精霊の加護の科学都市

白石華

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精霊の加護の科学都市

覚醒と、その後の事(本編はこれで完結です)

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 ―身体が――重い――押しつぶされそうだ――

 随分と深い、昏睡状態で金縛りにあったような状態から、徐々に意識が戻ってきて――

「うう……ここは……どこ……?」

 目覚めると、私は見覚えのない間取りの所で寝ていて……場所はベッドみたいだが、どこだかさっぱり分からない。

「起きた?」
「マチルダ?」

 ベッドのすぐ近くにはマチルダが付いていてくれたのか、ベッドで寝ている私の顔を覗いてくる。

「ここは私の家よ。」

 マチルダが答える。

「え。あなたの家って事は。街は……。」
「ええ。ここは、あなたの家の近所にある家よ。だから街も無事よ。
 最後は突入部隊が睡眠装置で全員、眠らせてから、突入していたみたい。
 私も眠っちゃったみたいで。気づいたら撤収した後だったの。」
「待って。破壊装置はどうなったの?」
「それは向こうで何とかしたとしか、言いようがないわね。
 リリーシャもほとんど無力化してくれたし。
 あとは向こうで何とか片付けられる規模の威力だったんじゃない?」
「……。」

 マチルダから言われた言葉には現実味がなくて。というのも、そんな規模の兵器じゃなかった気もするからだが。私が意識を失ってしまった後、最後の詰めが終わって。そうなってしまった後はそういうものなのかもしれない。

「うっ。いつつ……。」

 そして体中がギシギシする。身体に負荷のかかるような移動と魔力をありったけ消費してしまったら、そうもなるのだろう。今は疲労感でいっぱいである。そんな私に呼びかけられた言葉が。

「リリーシャ。あなたのパパも無事よ。おめでとう。」
「あ……。」

 マチルダのねぎらいの言葉と、パパの無事を伝える言葉だった。

「パパは、パパはどこにいるの?」
「あなたの家か部隊の詰め所じゃない?
 私たちが潜入したのはバレないように別行動にしたけど。
 撤収も済ませたならそのどっちかだと思うわ。」
「う、うん。」
「リリーシャも、避難しなかったんだから怪しまれないように私の家に連れてきたけど。
 動けるようになったら家に戻ったら? パパを出迎えてあげられるようにしておかないと。」
「そっか……そうね……。」

 マチルダが私をねぎらってくれたからでもあろうか。パパの無事も確認されたみたいだし、今の私はマチルダの言葉がスルスルと入り、しみこんでしまっている。

「それと。家に帰ったらステルススーツは着ていたから姿は見えなかったと思うし。
 民間人が潜入していたなんてパパに伝えられないから、何にも言わない方がいいわ。
 恐らく、あなたのパパも、任務については何も言えないと思うけど。
 ひょっとしたら任務妨害になっちゃうかも。」
「あ、そうなんだ。」

 そういえばパパは作戦中で。その状態で民間人二人が潜入したと知られてしまったら、それはまずい。

「だからリリーシャは何食わぬ顔で、家に帰って。あとは平穏にパパと過ごしていればいいから。」
「うん……。」

 パパと無事に暮らす事。それは軍人であるパパの娘の私の今、一番望んでいる平穏だ。特に、今日みたいな事態が起こった後では。それが身に染みて感じてしまう。

「じゃあ、暫く動けるようになるまでここで寝ていたら?
 飲み物か何か食べるの欲しかったら、消化にいいものを持ってくるけど。」
「あ、じゃあ、おかゆ食べたい。あと麦茶。」
「オッケー。すぐ作ってくるわね。」
「うん……。」

 たとえ技術が進歩して、家事がスイッチ一つで何でもやれる便利な時代が来ても。そこに人がいる限り、家にいて、誰かのために家事をしてくれる人の気持ちの暖かさや有難さは変わらないのだろう。そんなことを疲れた頭と身体で思っていた――

 ・・・・・・。

「ただいまー……って。誰もいないんだ。」

 家に帰っても、パパの姿はなく。撤収した後でも。まだきっと、残務処理とかそういうのがあるのだろうと片付けた私はテレビを付けて、スイッチ一つで行える部屋の片づけをしてパパを待つことに。

「昨日の午前、昼頃に、精霊の卵に襲撃をした団体ですが、無事、突入した特殊部隊に鎮圧され。
 人質として捕らえられていた警備兵などの部隊も、全員無事に解放されたようです――」

 どうやら私が寝ている内に次の日になっていたようで。詳細には語られなかったが、やはり突入部隊によって鎮圧されたようだった。

「うーん。終わったのも確認したし。こういうニュースばっかり見ていたら気が滅入るから。
 あとはドラマと、バラエティと、音楽番組でも見てよーっと。」

 いくら何でも身内が巻き込まれた武力政治的な事件はそうそう見ていられるもんじゃない。身内の安全と事態の収束を確認したのなら、とっとと気持ちを切り替えるに限るのだった。ポチっとリモコンで点けると。

「うわー! やっぱりこういう時に染みるのはコメディよねー!」

 ちょうど、美人で、演技もうまい有名女優が主演のドラマにしては、女性にまつわる現代社会の闇を追っている内に組織犯罪に巻き込まれていくというコアな題材を扱っているのに、女優本人が演じているアクションスタントシーンも異様にうまく、アクションコメディに仕立てるという、サスペンスコメディ番組がやっていたので、私はそれを見て爽快な気分になっていた。

