『身長185cmの私が異世界転移したら、「ちっちゃくて可愛い」って言われました！？ 〜女神ルミエール様の気まぐれ〜』

「夕暮れの静寂に溶ける甘い距離感」

ギルヴァントを村の入口で見送ったあと、ヨウコはイザークと並んで家路をたどった。

夕暮れの空が赤く染まる中、足取りは自然でも、ヨウコの胸にはまだあの圧倒的な力強さの余韻が残っていた。

ギルヴァントの決意、冷たくも柔らかい視線……その記憶が、胸の奥で甘くざわめく。



言葉少なげな沈黙が続く二人。イザークはその静けさの中、心の中で葛藤していた。

王子殿下のことを思い出すと動揺が走るが、ヨウコの安心を最優先にしたい――そう思い、ゆっくりと手を伸ばす。



家の扉を開けた瞬間、イザークは小さく息を吐き、そっとヨウコの手に触れた。

「……少し、距離を縮めてもいいか」



ヨウコの心臓が早鐘のように打つ。頬がじんわり熱くなり、思わず小さく息を吸う。

「……えっ」



イザークはぎこちなくも確かに距離を縮め、ヨウコを優しく抱き寄せる。力は強くなく、体が硬直するほどではない。

「す、すまない……王子殿下にキスされたことで、少し動揺してしまった。君が嫌がることは、決してしない」



その言葉に、ヨウコはほんの少し胸の奥が温かくなる。嫌ではない――むしろ、触れられる距離の安心感と、じれったい心の高鳴りが入り混じる。



二人の間には静かな沈黙が流れた。ヨウコは視線を落とし、イザークはかすかに息を整えながらそっと微笑む。

言葉はなくても、胸の奥で感情が交錯していた。甘く、じれじれとした感覚が、二人の間にゆっくりと染み渡る。



その夜、何事も起こらなかった。

けれどヨウコの胸には、抱き寄せられた温かさと、自分でも気づかなかった期待が静かに残った。

甘く、もどかしい感情が、夜の静寂に溶け込んでいく――そして次に何が起こるのか、知らずに心をざわつかせながら眠りについた。