魔導兵器マギアーム

白石華

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ブロッサムミスト後日談、ステラ編

(エッチシーンあり)悩めるステラその1

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―それはまだ、事件が終わったばかりの頃に戻って―

「ステラー、君も泳ぎなよ!」
「はーい。」

 ここはブロッサムミスト王国の塩湖。ブロッサムミストの朝も眺めた後は、キャンプ食を食べて一息吐いたところでコリスさんが早速塩湖で泳いでいた。魔軍も一時かもしれないが撤退したようだし、次の守りに備えるところなのだろうが、俺たちにとっては精霊との戦いも終わったし、ひとまずの勝利と休暇を堪能するところだろう。
 俺も水浴びをしてサッパリしたかったところだしコリスさんの言葉に乗っかることにして塩湖に入ることにする。

 ざばっ。

「おお。体が簡単に浮く。」

 海水も混ざっているのだろうが、ここの塩湖特有の溶解度を超えて塩が溶け込んでいる比重で、入った途端に浮いてしまう俺。

「面白いなーこれは。」

 体をじゃぶじゃぶと水をかくようにして動かすだけで進んでしまう。

「ああ。面白いだろう?」

 コリスさんもさっきからずっと泳いでいた。水で体も疲れまで洗い流されるし、泳いだ後はコリスさんにまた風呂を作って貰えればいいしで、随分と便利だなと思っていると。

「えいっ。」
「う、わわわわっ。こ、コリスさん。外ですよここ。」
「別にいいじゃないか。ここは戦地だったからしばらくは指示がない限り誰も来ないよ。」
「ま、まあ、そうなんですけど……。」

 水浴びをするのだから当然、服は脱いでいる訳で。俺も脱いでいるがコリスさんも脱いでいる。コリスさんが突然、カエルの親子のように背中からくっついて抱き着かれてしまった。

 ふにゅんっ。むにっ。

「うっ……。」

 抱き着かれてコリスさんの柔らかくて肉の付いているところがあちこち当たっている。具体的にはこう……二つ同じ形の肉が付いているところと言うか……太腿じゃない方と言うか……俺の肩辺りに当たっているというか。腕で抱き着いてくるからグイグイ当たっているというか。あんまり具体的には言っていないが、その辺りがよく当たっているし太腿も当たっている。他にも滑らかな体が当たっているし。塩湖の水質と言うか、肌をツルっとさせる効能で肌の当たりもいい。
 ここはよく乾燥しているから、後は乾燥にだけ気を付ければいいと言ったところか。ナッツも取れる場所だからオイルも種類が豊富で、ちょっと値は張るがそういうのも他よりも手軽に買えるところである。ここの特産品である岩塩が文字通りその辺の石と同じくらいのように手に入るため国としてはそちらの方で利益があるため、これもまた簡単に手に入る油は他よりも安く売れるのだろう。更にそれと合わせて香辛料から作った香油もここの特産品であり日用品である。更には死後、魂が残り復活するという信仰から。遺体に塗って埋葬時の防腐剤にまで用いられているため、技術の進歩もあるのだろうが、民間にまでそういう事で生計を立てている店はあるのだった。単純に店の数が多くて需要もあるため価格がそうなっているということだろう。いいものは高く売れるところに売って、民間は民間用ででも生計は立てられる。
 突然、油の話になってしまったが。話はコリスさんの……さっきからむにゅんむにゅん当たっている体の部位の話に戻ると。

「あ、あの。コリスさん。このまま俺、泳ぐんですか?」
「ああ。いやかな?」
「いやって事はないですけどぉ……泳ぐんです?」

 コリスさんの開放的な性格にときどき戸惑ってしまう俺。そういえば水着で泳いでいた時もカップルに交じってそういう事をしていたな。

「ふむ。泳ぐ以外の事がしたいのかな?」
「そ、そうじゃないですけどね!?」

 どうして行為に繋がるのか。いや、やぶさかじゃないけど。するの? ってなってしまう。俺がコリスさんのこういった行動にいちいち驚いてしまうのは。

(やっぱり、コリスさんが俺の事、どう思っているんだろうって、事だよな。)

 嫌われてはいないと思う。好かれている方だと思っているが、その好きと言う気持ちがどういうところから来ているのか俺には分からないと言ったところだ。コリスさん、最初からこうだったし俺の面倒見もよかったし。どうしてそこまで俺のことを想ってくれているのか分からないし俺は俺でどう出たらいいのか未だに判別付かないと言ったところだろう。まあ、ここまでさせてくれるんだから調子に乗ってガツガツ行かせて貰ってもいいところなんだろうけど。コリスさんもそういう事は魔力の関係で拒まないんだろうけど。俺の今一つ踏ん切りの付かない所である。

