わがまま妃はもう止まらない

みやちゃん

文字の大きさ
203 / 252

203

しおりを挟む
「そろそろ戻ってくる頃だな。もうそなたの本性はミルアージュ殿にバレてるはずだ。覚悟はできているか?」

マカラックは手の中の光を見つめながら、クリストファーに声をかける。

マカラックの言葉を聞いたクリストファーはビクッと反応したが、何も答えなかった。

「…」

マカラックだって本当ならこんな事はしたくなかった。

ミルアージュ殿もクリストファー殿もどうしてこんなに抱え込むんだ?
それがマカラックの一番に思う事だ。

クリストファーは国を優先させようとするミルアージュの言動に追い詰められていた。

全てを話して受け入れてもらいたい。
だが、拒否されるのが怖くて一生隠したい。

その2つの思いにクリストファーはずっと苦しんでいた。

そして結論が出ないその苦悩に板挟み状態がもう何年も続き、クリストファーの心が壊れ始めたのをマカラックは気づいてしまった。

元々ミルアージュ以外に関しては興味もなかっただけだったのが、破壊願望に変わってしまったのだ。

ミルアージュ殿に何かあれば世界が終わる。

夫婦でも知らなくてもいい事だってある。
見て見ぬふりをしていたマカラックだが、夫婦の問題を超えて世界の危機となると話は別だ。

この夫婦は世界を破滅させる力があるから怖いんだ…

夫婦喧嘩で終われば、こんなふうに隠された真実を無理やり晒さなくても良かったのに。
マカラックはため息をつく。

「時間だ。」

マカラックの手の中の光が強く光出し大きくなり、その中から涙を流しているミルアージュが現れた。

「ミア!大丈夫なのか?」
クリストファーはすぐにミルアージュに駆け寄ったが、ミルアージュはクリストファーの呼びかけに反応しなかった。

「ミア?ミア?」
ミルアージュは肩を掴まれて初めてクリストファーを認識した。

「あっ…クリス…私…クリスの過去を見たわ。」
ミルアージュはその先、何て言ったらいいのかわからなかった。

そんなミルアージュを見てクリストファーは真実を知ったのだとわかった。
ミルアージュの反応に怯えながらもゆっくりと抱きしめる。

「何も言わなくてもいい。私が怖くなったか?」
抱きしめたまま、ミルアージュの耳元で囁いた。

「クリス…私…」
ミルアージュの言葉は続かない。

クリストファーはミルアージュの反応を知りたいと思いながらも拒否されるのを恐れて顔を見る事ができなかった。

クリストファーが震えていた事にミルアージュは気づいてクリストファーを見上げた。

「怖くないわ!でも…ごめんなさい、勝手な事をして。」

「ミアが勝手にした訳じゃないだろう?」

「それでも人の心の中を覗くなんてしてはいけないのよ。クリスが今まで黙ってきた事なのに…」

クリストファーは苦笑いを浮かべながら首を横に振った。

「私が望んでいた事だ。ミアが求めるものに私は応えられない。それがずっと苦しかった。だから、一生隠し通したいと思う反面、私の本性をミアにだけは知ってもらいたかった。その上で私を受け入れて欲しかったんだ。」
クリストファーの声は震えている。
ミルアージュは黙ってクリストファーの言葉を聞いた。

「こんなにそばにいたのに…あなたができない事を責めてずっと傷つけてきたの。あなたの思いを全く聞かずに国を優先してと言う私に言えないのは当たり前よ。私があなたの言葉を全部、否定してきたのだから。」
ミルアージュの目から涙がポロポロと流れる。

その涙にクリストファーは口付けをした。

「こんなに泣かせてすまない。私が意図的に隠したのだから気づかなくて当然だ。」

「ううん、そうさせたのは私よ。だから、私も覚悟を決めたの。」
ミルアージュは真顔になり、右手をクリストファーの頬に当てた。

ミルアージュの表情を見てクリストファーはゴクリと息を飲んだ。

「クリス、あなたの跡継ぎを早めに育てましょう。」
ミルアージュの答えはクリストファーが想像していたものと全く違う内容だった。

「ミア?それはどういう事だ?まだ国王も引退していない状態だし、私が王太子から外される可能性は少ない。それに、もし私に何があっても弟たちもいる。」

弟たちがおり、クリストファーに何かがあっても変わりはいるから問題はないはずだ。
なぜそんなに後継ぎの育成を急がないと行けないのかクリストファーにはわからなかった。

「あなたの弟たちはクリスがなんとかすると思って国政に対しても積極的に関わっていないし、残念だけどその能力もないわ…。あなたの代わりができる人を育成しないといけないのよ。」

