精霊の加護の科学都市

白石華

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後日談、サイドストーリー、幕間の話など

リリーシャ、使命の日、当日の事と

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「おはよー、パパ、マチルダ……あれ。」
「やあ、リリーシャ。」
「リリーシャ、おはよう。」

 それは私が精霊の卵の内部に入る当日の朝。いつものようにキッチンでみんなと朝ごはんを食べようとした日だったが。既にパパとマチルダは着替えて準備していたのだが、その格好がみんなの仕事着……パパは軍服でいつも通りだが。マチルダはルーンソードを腰に携帯した、軽鎧と制服のような見た目の。マチルダ用にあつらえた魔法戦士用の装備だった。

「えっと、二人でどこかに行くの?」
「私は護衛だが……リリーシャとマチルダ、二人で行くんだ。リリーシャも。装備服に着替えなさい。」
「え?」
「まだ状況が分からないでしょう。私から説明するわ。今日は……とある人物がやってくるから。
 それを私とリリーシャで迎えるの。説明しても……信じられるかは分からないと思うけど。」
「へっ?」

 という訳でマチルダは少年と機械姫の事について、私に説明したのだった――

 ・・・・・・。

 この世界のずっと昔には、一人の科学者が開発した。『機械姫』という子供の姿をした機械がいて。ほぼ独占状態で人の代わりに世界の機械を操作していたという。
 しかし、その研究は科学者の起こした事故でストップし、操作が暴走した機械によって、世界も同時にほぼ壊滅状態になってしまった。
 その後は、人間の他にも人類が生まれ、錬金術が栄え、精霊信仰によって魔法が再興し、残された機械の機能を解析した人間の手によって僅かな機械を手にして世界が再建されていった。
 他にも何やかやがあったけど、私たちの時代になると、解析した機械を魔法によって別の形で動作させる精霊装置というものも作られた。
 いつの時代かはタイムパラドクスが起こるかもしれないから説明できないけど。とある時代で、機械姫を目覚めさせてしまった、少年がいて。その少年たちの冒険の果てに、タイムマシンを偶然にも開発してしまい、時間を遡って、機械姫の父親が起こした事故を未然に食い止めた世界を作るためにその、少年と機械姫がやってくるのをマチルダと私で装置を起動してタキオンの前で出迎えることになっていたのだった――

「これは極秘なのだが。どうしてそれを知ったのかと言うと。
 次元の精霊――タキオンからのお告げでね。この日が来るまで、リリーシャを。
 私の元で保護するようにと言われていたのだが。
 そんな理由が無くても、リリーシャは私が抱っこして、懐いてくれた時から。私の娘だったよ。」

 パパが私に説明してくれる。

「うん。パパ……。」
「タキオンは精霊の卵の中にいるの。普段は寝ているし姿を見せないけど。
 今日、来るってお告げが再び出たみたい。」

 マチルダが私に言う。

「そう、なんだ……話が全く分からないけど、その子もパパを、助けたいの?」
「ざっくり話すとそんな感じね。すぐには信じられなくてもいいけど。
 それでも今日、精霊の卵の中には入って貰うわ。」
「……うん。」

 いつか私にも、マチルダみたいになれる日が来るんじゃないかと思っていたけど。実際に訪れたときは。全く実感が沸かなくて、しかし話だけは大きくて。形容しがたい気分になっていた。しかし。

 ・・・・・・。

「リリーシャ、装置を起動するわよ!」
「う、うん!」

 精霊の卵の中で装置を起動した時。私の見た、僅かに見えた、あの子たちの暮らした次元の断片は。とても懐かしくて、温かくて。この子たちからそれが奪われてしまった事が、とても悲しかったのだった――戻れるなら戻りたい。もう一つの世界で、それが叶うなら――私は――