(コリスさんだって、俺にそうならない理由は何となく知ってる。)

 俺が人間として、コリスさんの存在なしでも生きていけるようになれる可能性だって俺に示すためだろう。そうなったとき、俺とコリスさんは離れ離れで別の生活を送っていく。それに、コリスさんと同じ時を過ごそうと思ったら、その時は俺が精霊として生きていく事だろう。人間でもいいのだろうけど、その時は、俺はコリスさんよりも先にいなくなる。そういう生き方だってあるだろうけど、同じ時を過ごせるのに、俺の方からコリスさんに気持ちを伝えて。そういう別れ方でいいのだろうか。
 それもこれもまず、コリスさんがここまでしてくれても、俺が気持ちを伝えたら、どういう答えを示すのか、全然分からなくて全部仮定の話だけどな。それに、コリスさんとはしばらく冒険をしていく事になる。あんまり気まずい展開にはなりたくない。そんなこんなで、俺は生殺しのような状況のまま、こういう事が続いていくのかもしれないなと思っていた。

「ふふん、ステラ。いいんだよ。」
「へ? 何がです?」
「君の気持ちは知っている。」
「ええっ?」

 いきなりコリスさんから言われた? その展開は想定になかった。

「おおかた、こうなってしまうと、にっちもさっちもいかないのだろう?」
「こう、って。何がですか?」
「外で、こうする事……だよ。」

 コリスさんが腕を滑らせて、手で肉棒を掴んでいる。

「う、わわわわっ。こ、コリスさん。ここ、外ですよ!?」
「ああ、でも別に気にすることないだろう?」
「気にします!」
「大丈夫。こうなってしまったのも私がくっついたからだ。君の面倒は見るよ。」
「いえ、そうじゃなくて。ここは……水の循環がないんです。」
「そういう事か。」
「はい……。」

 コリスさんは俺からスッと手を離す。塩湖で水浴びをする人はいる、しかしここは湧き水は入らないから水が入れ替わらないのだ。つまり。他の人が俺たちがこうした後でも入る可能性だってあるわけで。とても気まずい。

「うん。それならやっぱりコテージに戻ろうか。」
「そうですね……。」

 俺たちは裸のままコテージに戻ることにした。とても開放的である。

(コリスさんが自分から、そういう事言うはずがないか。)

 お互い、いい関係でも。その気持ちを伝えてしまったら今後の自分たちの展開を束縛することにもなりかねない。それでいいなら別にいい。でも、もし何かあって関係そのものが終わってしまったら。俺の今後の選択肢にだって関わってくるのだ。自分の気持ちと俺の事を天秤にかければ。コリスさんがそう出てこないのは、それはその通りなのである。

(でも、何だろう、この気持ちは……。)

 俺はちょっとだけ寂しい気持ちになっている。俺でもやっていけて、コリスさんも、いつかどうなるか分からないけど、俺に付いていてくれれば十分だったはずなのにな。どうして俺は自分からそうしたいと思ってしまうんだろう。

 ・・・・・・。

 ドオオオオオ……。

「はー。やっぱり風呂だねー。」
「そうですね。」

 再びクオンタムロッドで作った、水流に勢いのある風呂に入り。今度は二人でくっついて座っている。俺の後ろでコリスさんがさっきみたいなシチュエーションでくっついて抱き着いているのだが、手の動きが油断ならない。くっつき方にも油断を突いてくる。

「こ、コリスさん。さっきから手が。」
「ここならいいだろう?」
「そ、それはそうなんですけど。」
「ああ。ちょっと浮かれているのかもしれないな。」
「はあ。」
「精霊の封印具になりそうなのが見つかって。この国では収穫が他にも多かった。」
「そうですね。」
「それに、あの子たちだよ。」
「勇者の二人ですか?」
「ああ。」

 片方が勇者で片方は囮だったが。それでもあの子たちは力を授かったのは一人でも、二人で勇者なんじゃないかとしっくり来ているところだ。

「あの子たちって、会ってみると印象、全然違いましたね。」
「そうだね。酒場で毎日のようにどんちゃん騒ぎをしていたらしいが。
 あれだけ見ていたら大河の軍だけではなくても確かに反発するだろうな。」
「それが絡んできた酔っ払いだったり、そういう人だったりで。
 そういう人たちに反抗して余計にそうなっちゃうのは悪循環ですね。」
「結局は、あの子たちは自分たちではどうにもできなくて。
 与えられた環境の中でああなっていたんだろう。」
「コリスさんが何とかしてあげられて良かったですね。」
「うん……君だってしてあげられただろう?」
「そうでしたっけ。」
「ああ。していたよ。」

