7 / 16
姫の気持ち
しおりを挟む
「未央様、朝です。起きてください」
…起こしに来たか
「…私は構わぬ、入れ」
「失礼いたします。…おや、起床されていたのですか?」
「何だ、不満か?」
「いいえ、それほど、深児様とのお出かけが楽しみだったのかと」
「おかしなことを言うものだな、そなたは」
「……未央様は、母君を恨んでおいでですか…?」
「恨む?…母は何の罪も犯しておらぬというのに、なぜ恨む必要がある?」
「…そうですね。ただ、消滅という運命を背負うことになって、未央様は苦しくないのかと…」
私は感情が無い
恨むというものは、母や侍女から教わった感情であって私の中には存在しない
かような世に感情を持つことなど、何の意味があるのだ
感情を持ったとして、それが何になるというのだ
感情など、必要の無いものだというのに
なぜ人は、感情など愚かなものを持とうとするのか、理解できぬ
「私はただ運命に従って生きるのみ。消滅など、容易いことだ」
「消滅したら、どこに行くのですか?」
「さあ、消滅せねば分からぬ」
「そうですか…」
「そんなことより、珒卿に伝えたか」
「ご安心を。離れたところから未央様と深児様をお守りするとのことです」
「よい、心得ている」
「では、お食事は街で?」
「…そうだな、深児の行動に任せるしかあるまい」
「かしこまりました。では参りましょうか」
「ああ」
侍女と共に外に出る
深児が目の前に居るのか
「どうした、私が迎えに行くべきであろう。そなたが来るとは礼儀を知らぬのか」
「申し訳ありません…。待つ時間が苦しくて…早く未央様に会いたくて」
「…そうか。ならば構わん、好きにしろ」
「ありがとうございます…」
「では行くぞ、傍から離れるなよ」
「はい…!」
街の中を歩く
深児の目に留まった店に寄って、飾りや香り袋を買った
「未央様は何か欲しいものはありませんか?」
「ない」
「それすら望んじゃダメなんですか?」
「望むことは知らぬ。そなたも私に求めさせるな」
「…じゃあ、私が未央様に贈り物をするのは良いですよね?…この香り袋、未央様に合うので、贈ります」
……緑の香り袋を私に、か
「……そなたからの贈り物であれば、受け取ろう」
「…良かった、受け取ってくださって」
「そなたは婚約者だろう?…断ればそなたの体面が傷付くであろう。受け取るしかあるまい」
「………」
「どうした、気分が良くないなら屋敷まで送らせるが」
「あ、いえ、大丈夫です…ただ、寂しくて」
「寂しい、?」
「…気にしないでください。さっ、次の店行きましょう?」
「ああ…」
何だ?
寂しいというのは感情のことか…?
この者の言うことが私には分からぬ
私にどうして欲しいのだ、この女子は
「……あっ!ここ!この街で有名な麺屋です!さ、入りましょ。ここの麺は美味しいんです!」
「ああ、分かった」
店に入り、席に座る
麺を2つ頼んで、来るのを待つ
そして、数分後、麺が来た
「……美味しそうですね!さぁ、この箸で食べてください。きっと気に入ってもらえますよ」
「ああ、頂くとしよう」
麺をすすって食べる
…ああ、これが
「どうですか?」
「…良い柔らかさだ、汁と麺がよく絡んでいるな」
「でしょう?ここの麺大好きなんですよ」
「そうなのか。まあ、そう言うのも分かるかもしれぬ」
「…共感してもらえて嬉しいです!」
「……私の言葉が嬉しいのか」
「もちろん。嬉しいです、だって、私の想い人ですから」
「……好きにしろ」
「ふふ」
「……早く食べて帰るぞ」
「はい」
麺を食べ、勘定をし、外に出た
屋敷の外は慣れておらぬからか、少し疲れたな
「屋敷の外に出るのに慣れておらぬゆえ、私は帰る。そなたも疲れただろう、帰るが良い。屋敷まで従者に送らせる」
「はい。ありがとうございました、またお誘いしても良いですか?」
「…好きにせよ、私は構わぬ」
「はい。では失礼します」
「ああ。……来い」
