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「ミア、ミア、ミア」
クリストファーは涙をポロポロと流しながらミルアージュを抱きしめていた。
「クリス、ちょっと落ち着いて。」
ミルアージュはクリストファーの様子に驚きを隠せない。
ミルアージュの想いを告げれば、確かに泣くかもしれないとは思っていた。
だが、まだミルアージュは何も言っていないし、何より…
目の前にはマカラックもアビーナルもいる。
そんな場所で王太子であるクリストファーが泣くなんて考えられなかった。
今のクリストファーは周りのものなど全く見えていなかった。
マカラックからミルアージュが幸福を受け入れたと言われた瞬間にクリストファーはいきなり泣き出したのだ。
ミルアージュの幸せだけを願ってきたクリストファーにとってミルアージュに好かれるよりもずっと大切な事。
幸福を拒否し副作用にすら苦しむミルアージュの姿はクリストファーにとって苦痛以外の何ものでもなかった。
「よかった、本当に良かった。」
人目も全く気にならないほどクリストファーは喜んだ。
「私達は出ているぞ。ミルアージュ殿の告白を聞いたクリストファー殿がどんな反応を示すのか楽しみだ。」
マカラックが笑いながらアビーナルを連れて部屋を出た。
ミルアージュはやられたと思った。
あまりのテンションにドン引きしているミルアージュは今日言うつもりはなかったのだ。
マカラック様がああ言ってしまえば、クリスは…
チラッと顔を見ると顔をジッと覗き込まれている。
「ミアの告白とはなんだ?」
クリストファーは涙を流しながら聞いてきた。
ミルアージュはクリストファーの涙をハンカチで拭う。
ハァーと大きく息を吐いてミルアージュは決意した。
「国や民の為にはクリスのそばを離れた方が良いのはわかっているわ。」
「そんな事はない!ミアは誰よりも貢献してきたはずだ。それを…」
クリストファーはミルアージュにその先を言わせたくなかった。
今までの経験上、別れ話以外考えられないのだから。
そんなクリストファーの口をミルアージュは手で優しく押さえた。
「クリス最後まで聞いて。私の存在はルーマンの為にはならない。」
クリストファーはミルアージュに口を押さえられたまま、横に首を振った。
先ほどの嬉し泣きとは違い、絶望感でいっぱいとなった。
これ以上、ミアに言わせたらいけない…
そう思うのにミルアージュを止めることなどクリストファーにはできなかった。
どうしたらつなぎとめられる?
クリストファーの頭の中は何とかミルアージュを説得させる方法を必死で考えていた。
「だから私は変わるわ。みんなに認められるように。」
???
クリストファーはミルアージュの言う意味がわからなかった。
呆然とミルアージュを見つめた。
「クリスのそばにいる為に今までのように私が悪者になっても良いなんて思わない。あなたにふさわしい妃と皆に認めてもらえるように。」
「…」
「あなたのそばにいたい。離れられない。やっとそのことに気づいたの。 気づくのが遅くなってごめんなさい。」
クリストファーは横に首をブンブン振っている。
目からは更にポロポロと涙が溢れている。
ミルアージュの手をクリストファーは両手で握りしめ、ひざまづいた。
「ミア、遅くなんてない!そんな風に言ってもらえるなんて夢のようだ。ありがとう。ありがとう、ミア。」
クリストファーはもう他に何もいらないと心の底から思った。
「でもね、約束して。私に何かあってもルーマン王国をしっかりと治めていくって。」
「何かって何があるんだ!!そんな事は間違っても起こらない!」
クリストファーの声が大きくなった。
「いつ何があるかなんてわからないわ。私と約束して。お願い…」
ミルアージュの辛そうな表情になった。
クリストファーは焦った。
せっかくミアがそばにいてくれると言っているのに、それを反故にされるかもしれないと。
「その約束でミアがずっとそばにいてくれるのなら…約束しよう。何があろうとルーマンを蔑ろには絶対にしない。」
真剣な面持ちで答える。
ルーマンよりミアを選ぶ。その気持ちは今でも変わらない。
考えるのも嫌だが、ミアに何かあれば自分も生きていけるか自信はない。
だが、ミアとの約束は守らねばならない。
ならばミアに何もなければ良い話だ。
だから、嘘は言っていない。そうクリストファーは自分に言い聞かせた。
ミルアージュは、クリストファーのその真剣な表情を少し疑いつつも約束を違える事はないと信じることにした。
最悪な道に進まないように根回しはしておく。
それでも不安は残るが、一緒に生きていくと決めた。
私のわがままだったとしても、クリスのぬくもりはもう手放せない。
