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「あー、聞いてしまったのね。その話気にしなくてもいいから。」
隊長にはなれないとアルトはミルアージュのところに言いに来ていた。
ミルアージュは軽くあしらって話を終えようとしている。
「いや、気にするところだろう。」
平民である事は仕方がない事だが、軍に入って貴族と平民の扱いの差に嫌気がさして荒れていた時期もある。
納得ができなくて上への反発もしていた。
余計に目をつけられても仕方がない。
そうアルトはミルアージュに言った。
「それはあなたが悪い訳ではないし、どちらか言えばその頃のように頑張ってもらいたいわね。」
「いや、そんな事をすれば姫に迷惑をかけるだろう。」
ハァーと大きくため息をついた。
「そうなるのが嫌だったから言いたくなかったのに。クリスは罠にハマるなと言っただけよね?あなたが思う通りに動くなとは言われていないでしょう?」
「だが、前にそうしたら第三部隊に飛ばされた…」
ミルアージュは真っ直ぐにアルトを見つめる。
「もう一度言うわね、あなたは悪くない。そんな事を続けていたら、この国はもたないわ。今変えるしかないの。今の体制をおかしいと思える人でないと変えられないでしょう?」
それでもこんな敵を増やすようなやり方をして急激に推し進めようとするのは…
前に言っていた不穏な動きが関係しているとアルトにもわかった。
なのにミルアージュ達を助ける力がないのが悔しかった。
「もっと俺に力があれば良かったのに…」
アルトはボソッと呟いた。
「戦が起こり、あなたの親しい人が敵となればどうする?もし、味方を見捨てないといけない状況になれば捨てられる?」
ミルアージュの質問にアルトは意味がよくわからなかった。
なぜ、そんな新人に聞くような質問を今するのか…
「何が言いたい?敵ならば知り合いでも容赦はしないし、任務で仲間内から犠牲が出るのは仕方ないだろう?軍人ならその覚悟はできているし、反対に自分を救う事で皆を窮地に立たせるなど死ぬより辛い生き恥だ。」
「そうね…」
「捨てる者が民間人なら後悔はするだろうな。だが、その者を助けて他の多くの犠牲を出すのならそれも後悔する。ならば少しでも多くの者を救いたい。」
アルトは迷わないと言い切った。
「あなたはムランドより強いわよ。」
ミルアージュは笑った。
それに対してアルトは怒り心頭だった。
「それは嫌味か!」
あの試合の後にそんな事を言うなんて、嫌味以外何でもない。
「違うわよ。試合ならムランドが勝つかもしれないけど、戦場で戦えばあなたが勝つわ。」
ムランドは人を殺す、殺されるという命のやり取りの覚悟がないのだから。
迷いがどうしても出る。
実力が出しきれない…
「意味がわからない。試合で負けるなら戦場も負けるだろう。」
「そういう単純なところはあなたの良いところよ。深く考えるタイプは行動が遅れるから。」
「やっぱり嫌味か!失礼する。」
アルトはバンと扉を閉めて訓練に行った。
もうあんな事言わせない。
アルトはメラメラと闘志を燃やしていた。
「本当、昔の軍部大将みたい。あなたのように割り切るのは難しいのよ。」
後悔…そんな言葉で終わるほど甘くはない。
自分を責め続け軍人として終える者もいた。
アルトは辛くても前に進めるタイプだ。
苦しんでその場から動けなくなる事はないだろう。
それがアルトの強さだ。
上に立つには必要な能力。
責任の全てがかかってくる立場になるのだから。
「隊長くらいでガタガタ言わないでほしいわね。」
私が目指すのはそこではないとミルアージュは思っている。
アルトをこの国の軍トップにする。
この国の軍部をみた上での決定事項だ。
能力的にアルトの上を行くものはいない。
何よりこの国の体制に不満を持っている。
強い意志を持っている。
アルトは全くそんな事考えてもいないだろう。私からも言わないし。
今言って逃げられたら困るもの。
「クリスを何とかしないとね。」
私を心配しすぎて空回っているわ。
ここは少し脅しとかないと。