近くに控えている珒卿を、合図の手振りで傍に呼ぶ
「お呼びでしょうか」
「屋敷に帰る。そなたは深児を屋敷まで護衛しろ、残りは私と共に屋敷へ」
「御意」
珒卿と数名を深児の護衛に回し、
残りを私の護衛に付かせる
望んでいない婚姻ではあるが、それを理由に相手の体面等を傷付ける訳にはいかない
私が望むのは、
この世からの消滅、ただ1つである
「未央様、おかえりなさいませ」
「ああ。……何だ」
「天佑様が未央様とお話したがってるとのことです」
「……私と何を話すというのだ」
「そこまでは分かりません」
「……夜なら構わないと伝えろ。疲れたから休む、夜に起こしに来い」
「かしこまりました」
……私と話したとて、何になるというのだ
暇つぶしにしかならぬ
深児とやらは、たいそう私のことが気に入っているようだ
私を気に入ったとて、良いことなど何も無かろうに
なぜ娘を私に嫁がせるのか、
秋男爵とやらは何を考えているか分からぬ
夜月の調べならば、これ以上疑う必要が無くなるが
人間など、いつ変わるか分からない
今は良くとも、いつ、気が変わるか分からぬのだ
人間というものは気分屋なのだ
深児という者も、いつ気が変わるか分からぬ
それゆえ、全てを信じる訳にはいくまい
気が変わったとて、私には関係の無いこと
好きに生きるがよい
……消滅、ただそれだけが私の運命だ
他人の感情や人生になど構ってられぬ
…起こしに来たか
「…私は構わぬ、入れ」
「失礼いたします。…おや、起床されていたのですか?」
「何だ、不満か?」
「いいえ、それほど、深児様とのお出かけが楽しみだったのかと」
「おかしなことを言うものだな、そなたは」
「……未央様は、母君を恨んでおいでですか…?」
「恨む?…母は何の罪も犯しておらぬというのに、なぜ恨む必要がある?」
「…そうですね。ただ、消滅という運命を背負うことになって、未央様は苦しくないのかと…」
私は感情が無い
恨むというものは、母や侍女から教わった感情であって私の中には存在しない
かような世に感情を持つことなど、何の意味があるのだ
感情を持ったとして、それが何になるというのだ
感情など、必要の無いものだというのに
なぜ人は、感情など愚かなものを持とうとするのか、理解できぬ
「私はただ運命に従って生きるのみ。消滅など、容易いことだ」
「消滅したら、どこに行くのですか?」
「さあ、消滅せねば分からぬ」
「そうですか…」
「そんなことより、珒卿に伝えたか」
「ご安心を。離れたところから未央様と深児様をお守りするとのことです」
「よい、心得ている」
「では、お食事は街で?」
「…そうだな、深児の行動に任せるしかあるまい」
「かしこまりました。では参りましょうか」
「ああ」
侍女と共に外に出る
深児が目の前に居るのか
「どうした、私が迎えに行くべきであろう。そなたが来るとは礼儀を知らぬのか」
「申し訳ありません…。待つ時間が苦しくて…早く未央様に会いたくて」
「…そうか。ならば構わん、好きにしろ」
「ありがとうございます…」
「では行くぞ、傍から離れるなよ」
「はい…!」
街の中を歩く
深児の目に留まった店に寄って、飾りや香り袋を買った
「未央様は何か欲しいものはありませんか?」
「ない」
「それすら望んじゃダメなんですか?」
「望むことは知らぬ。そなたも私に求めさせるな」
「…じゃあ、私が未央様に贈り物をするのは良いですよね?…この香り袋、未央様に合うので、贈ります」
……緑の香り袋を私に、か
「……そなたからの贈り物であれば、受け取ろう」
「…良かった、受け取ってくださって」
「そなたは婚約者だろう?…断ればそなたの体面が傷付くであろう。受け取るしかあるまい」
「………」
「どうした、気分が良くないなら屋敷まで送らせるが」
「あ、いえ、大丈夫です…ただ、寂しくて」
「寂しい、?」
「…気にしないでください。さっ、次の店行きましょう?」
「ああ…」
何だ?
寂しいというのは感情のことか…?
