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「師匠こそ、私を買い被り過ぎです。私にはそんな力はありません。」
ミルアージュの顔が少し歪んだ。
「いえ、私はあなたのそばでアンロックの発展を見てきました。今のアンロックがあるのは全てあなたの功績です。もし、このルーマンで力を発揮できないのだとそれは周囲の人間のせいです。」
そうルンバートは言い切ってクリストファーをチラッと見た。
「‥ミアの近くにいる人間はいつでも痛いところを突くな。」
クリストファーが苦笑を浮かべた。
そんな事言われなくても1番よくわかっているのはクリストファーだ。
ミルアージュがこんな腐り切ったルーマンにはもったい。
ミルアージュの実力を知り尽くしているクリストファーもそう思っている。
だが、それでもクリストファーはミルアージュを手放す事ができなかった。
それどころかミルアージュを王宮の奥深くに閉じ込めて自分だけを見つめて欲しいと思ってしまう自分がいるのも事実だ。
苦笑したまま止まったクリストファーの手をミルアージュがギュッと握った。
「私はこの国を出るつもりはないわよ。」
ミルアージュはクリストファーの葛藤を見抜いているようだ。
「もちろんだ。例えミアがそう望んでも私が許さない。閉じ込める事になったとしてもな。」
そう冗談気味にクリストファーは言ったが、目が笑っていない。
もう片方の本音が出てしまった。
ルンバートはその様子を黙って見ていた。
「姫様、アンロックに戻った方がよろしいのではないでしょうか?」
クリストファーの執着にため息をつきながらルンバートが言う。
「一生、この国でクリスのそばにいるわ。」
フフッとミルアージュが笑う。
ミルアージュはルンバートより人の表情を読むのに長けている。
そのミルアージュがクリストファーの執着に気づいていない訳がない。
知った上で問題視していないのだ。
「姫様がそう望むのなら良いのですけどね‥」
納得ができないルンバートだったが、それがミルアージュの決定ならば引き下がるしかなかった。
「師匠‥話は戻しますが、領主の命が危険に晒されたのは師匠がその計画にいなかった上、誤診があったからだと思っています。」
「‥誤診?」
ルンバートの眉がピクリと動く。
領主の急変に呼ばれ、毒物の摂取を知った時ショックだった。
あれほどそばにいたのに。
それほど追い詰められていた事に気づかず、だまって毒殺未遂の自作自演をしようとするなんて。
医師として把握できなかった事には衝撃があったのは間違いない。
だが、医者としてすべき事はしたはずだ。
にも関わらず、ミルアージュは誤診だと言いきった。
「師匠は医者として加担しなかったのは間違っていないと思います。だけど‥誤診により、症状を悪化させました。これを何の毒だと考えて対処しましたか?」
「‥採血結果や症状からみても神経系の2つの毒のどちらかだが、どちらも一度に多量に飲まないと命に関わるほど重症化はしない。‥あれほど苦味があるものを多量には摂取できないので私の知らない毒薬が存在したのだと考え、広域の解毒剤を使用しました。」
「私の見解も途中までは同じです。どうやって飲ませたのかは領主が犯人ならば問題ありません。苦味は自分さえ我慢すれば良いのですから。ただ、師匠のいう通り本人の意思があっても多量には飲めません。」
「…では、どうして誤診になるのですか?」
ルンバートは誰よりも人を救う事に使命感を見出していた。
誤診という医者として1番なってはいけないミスを指摘され、ルンバートは呆然としながらも答えを聞きたかった。
「検査ではどちらかです。だけど、症状が合わなかったため、師匠は自分の導いた結論を疑い、安全を優先するあまり広域の解毒剤を使用した。それが今回の原因です。」
ミルアージュとルンバートが考える毒にはそれほど強い毒性がなかった。
殺すほどではないが、脅しや嫌がらせに使用する毒物。