 あんまりやった記憶がないんだけど、コリスさんはそう思ってくれているのか。

「ああ。何というか君はこう……いるだけで子どもでも話しやすそうだからね。」
「そういう雰囲気でしたか。」

 何かやった記憶はないんだけど、存在感の話だったのか。

「それに、別れるときに君だって声を掛けただろう。」
「それは、しましたけど。」
「あと特訓にだって付き合ってあげられた。」
「俺はもっと、コリスさんみたいに重要なポジションで何かをやれたかなって。」
「やれたよ。君は……君の立場でも勇者たちに付いていてあげられた。
 君は、今でこそ身体に精霊が宿っていると知っているけど。
 それまでは恵まれざる者の立場だっただろう。しかも体質で悩んでいた。
 そういう君でも、勇者のように才能を精霊から与えられすぎている存在でも。
 付いていてあげられたって事さ。」

 コリスさんの言葉がようやく俺にもピンと来るようになった。俺は、勇者に反発を抱く側になりそうなポジションだったのである。

「はい……。ちょっと前の俺だったら、勇者にはきっと無関心だったと思います。
 もしくは……世界の危機、自体にもかな。」
「ああ。今はどうなんだい?」
「そうですね。決して、あの子たちは楽はしていなかったと思います。
 今の境遇でも、あの子たちは悩んでいたし。訓練をする気もあったし。
 それに、勇者の役割はまっとうしたでしょう。」
「ああ、反発している者はそういう風には思えないのだろうね。」
「自分だって能力を授かればそうなれたかもしれないって気持ちは消せないでしょうね。」
「しかも目の前でそうなっていればね。いい思いだってしているだろう。」

 確かにこれは根深そうな問題だ。

「ですが……あの子たちにそれを向けるのは……解決にならないんじゃないですかね。
 あの子たちだって、あの子たちなりに悩んでいる。それは見てあげないと。」

 でもそれは、あの子たちが悩んでいるところを見て、最後は乗り切ったところまで見てしまったら。あの子たちを近くで見ていたらティティさんと同じ感情を抱く人だって出てあげてもいいと思う。

「……ふふ。」

 俺が難しい顔をしていたら、何故かコリスさんが嬉しそうに俺に抱き着いてくる。

「君の背中は大きいな……傷だってついているよ。」
「ああ。背中の傷はガードには不名誉ですよ。敵に背中を向けたって。」
「いいや。君は……何て言うのかな。そういう傷も持っていても、ここに立っているんだよ。」
「はい。」

 コリスさんの言葉は、優しいというよりも、そういう言葉を言ってくれる人が俺にも現れてくれたんだなと言う、今まで自分のしてきたことの昇華のような言葉である。それで慢心するというよりは、気持ちをまっさらにして、進んでいこうという気持ちに切り替えられそうな力まで貰える。例え勇者になれなくても、そういう人が自分の前に現れるのは、それはそれで満たされるのではないのだろうか。
 俺に限った話なのかもしれないけれど。いない人にとっては、つらい話でしかないから心の中で秘めておくことだけど。
 力に恵まれることがなかったとしても、誰かが自分に付いていてくれることがなかったとしても。例え不満を抱くような境遇になっても、そういう気持ちに自分を持って行く心構えのようなものは、武人特有の精神論になってしまうのかもしれないけれど、やはりそこも磨いておくのかもしれないなと思ってしまう。最初こそ誰かからスイッチの入れ方を教わることはあるのだろうけれど。周りに誰も付いていてくれずに一人でもそうなれる人は、やはり強いのだ。

「あの、コリスさん。」
「うん、何だい?」
「コリスさんの方……向いてもいいですか?」
「ああ、したくなったのかい?」
「コリスさん。お、俺だってですね。ここまでされたら……。」
「ごめんね、ステラ。」
「ん……っ。」
「あっ。」

 俺はコリスさんの方を向くとコリスさんを抱いて、俺の方に座らせる。

「ん……っ。ステラ……。」

 コリスさんを抱きしめると、コリスさんがしっとりとした、漏らすような声を出す。

「こ、コリスさん。俺……っ。」

 既に俺の肉棒は脈打つほど、固く勃起している。

「うん……私なら大丈夫だから、もういいよ。」

 この前、訊ねたらコリスさんも魔力が注がれている間は心配しなくていいと言っていたし、精霊だと魔力があればそうなのかもしれない。人間の女性だったら早いのかもしれないけど、コリスさんの言葉通りに動いてみることにした。

