花火が見えなかった夏

ららら

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言えなかった夏は、戻らない

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夏の終わりは、いつも突然だ。


蝉の声が減ったことに気づく頃には、もう手遅れになっている。
あの日、君が転校するなんて知らなかった。
「また明日ね」
その言葉を、僕は疑わなかった。
夕方の教室には、僕と君だけが残っていた。
カーテンが風に揺れて、黒板の文字が滲む。
君は机に座ったまま、空を見ていた。
「この夏さ、楽しかったね」
それは、別れの合図だったのかもしれない。
でも僕は、気づかないふりをした。
好きだった。
最初から、ずっと。
なのに、
失うと分かっていない時ほど、人は臆病になる。
帰り道、川沿いで花火が上がった。
一瞬だけ空が明るくなって、君の横顔がはっきり見えた。
その顔を、僕は今でも忘れられない。
「言わないの?」
君がそう言った気がした。
本当は、言われていなかったかもしれない。
それでも僕は、黙った。
言葉を選んでいる間に、時間は流れる。
流れた時間は、二度と戻らない。
翌日、君の机は空だった。
名前の書かれたシールも、椅子の傷も、全部消えていた。
教室は何事もなかったように、いつも通りだった。
僕だけが、置いていかれた。
あの夏が終わるたび、胸が痛む。
もし、あの時一言でも言えていたら。
もし、怖がらなければ。
後悔は、思い出よりも鮮明だ。
時間が経つほど、なぜか色を失わない。
もう会えないと分かってから、
ようやく気づく。

青春は、

大切なことを言えなかった記憶でできている。
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