わがまま妃はもう止まらない

みやちゃん

文字の大きさ
227 / 252

227

しおりを挟む
毒の特定ができ、解毒剤もより合うものに切り替えた。

「毒の方はもう大丈夫。後は領主の体力に頼るしかないわ。」
ミルアージュはふぅと息を吐く。

できる事は全てした。
領主の体の機能はどこまで落ちていたのか、現時点では判断できない。

「私は少し離れるからここをお願いね。」
ミルアージュは執事とメイドを見た。

「承知しました。」
数時間、空気と化していた執事は頭を下げた。

メイドを見て
「あなたは私をルンバート師匠のところに案内して。居場所はわかる?」

「今、主治医様の部屋はありませんので領主様といつもいた場所におられると思います。いつもこの領の未来について楽しそうに話していました。」
メイドは懐かしむように思い返していた。

「だから、この領は素敵なのね。」
その表情を見たミルアージュはフッと笑う。
領主が医者と領について話すことなどあまりない。

だが、この領主は領民の健康を願い、実践したのだ。
予防医療は領民の健康維持をするため、ひいてはこの領の将来を考えれば、大切なものだ。

だが、お金がかかる上、目に見えない。
目先の利益を考える者には絶対に理解できないもの。
それに力を入れる領主がこのルーマンにいるなんて。

私が知らないだけで、他にも優秀な人たちがいるのではないか。

「もったいなさすぎる。」
ミルアージュはメイドの後をついていきながら、ポソリと呟いた。

「…」
クリストファーはミルアージュの独り言がしっかりと聞こえていたが、反応しなかった。

思い詰めた表情をしたまま、ミルアージュの後ろを歩いており、ミルアージュもクリストファーの様子まで気にかけることができていなかった。

メイドがミルアージュ達を連れてきたのは最上階にある領を一望できる広いバルコニーだった。

「ここでお茶を飲みながら領地をどうしたらよくなるのかを議論し合っていました。」

メイドも執事も領主と主治医がどれほど真剣に取り組んでいたのかを知っていた。
だからこそ、微塵も主治医を疑う事がなかったのだろう。

ガチャリとバルコニーの扉を開くとルンバートが領を眺めていた。

「‥領主は命の危機からは脱しています。ですが、どのくらい後遺症が残るのかはわかりません。」
ミルアージュがルンバートの横に立ち、豊かな領を見た。

「‥姫様、ありがとうございます。私は主治医失格です。」

ルンバートはミルアージュと目を合わせず、領を見ながら言った。

「あれの見極めは通常の医師なら難しいものです‥それを誤診と言い切ってしまいました。すみません。」
ミルアージュはルンバートに謝った。

「謝らないでください。姫様が誤診という言葉を使ったのは、私なら対応できたと思っているのでしょう?」

「‥‥」

「姫様がきてくださって良かった。」

「昔に師匠が私を救ってくれたのを返しただけです。あなたは言ってくれました。医者だから何でもできるわけじゃない。家族をみれないのも当たり前だと、だから自分たちがいるのだと。その言葉にどれほど救われたか‥」

「‥アンロック王は姫様のお父上です。ですが、私は主治医で領主様を診なければならない者です。私情に囚われて確認を疎かにした。‥医者を辞めようと思っています。」

そういうとルンバートはミルアージュの方を見て頭を下げた。

「本当にありがとうございました。」

ルンバートの吹っ切れたような表情を見るとミルアージュは何も言えなくなった。

ルンバートがどんな思いで医者を辞めると言ったのかがわかるからだ。

救いたい者を救えない。
そこに自分の過ちがある。

医者は誰かの命を左右する。
その事に恐怖や不安を持つ。
助けられない命に苦しむ事もある。

だからこそ、医者でいるためには自分で自分を奮い立たせるしかないのだ。

アンロックを去ったルンバートを止められなかったように今もルンバートを引き止めるだけの言葉を言う事ができなかった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く

ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。 5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。 夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…

お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます

菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。 嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。 「居なくていいなら、出ていこう」 この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし

七日後に神罰が落ちる。上層部は「下を切り捨てろ」と言った——私は全員を逃がす

蒼月よる
ファンタジー
七日後、この港に神罰が落ちる。 追放された元観測士イオナだけが、その事実を知っていた。 しかも災害は自然現象ではない——誰かが、意図的に引き起こそうとしている。 港の上層部はすでに手を打っていた。「下層区画を緩衝被害区として切り捨てる」秘密契約。被害を最小限に見せかけ、体制を守る冷徹な計画だ。 イオナは元護送隊長ガルム、荷運び組合長メラとともに動き出す。 犯人を暴き、証拠を公開し、住民を逃がし、工廠を止める——すべてを七日で。 被害を「選ぶ」管理か、全員を「残す」運用か。 追放観測士の、七日間の港湾カウントダウン・サスペンス。 この作品は以下の箇所にAI(Claude Code)を利用しています。 ・世界観・設定の管理補助 ・プロット段階の壁打ち ・作者による執筆後の校正

婚約破棄された公爵令嬢は虐げられた国から出ていくことにしました~国から追い出されたのでよその国で竜騎士を目指します~

ヒンメル
ファンタジー
マグナス王国の公爵令嬢マチルダ・スチュアートは他国出身の母の容姿そっくりなためかこの国でうとまれ一人浮いた存在だった。 そんなマチルダが王家主催の夜会にて婚約者である王太子から婚約破棄を告げられ、国外退去を命じられる。 自分と同じ容姿を持つ者のいるであろう国に行けば、目立つこともなく、穏やかに暮らせるのではないかと思うのだった。 マチルダの母の祖国ドラガニアを目指す旅が今始まる――   ※文章を書く練習をしています。誤字脱字や表現のおかしい所などがあったら優しく教えてやってください。    ※第二章まで完結してます。現在、最終章をゆっくり更新中です。書くスピードが亀より遅いので、お待たせしてすみませんm(__)m    ※小説家になろう様にも投稿しています。

好きな人に『その気持ちが迷惑だ』と言われたので、姿を消します【完結済み】

皇 翼
恋愛
「正直、貴女のその気持ちは迷惑なのですよ……この場だから言いますが、既に想い人が居るんです。諦めて頂けませんか?」 「っ――――!!」 「賢い貴女の事だ。地位も身分も財力も何もかもが貴女にとっては高嶺の花だと元々分かっていたのでしょう?そんな感情を持っているだけ時間が無駄だと思いませんか?」 クロエの気持ちなどお構いなしに、言葉は続けられる。既に想い人がいる。気持ちが迷惑。諦めろ。時間の無駄。彼は止まらず話し続ける。彼が口を開く度に、まるで弾丸のように心を抉っていった。 ****** ・執筆時間空けてしまった間に途中過程が気に食わなくなったので、設定などを少し変えて改稿しています。

砕けた愛

篠月珪霞
恋愛
新婚初夜に男に襲われた公爵令嬢エヴリーヌは、不義密通の罪を被せられた。反逆罪に問われた彼女の一族は処刑されるが、気付くと時間が巻き戻っていた。 あなたへの愛? そんなものとうに、砕け散ってしまいました。

妻からの手紙~18年の後悔を添えて~

Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。 妻が死んで18年目の今日。 息子の誕生日。 「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」 息子は…17年前に死んだ。 手紙はもう一通あった。 俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。 ------------------------------

断罪まであと10分、私は処刑台の上で「ライブ配信」を開始した〜前世インフルエンサーの悪役令嬢、支持率100%でクズ王子を逆処刑する〜

深渡 ケイ
ファンタジー
断罪まで、あと10分。 処刑台の上で跪く悪役令嬢スカーレットは、笑っていた。 なぜなら彼女は―― 前世で“トップインフルエンサー”だったから。 処刑の瞬間、彼女が起動したのは禁忌の精霊石。 空に展開された巨大モニターが、全世界同時ライブ配信を開始する。 タイトルは―― 『断罪なう』。 王子の不貞、聖女の偽善、王家の腐敗。 すべてを“証拠付き・リアルタイム”で暴露する配信に、 国民の「いいね(=精霊力)」が集まり始める。 そして宣言される、前代未聞のルール。 支持率が上がるほど、処刑は不可能になる。 処刑台は舞台へ。 断罪はエンタメへ。 悪役令嬢は、世界をひっくり返す配信者となった。 これは、 処刑されるはずだった悪役令嬢が、 “ライブ配信”で王子と王国を公開処刑する物語。 支持率100%の先に待つのは、復讐か、革命か、 それとも――自由か。

処理中です...