「だから、なぜこのタイミングなんだ?大体、私が死んでもミアがいれば大丈夫だろう?弟たちをフォローしてくれ。」

「それは無理よ。私は死んだ後の話だから。」

「は?ミアが死ぬ?なんの話だ!誰かが狙っているのか?」
クリストファーの顔は険しくなり、殺気が漏れる。

「暗殺だけではなく、病気や事故で死ぬこともあるわ。」

考えたくはないが、絶対にないとは言い切れない事はクリストファーにもわかっている。

だが、なぜ、今?
クリストファーはミルアージュの言葉の意味を考えたが、よくわからなかった。

「…そうかもしれないが、どうしてその話が出るんだ?過去の私を見たことと後継ぎの育成がどうつながるんだ?」

状況がまだよくわかっていないクリストファーにミルアージュはニッコリと笑って答えた。

「私が死ぬ時、クリスあなたも一緒に死ぬからよ。」
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く

ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。 5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。 夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…

お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます

菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。 嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。 「居なくていいなら、出ていこう」 この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし

七日後に神罰が落ちる。上層部は「下を切り捨てろ」と言った——私は全員を逃がす

蒼月よる
ファンタジー
七日後、この港に神罰が落ちる。 追放された元観測士イオナだけが、その事実を知っていた。 しかも災害は自然現象ではない——誰かが、意図的に引き起こそうとしている。 港の上層部はすでに手を打っていた。「下層区画を緩衝被害区として切り捨てる」秘密契約。被害を最小限に見せかけ、体制を守る冷徹な計画だ。 イオナは元護送隊長ガルム、荷運び組合長メラとともに動き出す。 犯人を暴き、証拠を公開し、住民を逃がし、工廠を止める——すべてを七日で。 被害を「選ぶ」管理か、全員を「残す」運用か。 追放観測士の、七日間の港湾カウントダウン・サスペンス。 この作品は以下の箇所にAI(Claude Code)を利用しています。 ・世界観・設定の管理補助 ・プロット段階の壁打ち ・作者による執筆後の校正

好きな人に『その気持ちが迷惑だ』と言われたので、姿を消します【完結済み】

皇 翼
恋愛
「正直、貴女のその気持ちは迷惑なのですよ……この場だから言いますが、既に想い人が居るんです。諦めて頂けませんか?」 「っ――――!!」 「賢い貴女の事だ。地位も身分も財力も何もかもが貴女にとっては高嶺の花だと元々分かっていたのでしょう?そんな感情を持っているだけ時間が無駄だと思いませんか?」 クロエの気持ちなどお構いなしに、言葉は続けられる。既に想い人がいる。気持ちが迷惑。諦めろ。時間の無駄。彼は止まらず話し続ける。彼が口を開く度に、まるで弾丸のように心を抉っていった。 ****** ・執筆時間空けてしまった間に途中過程が気に食わなくなったので、設定などを少し変えて改稿しています。

婚約破棄された公爵令嬢は虐げられた国から出ていくことにしました~国から追い出されたのでよその国で竜騎士を目指します~

ヒンメル
ファンタジー
マグナス王国の公爵令嬢マチルダ・スチュアートは他国出身の母の容姿そっくりなためかこの国でうとまれ一人浮いた存在だった。 そんなマチルダが王家主催の夜会にて婚約者である王太子から婚約破棄を告げられ、国外退去を命じられる。 自分と同じ容姿を持つ者のいるであろう国に行けば、目立つこともなく、穏やかに暮らせるのではないかと思うのだった。 マチルダの母の祖国ドラガニアを目指す旅が今始まる――   ※文章を書く練習をしています。誤字脱字や表現のおかしい所などがあったら優しく教えてやってください。    ※第二章まで完結してます。現在、最終章をゆっくり更新中です。書くスピードが亀より遅いので、お待たせしてすみませんm(__)m    ※小説家になろう様にも投稿しています。

砕けた愛

篠月珪霞
恋愛
新婚初夜に男に襲われた公爵令嬢エヴリーヌは、不義密通の罪を被せられた。反逆罪に問われた彼女の一族は処刑されるが、気付くと時間が巻き戻っていた。 あなたへの愛? そんなものとうに、砕け散ってしまいました。

妻からの手紙~18年の後悔を添えて~

Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。 妻が死んで18年目の今日。 息子の誕生日。 「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」 息子は…17年前に死んだ。 手紙はもう一通あった。 俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。 ------------------------------

断罪後のモブ令息、誰にも気づかれずに出奔する

まる
ファンタジー
断罪後のモブ令息が誰にも気づかれないよう出奔して幸せを探す話

処理中です...