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僕とお姉さん
お姉さんとお買い物
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「今日は、君が来てくれた記念日みたいなものだから、ご飯を食べに行きましょう。」
「うん、ありがとう。」
「何か食べたいもののリクエストとか、ある? ガッツリしたのとか、アッサリしたのとか。」
「うーん……そうだな。春だから魚とか食べたい。春魚。」
今の季節は、僕の大学進学を期に引越してきた時期だから、冬から春に変わり目の頃だった。ソメイヨシノなどといった桜が満開とは言わないけど、ポツポツ咲いていて、早咲きの桜は既に満開を迎えている。花見もその内、したいなと思いつつ。僕も情緒だけはいっちょ前に大人ぶっていた。
「君ってやっぱり、嗜好は大人なのね。」
「大人といっていいのか微妙なところだけどね。」
見た目は多分、姉弟のような関係で間違いないのだろうけど。そこを詰めていきたいのが俺の希望だ。それはそれとして、ご飯はうまいものを食わせて貰えると向こうが言っている時は乗るのが子供の役割だろう。魚と言えば、どういうのがあるのか。
「アンコウやブリはギリギリ食べられるけど、今の季節、鯛やヒラメも美味しそうね。
美味しい漬け丼や茶漬け、アラの出汁でとった、うどんとかあるわよ。
ツマもね、野菜と海藻サラダみたいで盛り付けも綺麗なの。」
お姉さんがいきなり大人の力(うまい店を知っている)を発揮してきた。
「うん。アンコウ汁を出してくれて。
お魚も刺身かフライか、煮付けで付けてくれるところにしましょう!」
「やった!」
という事で、お姉さんとそういうものが食べられる場所を回りながら、ついでに僕のこっちで買う生活必需品とか、あいさつ回りの物とかを買うことにしたのだが。
「花粉症のマスクミスト。」
「これはどうだろうね。」
今の季節、マスクが必需品の人などもいるだろう。お姉さんは生活雑貨店でギフトを見ていると、リップバーム、石鹸、ガーゼタオル、マスクにスプレーするアロマミストがセットになったギフトボックスを見ていた。他にもハーブティーとハチミツ、ミント製品のセットとか食べ物も置いてあるが選ぶチョイスが何と言うか、現代的である。僕にはサッパリの分野だった。
「こういうのは花粉症で悩んでいる人のリラックスタイムも兼ねた日用品だから。」
「そうみたいだね、見ていると。」
「あとこっち、桜のお茶とかもあるわよ。こういうのも和ハーブの一つなんだ。」
「へええ……。」
「大丈夫、つまらなくない?」
「ああ、それは大丈夫。僕の引っ越しの挨拶なんでしょ?
近所の人、そういうのが好きなのかな。」
「そうなの。悪いわね。」
相変わらず、お姉さんは大人の力(現代的なお土産の店を知っている)を発揮していた。
「君も何か、買いたいものはある?」
「うーん。そうだね。お姉さんこそない?」
「えっ、私?」
「うん。僕もお姉さんに何か、お返しじゃないけど一つだったら買えそうだよ。」
「まあ。」
お姉さんは随分と嬉しそうだった。こういう時はそういう表情と反応で返すものなのか。なるほど僕は大人の作法を見て学んでいると。
「この中で、どれがいいと思う?」
お姉さんは生活雑貨に置いてあった小さな細工のストラップ……キーホルダーにも紐や手提げのあるバッグのアクセサリーにもなるやつだな、の中で数点、見繕って、僕に見せている。
「持ち歩くから、君がいいと思ったのを選んで。」
「うん。」
僕は見ていると、魚、鳥、花、動物、オブジェ……よく分からない細工の中から選ぼうとする。
(この中で、どれか一つがお姉さんがいつも身に着ける物なら、壊れにくい物のがいいかな。)
という訳で、僕は細くてもげそうな部位の少ない、壊れにくそうな細工のものを選ぶと。
「へえ。透明なキューブの中にガラスが入ってる。可愛いわね。」
お姉さんの感触も良かった。
「これにするわ。可愛いから、どれを選んでいいか、分からなかったの。」
「うん。良かった。」
何を選んでいいか基準がサッパリだった僕は、使わない頭を浪費して大分疲れた気持ちでいた。
「待たせちゃってごめんなさいね、すぐにご飯にしましょう。」
そんな僕の顔色を見たのか、お姉さんはすぐに休ませてくれそうな場所に連れて行ってくれた。これが女性の気回しって奴か……と僕は話さなくてもエスコートしてくれるお姉さんのスマートな立ち振る舞いに感心したと同時に、僕も早いところ、そういうところを見て動けるようにならないとなと思ったのだった。こういうのは無関心なままでいると、大人になってから苦労するからな。
