【完結】猫になったら怖い上司の愛に気付きました

ナーバン様は責任を取る

猫耳とシッポを生やしたサーチェはナーバンにこれまでの経緯を話した。

嘘偽りは言わず、本当のことだけ。
ナーバン様はきっと怒るだろう。
だけど、それだけの事をした自覚はある。
弱みを握ろうなんて人としてするべきではなかった。

今まで怖くて異動や退職も考えていた事を話した時、ナーバン様はすごく驚いていた。
自分がそこまで追い込んでいるなんて考えもしなかったと怒るどころか謝罪してくれた。

「私に責任を取らせてくれ。」
ナーバン様は頭を下げる。

「頭をあげてください。私の方が悪いんです。勝手に怯えてしまって申し訳ありません。」
私も慌てて頭を下げる。

「いや、上司としても男としてもサーチェ嬢への対応は反省しなければならない。結婚しよう。」
ん？
結婚？

「何の話です？」
意味がわからないと聞き返す。

「1週間も同棲したのだ、結婚は必須事項だろう。」
ナーバンは静かにいう。
責任を取るってそっちの方？

「えっ、同棲したって言ったって猫でしたし。」

「あんなに体中にキスもいっぱいしただろう？女性にそのような行為をしておいて責任を取らないなんてあり得ない。」
優しい口調のナーバン様。
怖がらせないように普段よりゆっくりと話してくれているのがわかる。

「それはナーバン様が勝手にしたんでしょう！公爵家のナーバン様が大体、平民の私と結婚なんてできるはずありません！」
体へのキスの話をされ、恥ずかしさで声が大きくなった。
きっと顔は真っ赤になっている。

「そんなことはないぞ。なかなか婚約者も決めず、女嫌い、そこに猫を溺愛して両親も嘆いてたからな。結婚相手はせめて人間にしてくれと泣いていた。サーチェ嬢は人間だ。問題ない。」

確かに猫を溺愛していたのは私の目から見てもわかった。
周囲の人はそんなナーバン様を心配をしていたのだろう。

人間ならって幅広すぎじゃない。
まぁ、猫と結婚するといい出すよりはずっとよいのかもしれない。

「もうこのまま、結婚届を出すか？」
見た事がないくらい上機嫌だ。

「いやいや、結婚届なんて早すぎでしょう。」
そもそも結婚するのもいつ決定したんですか？

「早く妻にしたい。堂々とサーチェ嬢の体に触れる。猫の時も良かったがな。アミルダ嬢にまた猫にしてもらえるよう依頼しようか。このまま、猫耳とシッポはずっと残せないか？」
ナーバン様はとても楽しそうに話される。
チラチラと猫耳とシッポを見ている。

いやいや、仕事に行けません。

ナーバンさまはシッポを触ってきた。
ずっと視線は感じてたが、話が終わるまで我慢していたのだろう。

ビクン
体全体にシッポの感触が伝わる。
知らなかったけど、猫のシッポはとても敏感だ。

それを見たナーバン様は微笑みながら何度も触ってくる。

でもこんな風に微笑むナーバン様は好きだ。
「ナーバン様、今みたいにいつも笑っていてください。」

私も笑っている。
自分でも不思議だが、もう怖さはない。
あんなにずっと怯えていたのに、ナーバン様と過ごした１週間でその感情は消え去ってしまった。

「あぁ、もうサーチェ嬢を傷つけるような行動はしない。」
真剣に私を見つめる。

その真剣な眼差しにドキリとする。

愛されている。
あれだけ聞けば、そう自惚れてしまうのも仕方ないはず。
そんなナーバン様に応えたいと思ってしまう自分がいる。

それが妄想癖のある猫好きであっても。