「リリーシャ、しっかり! あの子たちの記憶に精神が呑み込まれているわ!」
「あ。う、うん!」

 いつの間にか私は、あの子たちの見てきた世界と精神が同調してしまっていたようだ。マチルダの声で慌てて意識を戻す。

「あの子たちがここに来て、リリーシャがどうするか、それはリリーシャが決めてね。」
「えっ?」

 そしてまた、マチルダに。何か私に期待させるようなことを言われてしまったのである。

 ・・・・・・。

 ――XXX年前、とある研究所にて――

 プチッ。

「……ふう。機械姫……セリナだけは壊せなかったな。」

 機械姫を操縦席でスリープモードにさせて、意識を完全に消した状態にして、科学者がため息を吐く。
 そして、操縦席の機械姫の眠るカプセルに手を触れると。科学者は喋り出した。

「なあ、機械姫。これから……僕がすることは。間違っていると思っている。
 でもね。それを差し引いても。
 僕から家族を奪ったことで成り立つ世界が存在することが。許せないんだ。
 でもね、君には何の罪もない。だから……。僕が、罰を受けるよ。
 君がもし、もう一度、目覚める事があったら――、その時は……。」
「待って! お父さん!」
「完全に早まっているじゃねーか! ちょっと待て!」

 科学者が何かをしようとした瞬間に、丁度、ライトとセリナ――少年と機械姫が現れる!

「え、ええと。セリナが二人? それに……君は誰?」
「その話は後! お父さん! その行動は待って! 世界なら……私とライト君で何とかするから!」
「ああ! まずは……
 『滅ぼされたくなかったら、俺の言う事を聞けと、世界に反抗しろ!』」
「えっ?」

 ライトの言葉に呆気にとられた科学者だったが――

「あんたは世界中の機械を機械姫で掌握可能なんだろ! それなら……世界を崩壊させるより。
 それで世界を支配しろ!」
「う、うん! みんなも、滅ぼされるよりはましだと思う!」
「せ、セリナ?」
「お母さんも助けるよ。研究所にいるんでしょ? だから――
 お父さんがいなくなるなんて、止めて!」
「ええと、セリナと、君は……誰かな?」
  
 二人の言葉に、科学者がようやく二人を確認するようになる。

「ああ。もう一つの世界からやってきた、機械姫と……そいつと旅をずっとしてきた、相棒だよ。」
「相棒……。」
「あのね、お父さん。この世界は……もう、崩壊しなくていいように。私が作り直すから。」
「えええっ?」

 世の中にはショック療法という治療法がある。詳しい解説は省くと、相手にショックを与えて治療する方法の事を言うのだが、医学的な治療法が確立される前の、前時代的かつあまり人道的な方法ではないとされる。
 しかし今の様に追い詰められた人間に別の選択肢を与え、しかもそれがショックな内容だと、そちらに気を取られたり、意識を別の事に向ける事が可能になる――要するに絶対に真似させられない前時代的かつ非人道的な荒療治なのだった。真似すんなよ。

「ああ、この世界はもう、あんたとセリナが再会した時点で崩壊した世界とは別の世界だ。
 この世界がどういう世界か聞いて、協力者として協力して欲しい。」

 ライトが再び説明する。

「お父さん。私……創造霊になって世界の崩壊を食い止め続ける事になったの。」
「えええっ!?」
「俺もだ! 信じられないならタキオンも呼ぶぜ! 次元の精霊だ!」
「……。」

 その後、本当にタキオンが現れ、この世界の成り立ちについて再び説明することとなり――

「何でそんなことをしてまで時間を遡ったんだ……。」
「決まっているよ。お父さんを助けるためだよ。こんな事はしないでって。」
「ああ……僕の娘が。創造霊になってまで止めに戻ってくるなんて。」
「創造霊は俺もだけどな。それにこうなったのは、あんたが世界を崩壊させるからだろ。だから。
 これ以上、娘が異次元の存在になりたくなかったら思いとどまって協力しろ!」
「……そうだね。」
「お父さん。」

 最後は酷く、力が抜けたように。科学者は返事をしたのだった――。

「世界の崩壊は止める。だけど、具体的には何をするんだい?」
「お母さんを助けて、世界を機械姫の独占状態から少し変えて。それから……。」
「うん。そうだね。お母さんはどうやって助けるの?」
「ああ。まず他にもいる協力者を呼んでだな。そいつは確か、治癒魔法が用いられたし。
 それが無理だったら錬金術師の回復アイテムで――」

 こうして、少しずつ、科学者を閉じ込めていた心の枷は開かれていったのだった――
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