わがまま妃はもう止まらない

みやちゃん

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「クリスは何でそんなに詳しいの?外交専門にしてなかった?内政もちゃんとしていたのね。」

内政は国王がメインでしていた筈だ。
それなのに一両地についてこんなに詳しく知っている事にミルアージュは感激していた。

クリストファーは国を考えられる王太子だ。

私の前だから極端な態度でいただけで、きちんと国政にも向かい合っていたとわかった。

「…私を誰だと思っている。国王の代わりに視察や内部調査にも出ているからな。」

ミルアージュから視線をずらしながら片言で答える。
ミルアージュに嘘はつけない。

だから、ギリギリ嘘がない範囲で答えた。

国王の代わりを務めたのは事実だ。
貴族たちに睨みをきかせるのはルーマン国王より周辺諸国からも恐れられているクリストファーの方が適任だった。

まじめに内政をしていたかと言われると否だ。

クリストファーが領地へ行って無愛想な顔をして座っているだけで貴族への睨みになるのだから。

メインはミルアージュを喜ばせる為の情報収集だった。

「ふーん、なんか怪しい…」
クリストファーと幼馴染みのミルアージュは疑わしい視線を向ける。

クリストファーは頭の中で一生懸命に言い訳を考えていたが、ちょうどその時に大きな声が聞こえてきた。
ミルアージュの興味が移り、視線が騒ぎのある方に向く。

「何かあったみたいだな。見に行くか。」
その場から逃れたいクリストファーだったが、その現場にたどり着いた瞬間、後悔した。

衛兵に囲まれ、手と足に鎖を繋がれたまだ10代と思われる男の子が倒れていた。
全身がムチで打たれたのか服は破れ、ミミズ腫れとなり、至る所から血が流れている。

その側で衛兵が大声で宣言する。
「今からこの罪人の処刑を行う。皆、そのナイフを持ち、罪人を刺せ。」

そういうと市場に集まっている民の前で大きな箱に入っていた多量の小型ナイフを地面にばら撒いた。

市場にざわつきが起こる。
中には「なんて事…」と言いながら涙を流している者もいる。

「そんな事をすれば死んでしまう!そんな事はできない。」
その光景を見ていた1人が声を上げる。

「これは処刑だと言った。殺す為にするのだ。ここで逆らえば反逆罪でお前達にも罰を与える。」

その声に民達はビクリと反応した。

観光客は異変を感じ取り、コソコソと市場から離れていった。

残されたのはこの地の領民とクリストファー、ミルアージュのみとなった。

倒れている男の子は領民のよく知っている人物なのだろう。
皆、恐る恐るナイフを握るが、誰も動かなかった。

衛兵はその様子を見て苛立ちを感じ、手の鎖を引っ張り、男の子を無理やり立たせた。

「これならば刺しやすいだろう。それとも、皆、反逆罪でこいつと一緒に処刑されたいか?」
衛兵はやらしくニヤニヤと笑いながら周囲を見渡した。

「ミア…」
嫌悪感を隠そうともしないミルアージュにクリストファーはなんと言って良いかわからなかった。

ミルアージュは地面に転がっているナイフを一つ拾って前に進み出た。

「おっ、お前から行くのか?初めて見る顔だが、なかなかいい女だ。どうだ、この後一緒に俺らと一緒にどうだ?いい思いをさせてやる。」

衛兵は、ミルアージュの顎をグイッと上に持ち上げ顔をマジマジと見た。
他の衛兵はその様子を見てニヤニヤと笑っている。

「…」

ミルアージュは無言だった。
衛兵の無礼など気にするものではなかった。
それよりも目の前で起こった非道な処刑への怒りが勝っていた。

だが、非道な処刑よりもその衛兵への怒りが大きな者もいた。

ミルアージュを顎を持ち上げている衛兵の手首をクリストファーが握ってミルアージュから引き離す。

「お前は何者だ?手を離せ。」
衛兵はクリストファーに怒鳴り、周囲の衛兵も剣を抜く。

「私のミアに汚い手で触らないでもらおう。」
クリストファーは微笑んでいた。
とても静かに。

ミルアージュはゾクリとする。
クリストファーはマジギレをしている。
ここまで切れるクリストファーを見るのはミルアージュも滅多にない。

クリストファーが切れて暴走すればミルアージュですら止めるのが難しかった。

クリストファーが掴んでいる衛兵の手首からボキッという音が聞こえ、衛兵はその場に崩れ落ちた。

「クリス、落ち着いて。」
ミルアージュはクリストファーに恐る恐る声をかける。

「ミア、私は冷静だよ。だが、私のミアに手出しをする者は許すつもりはない。」

ミルアージュに向かい、クリストファーは静かに微笑む。

あぁ、もう手遅れだとミルアージュが悟った。
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