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「領主死んでないらしいぞ。」
「だろうな。出血もなかったところを見ると峰打ちだろ。それにしても領主にいきなり切り込むなんて王族としてどうなんだ?」
「俺たちの前で猫かぶってただけであれが本性なんじゃないか。」
「言えてる。噂通りなんだな。」
隊員達は口々にミルアージュについて陰口をたたいた。
遠征を共にし、仲間意識も芽生え始めていただけにミルアージュの行いは余計に反感をかっていたのだ。
アルトはその場を黙って離れた。
これ以上、その場にいれば殴りかかりそうだったからだ。
夜風に当たりながらアルトは呟く。
「あいつら、あんなに姫に懐いていたくせに。手のひら返したように言いたいように言いやがって。」
アルトはミルアージュの行いは何か理由があっての事だと思っている。
寝る間も惜しんで必死でアレンベールを守ろうとしていたのを知っている。
ミルアージュの暴挙は確かに理解できない。
だが、その後のミルアージュを見てもそんな事が言えるのかと皆に言いたい。
ミルアージュの手は小さく震えていた。
顔色を失い、泣くのを我慢している。
そんなうな風に見えた。
王太子妃でなければ、アルトは手を握り慰めていたと自分でも思う。
誰よりも自信たっぷりでいつでも笑顔だったミルアージュが見せた表情。
自分で切りかかっていったのにどうして、こんなに悲しそうな顔をする?
その場を立ち去ったミルアージュは隊長やアルトを呼び、捕まえた領民達に食事を出すように言った。
そして自宅で動けなくなっている領民たちの為に食事を運ぶように指示を出した。
「どうして姫の指示だと言わないのですか?」
アルトは聞く。
「持ってきた支援物資はすぐに底を尽きる。でも追加支援まで何とかもたせたいの。皆、私に反感を持っているから皆の食べ物を分けてと頼んでも快くは引き受けてくれないわ。今更ご機嫌とりかってね。貴方達の指示の方が従いやすいと思うの。」
ミルアージュはそう言い切った。
ミルアージュの言葉は正しかった。
隊長と自分が皆に食料を領民達に分けてもらえないか聞くと皆、快くうなずいた。
アレンベールの現状を知ってしまった今、自分達だけお腹いっぱいご飯を食べるなどできるものではない。
戦をしているわけでもなく体力も使わない。自分達の食べ物を分けるくらい何でもなかった。
「ミルアージュ様の許可はあるのですか?反対しそうですが。」
若い兵士の一人が聞いた。
「ああ、問題ない。」
隊長は言う。
「ほっとけよ、どうせ何もいえないさ。不敬だからっていきなり斬りかかったんだ。色々とバレる前に好感度あげたいだろ。」
「そりゃそうだ。」
笑いが起こる。
「いい加減にしろ、これ以上王太子妃について何も言うな。命令だ。」
隊長が隊員達を睨みつける。
王族の悪口を言うなどあり得ない。
だが、平民が多い部隊であり皆アレンベールの民に同情的だった分、ミルアージュへの反発は大きく、隊員達は言うことを聞きそうになかった。
ミルアージュに呼ばれ、隊長、アルトは領主の部屋に向かった。
部屋に通されると領主のベットの側にミルアージュが付き添っているのが見えた。
今、目を覚ましたばかりの領主はまだあどけなさが残る青年だった。とても綺麗な顔をしている。
執事、侍女達は後ろで心配そうに領主とミルアージュの様子を見守っている。
「どうしてこんな事をしたのですか?」
ミルアージュは領主を睨みつけながら尋ねた。
ここで尋問をするようだ。
その証人として隊長とアルトは呼ばれたのだと理解した。
「貴方は知っていたのか、ここの領の秘密について。」
領主はミルアージュに聞く。
「‥アンロック王家にも伝わっておりました。アンロック元王女ミルアージュ・ディロイア・ルーマンにございます。今はルーマン王太子妃となっております。」
王族としての挨拶を述べ頭を下げた。
王族の名乗りをし、頭を避けねばならない相手なのか?
一領主だぞ?
尋問も領主の部屋のベッドに赴くなどあり得ない待遇だ。
隊長もアルトもミルアージュの言動が信じられなかった。
「そうか、だから君がきてくれたんだね。王も王太子も来なかったのでここは捨てられたと思ったよ。」
領主は悲しそうに微笑んだ。
「ミルアージュ様、どういうことですか?」
隊長、アルトは話の筋が見えていず、領主とミルアージュが言っている意味がわからなかった。
ミルアージュの領主への挨拶は敬意を払ったものであり、領主自身もミルアージュより上だと認識しているような話ぶりだ。
ミルアージュもそれを当たり前としているようだ。
「今は説明できない。これはルーマン、アンロック王家の契約に関する事だから。」
ミルアージュは静かにいう。
ルーマン、アンロックとこの地とどのような契約が結ばれているのか。
王家の契約とは王族の中でも王と後継者にしか伝えられない極秘事項だ。
機密の中の機密といえる王家の契約にどうしてアレンベールが関係しているのか。
アンロックの後継者でもないミルアージュがなぜ知っているのか…
隊長もアルトも意味がわからなかった。
「繰り返します。どうしてこのような事をされたのですか?」
ミルアージュは静かに話し出した。
「これ以上、ここを守る力がないからだ。」
領主は答える。
「それがあなた方の心中に私たちも巻き込もうとした答えですか?共に滅びるつもりでしたか?」
ミルアージュは静かに返した。
???心中?
滅びる?