多量に飲まなければ、本来は薬にも使われる物で素人でも簡単に手に入る代物だった。
だが、多量に摂取した場合は別だ。
幻覚、錯乱、そして呼吸ができなくなり最悪、心臓が止まる。
ちょっと調子を悪くし、チャンスとばかりに領主になろうと長男が画策してくれるだけで良かったのだろう。
「広域の解毒剤を使用してはいけなかった‥と。」
ルンバートはミルアージュに問うとミルアージュは頷いた。
「だが、症状に合わない‥」
「二つの毒は薬としても使用されます。その薬の絶対禁忌を覚えていますか?」
「もちろん‥医者ならば絶対に間違えてはいけない処方の組み合わでミングリーの薬草との同時使用です。ミングリーは一時だけ驚異的に体力を回復させるもので使い方を間違えれば、患者の症状を悪化させかねないし、乱用による依存性も確認されているもの。領主には処方していなかったし、使う予定もありませんでした。」
医師として当たり前の知識を問うミルアージュの質問の意図がわからない。
ミルアージュは領主が服用していたという市販の健康茶の入った瓶を一つ差し出した。
ルンバートはその瓶を受け取り、手の上に茶葉を出して舐めた。
「‥これは‥!!」
「ほんの少しですが、ミングリーの味がします。この健康茶に入っていて毒の副作用を何倍にも強めたはずです。そして‥」
そこまで聞くとルンバートはその場に膝から崩れ落ちた。
ルンバートが健康茶を処方していた時は飲んでいなかった。
領主の体調に合わせたルンバートが処方したオーダーメイドのお茶だった。
だから、ルンバートに邪魔をされたくなかった領主はルンバートを避けた。
その結果、ルンバートが処方するお茶が飲めなくなり、自分で探し求めたのだ。
「広域の解毒剤は毒の特定ができない場合に使用します。多くの毒に効くため、使用しないより命を救う可能性があるためです。だけど、その分副作用も強くでます。ただでさえ、毒の症状が強く出ていた上に解毒剤の副作用も上乗せされてしまった。」
「私が領主を死なせるところだったのですね‥医者失格だ‥」
ルンバートはそれだけ言うと黙り込んだ。
ミルアージュの顔が少し歪んだ。
「いえ、私はあなたのそばでアンロックの発展を見てきました。今のアンロックがあるのは全てあなたの功績です。もし、このルーマンで力を発揮できないのだとそれは周囲の人間のせいです。」
そうルンバートは言い切ってクリストファーをチラッと見た。
「‥ミアの近くにいる人間はいつでも痛いところを突くな。」
クリストファーが苦笑を浮かべた。
そんな事言われなくても1番よくわかっているのはクリストファーだ。
ミルアージュがこんな腐り切ったルーマンにはもったい。
ミルアージュの実力を知り尽くしているクリストファーもそう思っている。
だが、それでもクリストファーはミルアージュを手放す事ができなかった。
それどころかミルアージュを王宮の奥深くに閉じ込めて自分だけを見つめて欲しいと思ってしまう自分がいるのも事実だ。
苦笑したまま止まったクリストファーの手をミルアージュがギュッと握った。
「私はこの国を出るつもりはないわよ。」
ミルアージュはクリストファーの葛藤を見抜いているようだ。
「もちろんだ。例えミアがそう望んでも私が許さない。閉じ込める事になったとしてもな。」
そう冗談気味にクリストファーは言ったが、目が笑っていない。
もう片方の本音が出てしまった。
ルンバートはその様子を黙って見ていた。
「姫様、アンロックに戻った方がよろしいのではないでしょうか?」
クリストファーの執着にため息をつきながらルンバートが言う。
「一生、この国でクリスのそばにいるわ。」
フフッとミルアージュが笑う。
ミルアージュはルンバートより人の表情を読むのに長けている。
そのミルアージュがクリストファーの執着に気づいていない訳がない。
知った上で問題視していないのだ。
「姫様がそう望むのなら良いのですけどね‥」
納得ができないルンバートだったが、それがミルアージュの決定ならば引き下がるしかなかった。
