花火が見えなかった夏

ららら

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あの夏の続きを、今度こそ

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手紙を読んだ夜、僕は眠れなかった。
後悔はもう十分だった。
これ以上、時間に置いていかれたくなかった。
封筒の裏に、薄く残った走り書きがあった。
消しかけの文字と、連絡先。

——まだ、繋がれる。

指が震えながら、メッセージを打つ。
何度も消して、やっと送った。
「突然ごめん。
今さらだけど、手紙を見つけた。
もし迷惑じゃなければ、少し話せないかな。」
既読がつくまで、長かった。
でも、その後に返ってきた言葉は、短くて、優しかった。
「見つけてくれてよかった。
私も、ずっと言えなかったことがあった。」
待ち合わせは、川沿いの土手だった。
あの夏と同じ場所。
でも、僕らはもう、同じ年齢じゃない。
夕焼けの中、君は少し照れたように笑った。
それだけで、胸が苦しくなる。
「遅くなってごめん」
僕が言うと、
君は首を振った。
「遅れただけだよ。
なくなってたら、ここにも来てない」
風が涼しかった。
夏の終わりの匂いがした。
今度は、言えた。
「ずっと、好きだった」
君は少し目を潤ませて、
でも、はっきり頷いた。
「知ってた。
でも、聞けてよかった」
遠くで、小さな花火が上がった。
今度はちゃんと、光も見えた。
青春は終わった。
でも、後悔で止まっていた時間は、ここで動き出した。


     あの夏の続きは、
   ちゃんと、今にあった。


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あとがき

この物語は、
言えなかった一言と、
そのまま終わってしまった夏の記憶から生まれました。
青春は、振り返ってみて初めて
「大切だった」と気づくものが、あまりにも多い。
その多くは、もう取り戻せない形で心に残ります。
それでも、
後悔があったからこそ、
想いが本物だったと分かることもある。
遅れて届いた答えが、
人を前に進ませることもある。
この物語が、
あなた自身の「見えなかった何か」を
そっと思い出すきっかけになれば幸いです。
花火は、いつもそこにあった。
見えなかっただけで。
最後まで読んでくださり、ありがとうございました。

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