「うん、ありがとう。」
「何か食べたいもののリクエストとか、ある? ガッツリしたのとか、アッサリしたのとか。」
「うーん……そうだな。春だから魚とか食べたい。春魚。」
今の季節は、僕の大学進学を期に引越してきた時期だから、冬から春に変わり目の頃だった。ソメイヨシノなどといった桜が満開とは言わないけど、ポツポツ咲いていて、早咲きの桜は既に満開を迎えている。花見もその内、したいなと思いつつ。僕も情緒だけはいっちょ前に大人ぶっていた。
「君ってやっぱり、嗜好は大人なのね。」
「大人といっていいのか微妙なところだけどね。」
見た目は多分、姉弟のような関係で間違いないのだろうけど。そこを詰めていきたいのが俺の希望だ。それはそれとして、ご飯はうまいものを食わせて貰えると向こうが言っている時は乗るのが子供の役割だろう。魚と言えば、どういうのがあるのか。
「アンコウやブリはギリギリ食べられるけど、今の季節、鯛やヒラメも美味しそうね。
美味しい漬け丼や茶漬け、アラの出汁でとった、うどんとかあるわよ。
ツマもね、野菜と海藻サラダみたいで盛り付けも綺麗なの。」
お姉さんがいきなり大人の力(うまい店を知っている)を発揮してきた。
「うん。アンコウ汁を出してくれて。
お魚も刺身かフライか、煮付けで付けてくれるところにしましょう!」
「やった!」
という事で、お姉さんとそういうものが食べられる場所を回りながら、ついでに僕のこっちで買う生活必需品とか、あいさつ回りの物とかを買うことにしたのだが。
「花粉症のマスクミスト。」
「これはどうだろうね。」
今の季節、マスクが必需品の人などもいるだろう。お姉さんは生活雑貨店でギフトを見ていると、リップバーム、石鹸、ガーゼタオル、マスクにスプレーするアロマミストがセットになったギフトボックスを見ていた。他にもハーブティーとハチミツ、ミント製品のセットとか食べ物も置いてあるが選ぶチョイスが何と言うか、現代的である。僕にはサッパリの分野だった。
「こういうのは花粉症で悩んでいる人のリラックスタイムも兼ねた日用品だから。」
「そうみたいだね、見ていると。」
「あとこっち、桜のお茶とかもあるわよ。こういうのも和ハーブの一つなんだ。」
「へええ……。」
「大丈夫、つまらなくない?」
「ああ、それは大丈夫。僕の引っ越しの挨拶なんでしょ?
近所の人、そういうのが好きなのかな。」
「そうなの。悪いわね。」
相変わらず、お姉さんは大人の力(現代的なお土産の店を知っている)を発揮していた。
「君も何か、買いたいものはある?」
「うーん。そうだね。お姉さんこそない?」
「えっ、私?」
「うん。僕もお姉さんに何か、お返しじゃないけど一つだったら買えそうだよ。」
「まあ。」
お姉さんは随分と嬉しそうだった。こういう時はそういう表情と反応で返すものなのか。なるほど僕は大人の作法を見て学んでいると。
「この中で、どれがいいと思う?」
お姉さんは生活雑貨に置いてあった小さな細工のストラップ……キーホルダーにも紐や手提げのあるバッグのアクセサリーにもなるやつだな、の中で数点、見繕って、僕に見せている。
「持ち歩くから、君がいいと思ったのを選んで。」
「うん。」
僕は見ていると、魚、鳥、花、動物、オブジェ……よく分からない細工の中から選ぼうとする。
(この中で、どれか一つがお姉さんがいつも身に着ける物なら、壊れにくい物のがいいかな。)
という訳で、僕は細くてもげそうな部位の少ない、壊れにくそうな細工のものを選ぶと。
「へえ。透明なキューブの中にガラスが入ってる。可愛いわね。」
お姉さんの感触も良かった。
「これにするわ。可愛いから、どれを選んでいいか、分からなかったの。」
「うん。良かった。」
何を選んでいいか基準がサッパリだった僕は、使わない頭を浪費して大分疲れた気持ちでいた。
「待たせちゃってごめんなさいね、すぐにご飯にしましょう。」
そんな僕の顔色を見たのか、お姉さんはすぐに休ませてくれそうな場所に連れて行ってくれた。これが女性の気回しって奴か……と僕は話さなくてもエスコートしてくれるお姉さんのスマートな立ち振る舞いに感心したと同時に、僕も早いところ、そういうところを見て動けるようにならないとなと思ったのだった。こういうのは無関心なままでいると、大人になってから苦労するからな。
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