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アビーナル、アルトは二人揃って王に呼び出されていた。
「お前も呼ばれていたんだな。」
「そういうあなたも。」
普段二人きりになる事はない為、気まずさがあった。
この2人が呼ばれるならクリストファーとミルアージュの話だろう。
だが、王はクリストファーとミルアージュに内緒にして王の私室に呼ばれていた。
執務室ではできない内容。いい話ではなさそうだ…と覚悟を決めるしかなかった。
「よく来た。そんなに畏まらなくていい。公式な場でもないしな。」
王はにこやかだ。
またそれが余計に怖かった。
「今日は話があるということでしたが、どのような内容でしょうか。」
アビーナルは恐る恐る聞いた。
アルトは王からすすめられたお茶を飲んでだんまりを決め込んだ。王と個別で面会するのは初めてであり、緊張は最高潮だった。
「少し聞きたいことと、話しておきたいことがあってな。クリストファーとミルアージュ妃のことだ。」
やはり…2人の予想は当たっていた。
「あの2人を見てどう思う?正直に言ってくれて構わない。不敬にも問わない。」
王は二人を見ながら言った。
不敬になるような話なのか?
何を知りたいのか?
王の意図がわからず、2人は混乱していた。
「将来、この国を治めていく立派な王太子と王太子妃だと思います。」
アビーナルは思っていることを話し、アルトが頷いた。
今よりきっとよい国に皆を導いてくれると信じてついていける方々だと自信を持って言える。
「それは間違いないんだけどね。」
王はハァとため息をついた。
公の場での王と違い、だいぶ砕けた話し方をする事に驚いた。
二人は王を見つめて話し出すのを待った。
「クリストファーのミルアージュ妃への想いはどのように見える?」
「溺愛していると思います。」
アビーナルが答えるとアルトも隣でウンウンと頷いている。
「溺愛ね‥それだけで済めば良かったんだけど。」
王は苦笑いをした。
「クリストファーのミルアージュ妃に対する執着はものすごい。」
溺愛より執着と言い切る王に驚きはしたが、そうだろうなとアビーナルもアルトも思っている。
クリストファーは国王とともに初めての外交で会ったミルアージュに一目惚れをし、妃にすると言い出した。
アンロックにはまだ王子が誕生していず、ミルアージュが王位継承権第一位であり、またクリストファーも王太子であったため、どちらの国も子を出すわけにはいかない。
婚約も結婚も認められるものではなかった。
子どもの言うことと適当にごまかして帰国したが、2年経ってもクリストファーの熱は冷めなかった。
そこで王はクリストファーに本当のことを話した。
婚約も結婚もできないと。
「そんなことですか。私が向こうの国に行き、この国は別の者が王になればよいのですよ。弟達もいるじゃないですか。」
「王になりたくないのか?お前は優秀だと聞いている。次期国王はお前になるだろう。それを放棄しても行くのか?」
「はい、もちろんです。ミルアージュ姫が一番大切です。」
笑顔でクリストファーに返され、王は頭が痛くなった。
アンロックに王子レンドランドが誕生するとミルアージュをアンロックに縛るものがなくなった。
クリストファーから何度も何度も嘆願され、アンロック王へ婚約の打診をした。
結果として断られるのだが、そこから王太子としての外交という名のもとにアンロックには何度も訪れる。
ミルアージュの喜びそうなお土産を持って。
成人するミルアージュをずっと待っていた。
そして、成人と同時に婚約の申し入れを行った。
まぁ、それも断られることになるのだが‥クリストファーは諦めなかった。
ミルアージュが誰かと結ばれれば、戦争すら起きるのではないかと王は思った。
ミルアージュがレンドランド暗殺の罪で国外追放、行方不明になると気が狂わんほどに荒れ、探しに行くと消えた。
王太子が何度も留学に行くことはない、よほど外交に力を入れたいと皆が考えていた。
留学に行っていたのはそんな理由なのかと二人はクリストファーの評価が下がったのは致し方がない。
「クリストファーは本当に優秀だ。だから王太子としているが、それはミルアージュ妃がいるからだ。クリストファーはミルアージュ妃にもしものことがあれば再起不能になるだろう。最優先事項は国ではなく、ミルアージュ妃だからだ。」
一息おき王は続けた。
「だが、ミルアージュ妃はクリストファーを失い、悲しんだとしても感情を殺してでも政務を行うことができる。ミルアージュ妃の最優先事項は国であり、民なのだから。王族としての覚悟を持っている。王の器だな。」
自分の娘に欲しかったとポツリと呟く王に同情した。
クリストファーが優秀でなければ諦めもついたのに…と呟く王の声は小さかった。
「王命だ。有事の際はクリストファーではなくミルアージュ妃を優先しろ。そして危険が迫った時、クリストファーではなくミルアージュ妃の命を守れ。それがこの国の為だ。」
王太子より妃を優先することは臣下としてはできないが、王命があれば別だ。
あとはミルアージュ様が病気などせず、クリストファー様より長く生きるのを祈るのみだ。
アビーナルはふと思った。どうして今呼ばれてこんな話をされているのだろうと。
「今、その話をされたのはこの間のクリストファー様の執務室での一件が絡んでますか?」
アビーナルは王に聞いた。
王は返答しなかったが、ニッコリ笑った。
どうして知っているのか聞かない方が良いとアビーナルは思った。
「お前も呼ばれていたんだな。」
「そういうあなたも。」
普段二人きりになる事はない為、気まずさがあった。
この2人が呼ばれるならクリストファーとミルアージュの話だろう。
だが、王はクリストファーとミルアージュに内緒にして王の私室に呼ばれていた。
執務室ではできない内容。いい話ではなさそうだ…と覚悟を決めるしかなかった。
「よく来た。そんなに畏まらなくていい。公式な場でもないしな。」
王はにこやかだ。
またそれが余計に怖かった。
「今日は話があるということでしたが、どのような内容でしょうか。」
アビーナルは恐る恐る聞いた。
アルトは王からすすめられたお茶を飲んでだんまりを決め込んだ。王と個別で面会するのは初めてであり、緊張は最高潮だった。
「少し聞きたいことと、話しておきたいことがあってな。クリストファーとミルアージュ妃のことだ。」
やはり…2人の予想は当たっていた。
「あの2人を見てどう思う?正直に言ってくれて構わない。不敬にも問わない。」
王は二人を見ながら言った。
不敬になるような話なのか?