クリストファーは涙をポロポロと流しながらミルアージュを抱きしめていた。
「クリス、ちょっと落ち着いて。」
ミルアージュはクリストファーの様子に驚きを隠せない。
ミルアージュの想いを告げれば、確かに泣くかもしれないとは思っていた。
だが、まだミルアージュは何も言っていないし、何より…
目の前にはマカラックもアビーナルもいる。
そんな場所で王太子であるクリストファーが泣くなんて考えられなかった。
今のクリストファーは周りのものなど全く見えていなかった。
マカラックからミルアージュが幸福を受け入れたと言われた瞬間にクリストファーはいきなり泣き出したのだ。
ミルアージュの幸せだけを願ってきたクリストファーにとってミルアージュに好かれるよりもずっと大切な事。
幸福を拒否し副作用にすら苦しむミルアージュの姿はクリストファーにとって苦痛以外の何ものでもなかった。
「よかった、本当に良かった。」
人目も全く気にならないほどクリストファーは喜んだ。
「私達は出ているぞ。ミルアージュ殿の告白を聞いたクリストファー殿がどんな反応を示すのか楽しみだ。」
マカラックが笑いながらアビーナルを連れて部屋を出た。
ミルアージュはやられたと思った。
あまりのテンションにドン引きしているミルアージュは今日言うつもりはなかったのだ。
マカラック様がああ言ってしまえば、クリスは…
チラッと顔を見ると顔をジッと覗き込まれている。
「ミアの告白とはなんだ?」
クリストファーは涙を流しながら聞いてきた。
ミルアージュはクリストファーの涙をハンカチで拭う。
ハァーと大きく息を吐いてミルアージュは決意した。
「国や民の為にはクリスのそばを離れた方が良いのはわかっているわ。」
「そんな事はない!ミアは誰よりも貢献してきたはずだ。それを…」
クリストファーはミルアージュにその先を言わせたくなかった。
今までの経験上、別れ話以外考えられないのだから。
そんなクリストファーの口をミルアージュは手で優しく押さえた。
「クリス最後まで聞いて。私の存在はルーマンの為にはならない。」
クリストファーはミルアージュに口を押さえられたまま、横に首を振った。
先ほどの嬉し泣きとは違い、絶望感でいっぱいとなった。
これ以上、ミアに言わせたらいけない…
そう思うのにミルアージュを止めることなどクリストファーにはできなかった。
どうしたらつなぎとめられる?
クリストファーの頭の中は何とかミルアージュを説得させる方法を必死で考えていた。
「だから私は変わるわ。みんなに認められるように。」
???
クリストファーはミルアージュの言う意味がわからなかった。
呆然とミルアージュを見つめた。
「クリスのそばにいる為に今までのように私が悪者になっても良いなんて思わない。あなたにふさわしい妃と皆に認めてもらえるように。」
「…」
「あなたのそばにいたい。離れられない。やっとそのことに気づいたの。 気づくのが遅くなってごめんなさい。」
クリストファーは横に首をブンブン振っている。
目からは更にポロポロと涙が溢れている。
ミルアージュの手をクリストファーは両手で握りしめ、ひざまづいた。
「ミア、遅くなんてない!そんな風に言ってもらえるなんて夢のようだ。ありがとう。ありがとう、ミア。」
クリストファーはもう他に何もいらないと心の底から思った。
「でもね、約束して。私に何かあってもルーマン王国をしっかりと治めていくって。」
「何かって何があるんだ!!そんな事は間違っても起こらない!」
クリストファーの声が大きくなった。
「いつ何があるかなんてわからないわ。私と約束して。お願い…」
ミルアージュの辛そうな表情になった。
クリストファーは焦った。
せっかくミアがそばにいてくれると言っているのに、それを反故にされるかもしれないと。
「その約束でミアがずっとそばにいてくれるのなら…約束しよう。何があろうとルーマンを蔑ろには絶対にしない。」
真剣な面持ちで答える。
ルーマンよりミアを選ぶ。その気持ちは今でも変わらない。
考えるのも嫌だが、ミアに何かあれば自分も生きていけるか自信はない。
だが、ミアとの約束は守らねばならない。
ならばミアに何もなければ良い話だ。
だから、嘘は言っていない。そうクリストファーは自分に言い聞かせた。
ミルアージュは、クリストファーのその真剣な表情を少し疑いつつも約束を違える事はないと信じることにした。
最悪な道に進まないように根回しはしておく。
それでも不安は残るが、一緒に生きていくと決めた。
私のわがままだったとしても、クリスのぬくもりはもう手放せない。
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