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頼みと処罰
しおりを挟む「楼主、こちらです」
配下の案内で裏切り者が居る牢屋に向かう。
誰であっても、決して許さない。
「お前だな。主君を危険な目にさらした裏切り者は」
手錠と鎖で両手両足を繋がれた裏切り者。
「…夜月の下っ端のまま一生を過ごせとでも?それこそ無駄でしか無い。それならお偉い方のために功を立てた方が私のため、ひいては夜月のためになるはず。そうじゃない?」
「…功を立てるために、我らが主君を誘拐したと?」
「ええ、そうよ。悪い?」
「…主君を守れるよう武芸に励むべき者が、功を立て出世を望み主君を危険にさらすとは」
「…私をどうするつもり?楼主の珒卿殿?」
「当然、お前を拷問し、皆の見せしめとする。夜月を追い出された者がどのような結末をたどるか、ゆっくり見させてもらう」
「ふふ。……でも、私は他の者とは違うの」
「何を言う」
「……私は翠葉。主君の婚約者である深児様の友人なの。もし私を処罰すれば、深児様はどうするのでしょうね?」
深児様の友人…。
それならば尚更、深児様を悲しませるようなことをしないと思うのだが。
…深児様と関係する者であれば、容易に手を下せない。ここは主君に指示を仰ぐとするか。
「…お前は誠に深児様の友人だな?」
「ええ、配下たちに聞いてみたら?」
私はその場を一度離れ、配下たちに確認する。
「楼主、確かにあの者…翠葉は深児様の友人のようです。翠葉が深児様と一緒に居るところを配下たちが目撃しています」
「…そうか。ならば誠に」
私は裏切り者の元へ戻り、翠葉には水と食事を与え、主君の指示があるまでしかと見張るよう配下たちに命じた。
「…楼主」
「何だ」
「今回の黒幕を知ろうとはしないのはなぜ?」
「…主君の命に無かったゆえな」
「へぇ…。なら、夜月が売る情報として教えてあげる。その代わり、私の頼みを聞いてほしいの」
「…頼み?」
「…そう。頼みを聞いてくれたら、黒幕を教えて夜月の為に功を立てるわ」
「分かった。聞こうか」
その頼みを聞いた後、翠葉のことと頼みを伝えるため、主君に伝書鳩を飛ばした。
☆
「未央様」
「…んん…何だ、そなたか」
「夕餉のお時間ですよ」
「…分かった」
「天祐様も華耶さんも未央様のことをとても心配されていましたよ」
「…だから何だ、私が悪いのか?」
「いえ。全ては旦那様が」
「…ふ、今の言葉が誰かに聞かれたらどうするつもりだ」
「その時は未央様が守ってください。私が居ないと何もできないでしょう?」
「…それを言われたら何も言えぬではないか」
「…ふふ」
そんな会話をして、心を落ち着かせる
侍女が夕餉を持ってきて、私の前に置く
夕餉を終えて、くつろいでいた
「居るか」
この声、あやつだな
「…お好きにどうぞ」
「…相変わらずお前は親に対しての口の利き方がなっておらぬな」
「小言を言いに来た訳ではないはずでは」
「…無事だったのは何よりだ、とても心配したぞ」
何だ、よき父の真似事か?
気持ち悪くて反吐が出る
「汚らわしい私のことなど、気に留めることすらしたくないと思っていた」
「汚らわしいなど思っておらぬ、お前は私の娘だからな」
いとも簡単に嘘を吐けるこの者の娘として生まれてきた私こそ、愚か者というべきか
「…その様子だと、何か嬉しいことでもあったようで」
「ああ!お前のおかげだ、誠に感謝するぞ」
「感謝されるようなことをした覚えはない…」
「いや、お前は感謝に値することをしてくれたんだ」
「…そう」
侍女よ、早く来い
もう限界だ
「褒美をやろう、何が欲しい」
「何も」
「そう遠慮するな、さあ、何が欲しいか申して—」
「旦那様、未央様がお休みになる時間です」
「…ああ、そうか。失礼したな、ゆっくり休め」
侍女が入り、あやつを帰らせることが出来た
今回のことを利用して、政敵の爵位を取り上げようとでも考えておったのだろう
どうせそんなところだ
利用したいなら好きにすればいい
私の邪魔をしないなら、好きに利用し、好きに人間を陥れ、好きに殺せばいい
「未央様」
「遅いぞ、もっと早く来い」
「申し訳ございません。旦那様がいらっしゃるとは思わず…」
「…よい。それで、何かあったか」
「珒卿殿からの手紙です」
「正体が分かったようだ」
その手紙には、
『裏切り者の身元が判明したことをお知らせします。その者より、黒幕を吐く前に頼みを聞いてほしいそうで、その頼みについてご判断を仰ぎたく。詳細は後ほどお話します』
と書いてあった
私に判断を仰ぐとは、何やら一筋縄ではいかぬようだな
私は部屋を出て、夜月へと向かう
珒卿たち配下の案内で、裏切り者の牢屋に着く
「主君、この者です」
「…あなたが主君?」
「ああ、そうだ。興味は無いが、名は?」
「ふふ…。翠葉。あなたの婚約者である深児様の友人」
…あの女子と関係があったか
どこかで聞いたことのある声だったが、
…そうか
侍女と出かけたあの日に、あの女子の隣で仲睦まじく話していた者か
「主君、どのように処罰すればよいか、ご指示を頂けませんか?」
「……なるほどな、あの場で婚約者のことを聞いた理由が分かった。そなたは私を恨んでいたか」
「そういうこと。下っ端の私が主君であるあなたに復讐する機会でもあったの。だから深児のことを聞いた。でもあなたは態度や表情さえ変わらない、冷酷なその口で深児は関係ないといい、心配する言葉すら無かった」
当然だろう
あの場で婚約者を気に掛ける必要などあるものか
死なぬことを承知しているゆえ、そして、目的があやつにあることを知っていたからだ
「…愚かだ」
「そうよ、私は愚かな人間。でもね、そんな私を必要としてくれた人が居たの」
「愚かなそなたの人生などに興味は無い」
「…その人は夜月に居た松月って言う人で、私を気にかけてくれて、分からないこともすべて彼が教えてくれたの。いつの日にか私は松月に恋をしていたの。でもある日急に姿をくらませて行方不明になった。今までどこを探しても見つからなかった。もうこの世にはいないのかと思ったこともあったわ。…でも、諦められない。どうか、松月の生死だけでも調べてくれませんか」
…それが頼み、か
「主君、いかがいたしましょう」
「……夜月は情報を売る場。忘れたのか?」
「…では、頼みを受け入れるので?」
「そう言っている」
「かしこまりました」
「…っ!ありがとうございます、この恩は死んでも忘れません!」
「翠葉の処罰は…」
「武芸を出来ぬ体にして牢屋に閉じ込めよ。最低限の食事は与え、他人との接触は避けろ」
「かしこまりました。…誰か、この者を連れていけ」
配下たちが翠葉を連れて行ったのを見届けて、私は屋敷に戻ることにした
「…未央様、おかえりなさいませ」
「ああ。…今日は大変だった」
「そうですね。ゆっくりお休みください」
「明日はあの女子の元に行くぞ」
「無事なことを知らすためですね」
「ああ。一応婚約者だからな」
「ふふ。良きことです」
「…何も聞くまい」
「あら、残念」
そなたには嬉しいのだろうな
私にはどうでもよいが
明日の為にも今日はゆっくりするとしよう
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