何を知りたいのか?
王の意図がわからず、2人は混乱していた。
「将来、この国を治めていく立派な王太子と王太子妃だと思います。」
アビーナルは思っていることを話し、アルトが頷いた。
今よりきっとよい国に皆を導いてくれると信じてついていける方々だと自信を持って言える。
「それは間違いないんだけどね。」
王はハァとため息をついた。
公の場での王と違い、だいぶ砕けた話し方をする事に驚いた。
二人は王を見つめて話し出すのを待った。
「クリストファーのミルアージュ妃への想いはどのように見える?」
「溺愛していると思います。」
アビーナルが答えるとアルトも隣でウンウンと頷いている。
「溺愛ね‥それだけで済めば良かったんだけど。」
王は苦笑いをした。
「クリストファーのミルアージュ妃に対する執着はものすごい。」
溺愛より執着と言い切る王に驚きはしたが、そうだろうなとアビーナルもアルトも思っている。
クリストファーは国王とともに初めての外交で会ったミルアージュに一目惚れをし、妃にすると言い出した。
アンロックにはまだ王子が誕生していず、ミルアージュが王位継承権第一位であり、またクリストファーも王太子であったため、どちらの国も子を出すわけにはいかない。
婚約も結婚も認められるものではなかった。
子どもの言うことと適当にごまかして帰国したが、2年経ってもクリストファーの熱は冷めなかった。
そこで王はクリストファーに本当のことを話した。
婚約も結婚もできないと。
「そんなことですか。私が向こうの国に行き、この国は別の者が王になればよいのですよ。弟達もいるじゃないですか。」
「王になりたくないのか?お前は優秀だと聞いている。次期国王はお前になるだろう。それを放棄しても行くのか?」
「はい、もちろんです。ミルアージュ姫が一番大切です。」
笑顔でクリストファーに返され、王は頭が痛くなった。
アンロックに王子レンドランドが誕生するとミルアージュをアンロックに縛るものがなくなった。
クリストファーから何度も何度も嘆願され、アンロック王へ婚約の打診をした。
結果として断られるのだが、そこから王太子としての外交という名のもとにアンロックには何度も訪れる。
ミルアージュの喜びそうなお土産を持って。
成人するミルアージュをずっと待っていた。
そして、成人と同時に婚約の申し入れを行った。
まぁ、それも断られることになるのだが‥クリストファーは諦めなかった。
ミルアージュが誰かと結ばれれば、戦争すら起きるのではないかと王は思った。
ミルアージュがレンドランド暗殺の罪で国外追放、行方不明になると気が狂わんほどに荒れ、探しに行くと消えた。
王太子が何度も留学に行くことはない、よほど外交に力を入れたいと皆が考えていた。
留学に行っていたのはそんな理由なのかと二人はクリストファーの評価が下がったのは致し方がない。
「クリストファーは本当に優秀だ。だから王太子としているが、それはミルアージュ妃がいるからだ。クリストファーはミルアージュ妃にもしものことがあれば再起不能になるだろう。最優先事項は国ではなく、ミルアージュ妃だからだ。」
一息おき王は続けた。
「だが、ミルアージュ妃はクリストファーを失い、悲しんだとしても感情を殺してでも政務を行うことができる。ミルアージュ妃の最優先事項は国であり、民なのだから。王族としての覚悟を持っている。王の器だな。」
自分の娘に欲しかったとポツリと呟く王に同情した。
クリストファーが優秀でなければ諦めもついたのに…と呟く王の声は小さかった。
「王命だ。有事の際はクリストファーではなくミルアージュ妃を優先しろ。そして危険が迫った時、クリストファーではなくミルアージュ妃の命を守れ。それがこの国の為だ。」
王太子より妃を優先することは臣下としてはできないが、王命があれば別だ。
あとはミルアージュ様が病気などせず、クリストファー様より長く生きるのを祈るのみだ。
アビーナルはふと思った。どうして今呼ばれてこんな話をされているのだろうと。
「今、その話をされたのはこの間のクリストファー様の執務室での一件が絡んでますか?」
アビーナルは王に聞いた。
王は返答しなかったが、ニッコリ笑った。
どうして知っているのか聞かない方が良いとアビーナルは思った。
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