「師匠‥話は戻しますが、領主の命が危険に晒されたのは師匠がその計画にいなかった上、誤診があったからだと思っています。」
「‥誤診?」
ルンバートの眉がピクリと動く。
領主の急変に呼ばれ、毒物の摂取を知った時ショックだった。
あれほどそばにいたのに。
それほど追い詰められていた事に気づかず、だまって毒殺未遂の自作自演をしようとするなんて。
医師として把握できなかった事には衝撃があったのは間違いない。
だが、医者としてすべき事はしたはずだ。
にも関わらず、ミルアージュは誤診だと言いきった。
「師匠は医者として加担しなかったのは間違っていないと思います。だけど‥誤診により、症状を悪化させました。これを何の毒だと考えて対処しましたか?」
「‥採血結果や症状からみても神経系の2つの毒のどちらかだが、どちらも一度に多量に飲まないと命に関わるほど重症化はしない。‥あれほど苦味があるものを多量には摂取できないので私の知らない毒薬が存在したのだと考え、広域の解毒剤を使用しました。」
「私の見解も途中までは同じです。どうやって飲ませたのかは領主が犯人ならば問題ありません。苦味は自分さえ我慢すれば良いのですから。ただ、師匠のいう通り本人の意思があっても多量には飲めません。」
「…では、どうして誤診になるのですか?」
ルンバートは誰よりも人を救う事に使命感を見出していた。
誤診という医者として1番なってはいけないミスを指摘され、ルンバートは呆然としながらも答えを聞きたかった。
「検査ではどちらかです。だけど、症状が合わなかったため、師匠は自分の導いた結論を疑い、安全を優先するあまり広域の解毒剤を使用した。それが今回の原因です。」
ミルアージュとルンバートが考える毒にはそれほど強い毒性がなかった。
殺すほどではないが、脅しや嫌がらせに使用する毒物。
多量に飲まなければ、本来は薬にも使われる物で素人でも簡単に手に入る代物だった。
だが、多量に摂取した場合は別だ。
幻覚、錯乱、そして呼吸ができなくなり最悪、心臓が止まる。
ちょっと調子を悪くし、チャンスとばかりに領主になろうと長男が画策してくれるだけで良かったのだろう。
「広域の解毒剤を使用してはいけなかった‥と。」
ルンバートはミルアージュに問うとミルアージュは頷いた。
「だが、症状に合わない‥」
「二つの毒は薬としても使用されます。その薬の絶対禁忌を覚えていますか?」
「もちろん‥医者ならば絶対に間違えてはいけない処方の組み合わでミングリーの薬草との同時使用です。ミングリーは一時だけ驚異的に体力を回復させるもので使い方を間違えれば、患者の症状を悪化させかねないし、乱用による依存性も確認されているもの。領主には処方していなかったし、使う予定もありませんでした。」
医師として当たり前の知識を問うミルアージュの質問の意図がわからない。
ミルアージュは領主が服用していたという市販の健康茶の入った瓶を一つ差し出した。
ルンバートはその瓶を受け取り、手の上に茶葉を出して舐めた。
「‥これは‥!!」
「ほんの少しですが、ミングリーの味がします。この健康茶に入っていて毒の副作用を何倍にも強めたはずです。そして‥」
そこまで聞くとルンバートはその場に膝から崩れ落ちた。
ルンバートが健康茶を処方していた時は飲んでいなかった。
領主の体調に合わせたルンバートが処方したオーダーメイドのお茶だった。
だから、ルンバートに邪魔をされたくなかった領主はルンバートを避けた。
その結果、ルンバートが処方するお茶が飲めなくなり、自分で探し求めたのだ。
「広域の解毒剤は毒の特定ができない場合に使用します。多くの毒に効くため、使用しないより命を救う可能性があるためです。だけど、その分副作用も強くでます。ただでさえ、毒の症状が強く出ていた上に解毒剤の副作用も上乗せされてしまった。」
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