。
クリスは護衛など私には必要ないのはわかっているはずなのに‥
私が逃げないか見張られているような気すらする。
「もう、息がつまる。」
ミルアージュはもう限界が来ていた。
クリスが望む深窓の姫だったらどんなに良かっただろうか…
バン!
と扉を開けられた。
王太子妃であるミルアージュの部屋をこんな乱暴に開ける者など誰か直ぐにわかってしまう。
「ミア!どこに行くんだ?」
顔を真っ青にしてクリストファーが部屋に走りこんできた。
ミルアージュにしがみついてギュウギュウに抱きつける。
ハァとため息をつきながらクリストファーを抱きしめかえす。
「クリス‥庭を見に行くだけよ。」
やっぱり部屋で大人しくしていた方が良かったかしらとミルアージュはぼんやり考えていた。
王太子の様子を見た護衛もアンも驚きを隠せない。
普段のクリストファーから想像もできない姿なのだ。
「では、私も行く。」
クリストファーはミルアージュの手を取り一緒に歩き出そうとする。
チラッと入り口を見るとクリストファーの補佐官が何か言いたげに立ち尽くしていた。
政務を抜け出して来たのだろう。
「クリス‥仕事に戻って」
私の我儘に巻き込むわけにはいかない。
「大丈夫だから。ミアと一緒に庭を散歩するくらいの時間はある。」
クリストファーは笑いながらエスコートしようとする。
それなら、補佐官がなぜあなたと一緒に走って来ているのよと突っ込みたい。
ミルアージュも笑いながら言う。
「もう一度言うわね、仕事に戻って。」
ミルアージュの笑顔にビクッとクリストファーは揺れる。
「わかった…じゃあ、今晩は早めに切り上げるから一緒に夕食を食べよう。」
最近、クリストファーは多忙でなかなか顔をあわせることもできていなかった。
その後ろめたさもあり、ミルアージュが外に出るというだけでこんな大騒ぎをしている。
「わかったわ。」
ミルアージュの返答をきき、クリストファーは渋々部屋を出ていった。
「驚きました。クリストファー様ってあんな感じなのですね。」
アンがまだ驚きを隠せないように言う。
他の者には驚くクリストファーの態度だが、ミルアージュにとったらいつも通りのクリストファーだ。
「昔から全く変わらないわ。」
クリストファーのミルアージュへの執着はアンロック側が警戒するほどだった。
そんなクリストファーはアンロックの王女であるミルアージュをどうしても妃にしたかった。
だから、ルーマン王国の王太子となった。
アンロックも隣の同盟国の王太子を無下にできないから。
そして今も政務の手を抜かないのもミルアージュに嫌われたくないから。
そんな残念な王太子クリストファーを知っているのはミルアージュの母国アンロックの宰相、軍部大将、そしてクリストファーの父であるルーマン国王だけだった。
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