ミルアージュはクリストファーに面会申請を行った。
隊長にはなれないとアルトはミルアージュのところに言いに来ていた。
ミルアージュは軽くあしらって話を終えようとしている。
「いや、気にするところだろう。」
平民である事は仕方がない事だが、軍に入って貴族と平民の扱いの差に嫌気がさして荒れていた時期もある。
納得ができなくて上への反発もしていた。
余計に目をつけられても仕方がない。
そうアルトはミルアージュに言った。
「それはあなたが悪い訳ではないし、どちらか言えばその頃のように頑張ってもらいたいわね。」
「いや、そんな事をすれば姫に迷惑をかけるだろう。」
ハァーと大きくため息をついた。
「そうなるのが嫌だったから言いたくなかったのに。クリスは罠にハマるなと言っただけよね?あなたが思う通りに動くなとは言われていないでしょう?」
「だが、前にそうしたら第三部隊に飛ばされた…」
ミルアージュは真っ直ぐにアルトを見つめる。
「もう一度言うわね、あなたは悪くない。そんな事を続けていたら、この国はもたないわ。今変えるしかないの。今の体制をおかしいと思える人でないと変えられないでしょう?」
それでもこんな敵を増やすようなやり方をして急激に推し進めようとするのは…
前に言っていた不穏な動きが関係しているとアルトにもわかった。
なのにミルアージュ達を助ける力がないのが悔しかった。
「もっと俺に力があれば良かったのに…」
アルトはボソッと呟いた。
「戦が起こり、あなたの親しい人が敵となればどうする?もし、味方を見捨てないといけない状況になれば捨てられる?」
ミルアージュの質問にアルトは意味がよくわからなかった。
なぜ、そんな新人に聞くような質問を今するのか…
「何が言いたい?敵ならば知り合いでも容赦はしないし、任務で仲間内から犠牲が出るのは仕方ないだろう?軍人ならその覚悟はできているし、反対に自分を救う事で皆を窮地に立たせるなど死ぬより辛い生き恥だ。」
「そうね…」
「捨てる者が民間人なら後悔はするだろうな。だが、その者を助けて他の多くの犠牲を出すのならそれも後悔する。ならば少しでも多くの者を救いたい。」
アルトは迷わないと言い切った。
「あなたはムランドより強いわよ。」
ミルアージュは笑った。
それに対してアルトは怒り心頭だった。
「それは嫌味か!」
あの試合の後にそんな事を言うなんて、嫌味以外何でもない。
「違うわよ。試合ならムランドが勝つかもしれないけど、戦場で戦えばあなたが勝つわ。」
ムランドは人を殺す、殺されるという命のやり取りの覚悟がないのだから。
迷いがどうしても出る。
実力が出しきれない…
「意味がわからない。試合で負けるなら戦場も負けるだろう。」
「そういう単純なところはあなたの良いところよ。深く考えるタイプは行動が遅れるから。」
「やっぱり嫌味か!失礼する。」
アルトはバンと扉を閉めて訓練に行った。
もうあんな事言わせない。
アルトはメラメラと闘志を燃やしていた。
「本当、昔の軍部大将みたい。あなたのように割り切るのは難しいのよ。」
後悔…そんな言葉で終わるほど甘くはない。
自分を責め続け軍人として終える者もいた。
アルトは辛くても前に進めるタイプだ。
苦しんでその場から動けなくなる事はないだろう。
それがアルトの強さだ。
上に立つには必要な能力。
責任の全てがかかってくる立場になるのだから。
「隊長くらいでガタガタ言わないでほしいわね。」
私が目指すのはそこではないとミルアージュは思っている。
アルトをこの国の軍トップにする。
この国の軍部をみた上での決定事項だ。
能力的にアルトの上を行くものはいない。
何よりこの国の体制に不満を持っている。
強い意志を持っている。
アルトは全くそんな事考えてもいないだろう。私からも言わないし。
今言って逃げられたら困るもの。
「クリスを何とかしないとね。」
私を心配しすぎて空回っているわ。
ここは少し脅しとかないと。
ミルアージュはクリストファーに面会申請を行った。
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