 にちゅううっ。

「あっ。んん……っ。は、入ってくるぅっ。」
「うっ、ううっ。」

 きつく狭い中を入っていくはずなのに、きついまま、スッとちょうどいい開いて馴染んでくる。これはきっと、コリスさんの言っていた通りなんだろう。ときどき捩じるようにして進んでいく。

 ちゅぷっ、ちゅぷっ。

 波紋が広がり水の跳ねる音を聞きながら、コリスさんの中に入っていくと。

「あっ、ああっ。はああ……っ。んんっ。」
「こ、コリス……さん……っ。」
「ん……っ。」

 自分の方から唇を近づけてもコリスさんは応じてくれて。深く入ったまま、コリスさんとキスをする。

「んっ、んんっ。」

 ときどき、コリスさんの方から体を擦り付けてきて、ピクリ、と動いているようだ。愛撫はそんなに必要ないのかもしれないけど。俺はコリスさんと繋がったまま、抱き合って、そういうスキンシップのようなことを続けていく。

「ちゅっ。ステラ……っ。んんっ。ちゅる……んっ。」
「ちゅる……っ。ちゅぷ、はぷっ。」

 舌を入れるとコリスさんの震える回数が増えていく。

「こ、コリスさんっ。」

 このまま続けていくつもりだったのに、身体が動いてしまい、コリスさんの中を揺すっていく。

 ずっ、じゅっ、すぶっ。

 いつの間にかコリスさんの中も潤っていて、それを確認してしまうと、もっと動きたくなってしまう。

「あっ、あうっ。きゃ……ああっ!」
「ぐうっ、ううっ、ううううっ。」
「きゃふっ。あっ、ああっ、ん……っ。あああ……っ。」

 コリスさんは攻められているときは、いつも普段の様子からはギャップが大きい可愛らしい声を出してくるが。最初はギャップと思っていたが普段の調子はコリスさんが身に着けて行った強さで作られたもので、段々、そういうところは出て来ないように隠すことはあっても、本当はこういうところが多分にある人なんだろうなと思えてきている。

「あっ、す、ステラ、ステラ……ぁっ。」

 コリスさんが痙攣し始め、俺にしがみつくようになる。

「うっ、くうっ、ぐ……っ。うぐうっ。」

 俺は果てるまで動き続けるようになってしまっていた。

「はあっ、はあっ、はあっ。す、ステラ……いっちゃう、いっ……ちゃうっ!」
「う、ううっ。お、俺も……っ。」
「ふふ、ステラ……。」
「ううっ。」

 コリスさんの、しがみついていたはずの俺を抱いていた動きが、優しく抱き留める動きに変わっていた。

「こ、コリスさん……?」
「うん。ステラ。」
「んっ。」

 終わり際にいきなりこうなるとは思っていなくて。戸惑っているところを再び撫でるようにされる。

「君は……君だって私にとっては、自分の子供みたいなものさ。」
「えっ……。そ、それはどういう。」
「ああ。君とは勿論、肉親ではないけれど。それでも……そう思っているということだよ。
 勇者と会っただろう? あの子たちもそうだったが、君だって私にとっては。」
「う、ううっ。」

 コリスさんの方からそういう話を打ち明けてくれるなら。もっとそういう話を聞いていたかったのに。俺の方に限界が来てしまう。

「うっ、ううっ。ぐううっ。」
「あ……っ。」

 びゅくんっ。びゅうう……ぅっ。

 体ががくがくと痙攣して、意識がどんどん、失われていく……。

(コリスさん……。)

 意識が飛んでいく中で俺は。

(コリスさんの面倒見の良さって、子供の頃の俺の面倒を見ていたからなのか……。)
(それって、俺が勇者の子たちと抱いていた感情の他に、家族としてなんだろうか……。)
 
 パパとかママとか、若い子を見ていると応援したくなるとか。そっちの類からコリスさんは入ってきていたのかと、俺は自分の立ち位置を改めて確認したと同時に。

(それで、随分と無防備になるんだな……。)

 実際は精霊だからそういう気持ちを抱いても不思議じゃないのだが、見た目だけならそんなに年は離れていないと思われる美人のお姉さんに俺もそうされると思っておらず。随分と戸惑っていたけど。そりゃ無防備になるよなと妙に納得したのだったが。

(それにしたって、無防備すぎます、コリスさん……。)

 その気持ちでここまで俺たちがしてしまっているのだけは相変わらず生殺しの気分だった。精霊になると、そういう所とかも頓着しなくなるのだろうか。そうじゃなければ説明つかない所まで無防備だった。
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