物騒な言葉が出てきたことに隊長、アルトは目を見開き、ミルアージュを見た。
「だろうな。出血もなかったところを見ると峰打ちだろ。それにしても領主にいきなり切り込むなんて王族としてどうなんだ?」
「俺たちの前で猫かぶってただけであれが本性なんじゃないか。」
「言えてる。噂通りなんだな。」
隊員達は口々にミルアージュについて陰口をたたいた。
遠征を共にし、仲間意識も芽生え始めていただけにミルアージュの行いは余計に反感をかっていたのだ。
アルトはその場を黙って離れた。
これ以上、その場にいれば殴りかかりそうだったからだ。
夜風に当たりながらアルトは呟く。
「あいつら、あんなに姫に懐いていたくせに。手のひら返したように言いたいように言いやがって。」
アルトはミルアージュの行いは何か理由があっての事だと思っている。
寝る間も惜しんで必死でアレンベールを守ろうとしていたのを知っている。
ミルアージュの暴挙は確かに理解できない。
だが、その後のミルアージュを見てもそんな事が言えるのかと皆に言いたい。
ミルアージュの手は小さく震えていた。
顔色を失い、泣くのを我慢している。
そんなうな風に見えた。
王太子妃でなければ、アルトは手を握り慰めていたと自分でも思う。
誰よりも自信たっぷりでいつでも笑顔だったミルアージュが見せた表情。
自分で切りかかっていったのにどうして、こんなに悲しそうな顔をする?
その場を立ち去ったミルアージュは隊長やアルトを呼び、捕まえた領民達に食事を出すように言った。
そして自宅で動けなくなっている領民たちの為に食事を運ぶように指示を出した。
「どうして姫の指示だと言わないのですか?」
アルトは聞く。
「持ってきた支援物資はすぐに底を尽きる。でも追加支援まで何とかもたせたいの。皆、私に反感を持っているから皆の食べ物を分けてと頼んでも快くは引き受けてくれないわ。今更ご機嫌とりかってね。貴方達の指示の方が従いやすいと思うの。」
ミルアージュはそう言い切った。
ミルアージュの言葉は正しかった。
隊長と自分が皆に食料を領民達に分けてもらえないか聞くと皆、快くうなずいた。
アレンベールの現状を知ってしまった今、自分達だけお腹いっぱいご飯を食べるなどできるものではない。
戦をしているわけでもなく体力も使わない。自分達の食べ物を分けるくらい何でもなかった。
「ミルアージュ様の許可はあるのですか?反対しそうですが。」
若い兵士の一人が聞いた。
「ああ、問題ない。」
隊長は言う。
「ほっとけよ、どうせ何もいえないさ。不敬だからっていきなり斬りかかったんだ。色々とバレる前に好感度あげたいだろ。」
「そりゃそうだ。」
笑いが起こる。
「いい加減にしろ、これ以上王太子妃について何も言うな。命令だ。」
隊長が隊員達を睨みつける。
王族の悪口を言うなどあり得ない。
だが、平民が多い部隊であり皆アレンベールの民に同情的だった分、ミルアージュへの反発は大きく、隊員達は言うことを聞きそうになかった。
ミルアージュに呼ばれ、隊長、アルトは領主の部屋に向かった。
部屋に通されると領主のベットの側にミルアージュが付き添っているのが見えた。
今、目を覚ましたばかりの領主はまだあどけなさが残る青年だった。とても綺麗な顔をしている。
執事、侍女達は後ろで心配そうに領主とミルアージュの様子を見守っている。
「どうしてこんな事をしたのですか?」
ミルアージュは領主を睨みつけながら尋ねた。
ここで尋問をするようだ。
その証人として隊長とアルトは呼ばれたのだと理解した。
「貴方は知っていたのか、ここの領の秘密について。」
領主はミルアージュに聞く。
「‥アンロック王家にも伝わっておりました。アンロック元王女ミルアージュ・ディロイア・ルーマンにございます。今はルーマン王太子妃となっております。」
王族としての挨拶を述べ頭を下げた。
王族の名乗りをし、頭を避けねばならない相手なのか?
一領主だぞ?
尋問も領主の部屋のベッドに赴くなどあり得ない待遇だ。
隊長もアルトもミルアージュの言動が信じられなかった。
「そうか、だから君がきてくれたんだね。王も王太子も来なかったのでここは捨てられたと思ったよ。」
領主は悲しそうに微笑んだ。
「ミルアージュ様、どういうことですか?」
隊長、アルトは話の筋が見えていず、領主とミルアージュが言っている意味がわからなかった。
ミルアージュの領主への挨拶は敬意を払ったものであり、領主自身もミルアージュより上だと認識しているような話ぶりだ。
ミルアージュもそれを当たり前としているようだ。
「今は説明できない。これはルーマン、アンロック王家の契約に関する事だから。」
ミルアージュは静かにいう。
ルーマン、アンロックとこの地とどのような契約が結ばれているのか。
王家の契約とは王族の中でも王と後継者にしか伝えられない極秘事項だ。
機密の中の機密といえる王家の契約にどうしてアレンベールが関係しているのか。
アンロックの後継者でもないミルアージュがなぜ知っているのか…
隊長もアルトも意味がわからなかった。
「繰り返します。どうしてこのような事をされたのですか?」
ミルアージュは静かに話し出した。
「これ以上、ここを守る力がないからだ。」
領主は答える。
「それがあなた方の心中に私たちも巻き込もうとした答えですか?共に滅びるつもりでしたか?」
ミルアージュは静かに返した。
???心中?
滅びる?
物騒な言葉が出てきたことに隊長、アルトは目を見開き、ミルアージュを見た。
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