 ・・・・・・。

「おはよう、リリーシャ。」
「あ、お帰りなさい、パパ。」
「うん。ただいまもだね、リリーシャ。」

 次の日。起きてリビングに向かうとパパが既にリビングに戻っていた。いつも通りの風景で、五体満足でいるパパを見ていると、それだけで目頭が熱くなってしまう。

「パパ……。」
「リリーシャ。」

 私がパパに抱き着くと、パパはモフモフした、大きな体躯で抱きしめてくれた。

「ニュース、見たけど。無事でよかったわ。パパ。」
「ああ。リリーシャも、良く待っていてくれたね。」
「ええ。ずっと怖かったし、不安にも押しつぶされそうにもなっていたけど。」
「けど、どうしたんだい?」
「クラスメートが、助けてくれたから何とかなったわ。」
「そうか。リリーシャも、クラスメートに馴染めるようになったんだね。」
「ううん。まだ一人だけ。」
「一人って、誰だい?」
「マチルダ。」
「……。」

 今回もパパは言葉が出なかったようだが、今までに感じていた絶句ではなかったような気がする。

「そっか、その子と仲良くなれたんだね、リリーシャは。」
「元々、向こうは敵対心なんて持ってなかったもの。周りが比べて言ってただけよ。」
「うん。そこまでリリーシャも、認められるようになれたんだね。」
「うん……。パパ。今日も学校は休みだから。二人でゆっくりしましょう?」
「ああ、それなんだけど。
 パパがテレビに映って、突入部隊で団体を鎮圧しただろう?」
「うん。」
「リリーシャと、その友達……パパとパパの身内に相当する者は。
 安全が確認されるまで暫く護衛が必要になった。」
「へっ。」
「ひょっとしたら学園に通うのも難しくなるかもしれない。それは何とかするつもりだが。
 暫くその子と暮らすのが手っ取り早いかもしれないな。まあ、その子と連絡を取ってくれ。」
「え、えええ~~~!?」

 今日一番の、驚いた声が出てしまった。

 ――それから、また一か月後――

「はあああ~ーっ、くーっ! ようやく学園に通えるようになれたわね、リリーシャ!」
「うう。何でこんな事に。」

 あの後、目まぐるしい日々が過ぎていき。私とマチルダは行動を常に同じくとるようになっていた。

「それにしても知らなかったわよ。
 マチルダが、一人暮らししていたなんて。お陰でスムーズだったけど。」
「ええ。私、ここの住民じゃないし。一人で引っ越してきたの。魔法科学を学ぶために。」
「ふーん。そういう人とかもいるから不思議じゃないけど。」

 結構広い、一軒家だったけど、それは家事の精霊装置で何とかなる時代である。管理も容易なのだろう。そう思えば、悠々自適な暮らしのようにも見える。
 それも、家が変わってしまい、私とマチルダが同居して暮らす日々は……事件を解決させた後だからか、そんなに悪いもんでもなかったけど。

「じゃあ、学校行きましょう、リリーシャ!」
「うん。」
「ホント、リリーシャのパパって自慢する程のパパだったわね。おっきくて、モフモフで。
 リリーシャの言う通り、紳士だったじゃない! カッコよかったな~。」
「良かったって。まだこれからも暮らすんでしょ。終わらせないでよ。」
「うん!」

 マチルダは元気だ。何でこんなに元気なんだってぐらいに元気だ。パパも家を留守にするのと、任務がまだ記憶に新しいからか、外に護衛が付いているとは言え、私を一人にしておくのが心配だったらしいが。マチルダがその度に頼もしい活躍を見せてしまい、パパも護衛とマチルダに任せておけば安心、と思うようになったところで学園にも通うことになったのだ。

(まあ、その元気さに、引っ張られているところはあるけど……。)

 私は私で、いつの間にかメンタル面でまで、マチルダに影響されつつあった――

 ・・・・・・。

「――今期は授業スケジュールが大幅に乱れてしまったため、これは復習だが。
 勇者の末裔はある時を境に、異国からの召喚された者から。
 国内の者に変わり、それから数千年後の現代では、世界の脅威も移り変わり。
 それに対応して様々な役職に就いている。これは最初の国内での勇者が、王族出身だったから可能な事で――」

 学園に着くと、当然授業を受けているのだが。今日もこの世界の精霊の加護に関する講義を受けていた。

(そういう役職もあるのね。)

 私は講義を聞きながらメモしていると。

「――それとは違うが、勇者の異国からの召喚から国内に変わったのと同時期に。
 ちょっと記録に残された資料が足りなくて出生までは不明だが、精霊と人間の子の一族が。
 国の王族以外の民間人でも何らかの原因で生まれてしまい。
 精霊の管理の元、秘匿という形でその子たちは暮らしていたのだが。
 今までの精霊も預かり知らなかった精霊が残したとされる超科学文明が出土してしまい。
 その子たちが何か事件が起こった時や起こりそうな時に精霊の力によって監視・対策役として。
 新たに任命されてしまい。その存在が社会的に明るみに出せるようになり。
 超法規的措置まで認められた家系の一族もこの世界には存在する。
 その一族は、最初の精霊の子の名前からとって、『星の子供たち』と呼ばれていて――」
「んっ?」

 先生の説明に思い当たるようなことがあって私は息が詰まる。

「どうした、リリーシャ?」
「な。何でもありません!」
「はははっ。リリーシャ、まさかリリーシャが『星の子供たち』じゃないだろうな。」
「そんな訳ないでしょう。」
「ああ。驚くのも無理はないが、授業を続けるぞ。」

 まさか……マチルダって……そんなことを思いながらマチルダの座っている席を眺めたが。涼しい顔で、タブレット端末を眺めながら、ペンをクルクルと回していた。
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