この者の言うことが私には分からぬ
私にどうして欲しいのだ、この女子は
「……あっ!ここ!この街で有名な麺屋です!さ、入りましょ。ここの麺は美味しいんです!」
「ああ、分かった」
店に入り、席に座る
麺を2つ頼んで、来るのを待つ
そして、数分後、麺が来た
「……美味しそうですね!さぁ、この箸で食べてください。きっと気に入ってもらえますよ」
「ああ、頂くとしよう」
麺をすすって食べる
…ああ、これが
「どうですか?」
「…良い柔らかさだ、汁と麺がよく絡んでいるな」
「でしょう?ここの麺大好きなんですよ」
「そうなのか。まあ、そう言うのも分かるかもしれぬ」
「…共感してもらえて嬉しいです!」
「……私の言葉が嬉しいのか」
「もちろん。嬉しいです、だって、私の想い人ですから」
「……好きにしろ」
「ふふ」
「……早く食べて帰るぞ」
「はい」
麺を食べ、勘定をし、外に出た
屋敷の外は慣れておらぬからか、少し疲れたな
「屋敷の外に出るのに慣れておらぬゆえ、私は帰る。そなたも疲れただろう、帰るが良い。屋敷まで従者に送らせる」
「はい。ありがとうございました、またお誘いしても良いですか?」
「…好きにせよ、私は構わぬ」
「はい。では失礼します」
「ああ。……来い」
近くに控えている珒卿を、合図の手振りで傍に呼ぶ
「お呼びでしょうか」
「屋敷に帰る。そなたは深児を屋敷まで護衛しろ、残りは私と共に屋敷へ」
「御意」
珒卿と数名を深児の護衛に回し、
残りを私の護衛に付かせる
望んでいない婚姻ではあるが、それを理由に相手の体面等を傷付ける訳にはいかない
私が望むのは、
この世からの消滅、ただ1つである
「未央様、おかえりなさいませ」
「ああ。……何だ」
「天佑様が未央様とお話したがってるとのことです」
「……私と何を話すというのだ」
「そこまでは分かりません」
「……夜なら構わないと伝えろ。疲れたから休む、夜に起こしに来い」
「かしこまりました」
……私と話したとて、何になるというのだ
暇つぶしにしかならぬ
深児とやらは、たいそう私のことが気に入っているようだ
私を気に入ったとて、良いことなど何も無かろうに
なぜ娘を私に嫁がせるのか、
秋男爵とやらは何を考えているか分からぬ
夜月の調べならば、これ以上疑う必要が無くなるが
人間など、いつ変わるか分からない
今は良くとも、いつ、気が変わるか分からぬのだ
人間というものは気分屋なのだ
深児という者も、いつ気が変わるか分からぬ
それゆえ、全てを信じる訳にはいくまい
気が変わったとて、私には関係の無いこと
好きに生きるがよい
……消滅、ただそれだけが私の運命だ
他人の感情や人生になど構ってられぬ
0
あなたにおすすめの小説
👨一人用声劇台本「寝落ち通話」
樹(いつき)@作品使用時は作者名明記必須
恋愛
彼女のツイートを心配になった彼氏は彼女に電話をする。
続編「遊園地デート」もあり。
ジャンル:恋愛
所要時間:5分以内
男性一人用の声劇台本になります。
⚠動画・音声投稿サイトにご使用になる場合⚠
・使用許可は不要ですが、自作発言や転載はもちろん禁止です。著作権は放棄しておりません。必ず作者名の樹(いつき)を記載して下さい。(何度注意しても作者名の記載が無い場合には台本使用を禁止します)
・語尾変更や方言などの多少のアレンジはokですが、大幅なアレンジや台本の世界観をぶち壊すようなアレンジやエフェクトなどはご遠慮願います。
その他の詳細は【作品を使用する際の注意点】をご覧下さい。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
敗戦国の姫は、敵国将軍に掠奪される
clayclay
恋愛
架空の国アルバ国は、ブリタニア国に侵略され、国は壊滅状態となる。
状況を打破するため、アルバ国王は娘のソフィアに、ブリタニア国使者への「接待」を命じたが……。
ちょっと大人な物語はこちらです
神崎 未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な短編物語集です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
人狼な幼妻は夫が変態で困り果てている
井中かわず
恋愛
古い魔法契約によって強制的に結ばれたマリアとシュヤンの14歳年の離れた夫婦。それでも、シュヤンはマリアを愛していた。
それはもう深く愛していた。
変質的、偏執的、なんとも形容しがたいほどの狂気の愛情を注ぐシュヤン。異常さを感じながらも、なんだかんだでシュヤンが好きなマリア。
これもひとつの夫婦愛の形…なのかもしれない。
全3章、1日1章更新、完結済
※特に物語と言う物語はありません
※オチもありません
※ただひたすら時系列に沿って変態したりイチャイチャしたりする話が続きます。
※主人公の1人(夫)が気持ち悪いです。
診察室の午後<菜の花の丘編>その1
スピカナ
恋愛
神的イケメン医師・北原春樹と、病弱で天才的なアーティストである妻・莉子。
そして二人を愛してしまったイケメン御曹司・浅田夏輝。
「菜の花クリニック」と「サテライトセンター」を舞台に、三人の愛と日常が描かれます。
時に泣けて、時に笑える――溺愛とBL要素を含む、ほのぼの愛の物語。
多くのスタッフの人生がここで楽しく花開いていきます。
この小説は「医師の兄が溺愛する病弱な義妹を毎日診察する甘~い愛の物語」の1000話以降の続編です。
※医学描写はすべて架空です。
せんせいとおばさん
悠生ゆう
恋愛
創作百合
樹梨は小学校の教師をしている。今年になりはじめてクラス担任を持つことになった。毎日張り詰めている中、クラスの児童の流里が怪我をした。母親に連絡をしたところ、引き取りに現れたのは流里の叔母のすみ枝だった。樹梨は、飄々としたすみ枝に惹かれていく。
※学校の先生のお仕事の実情は知りませんので、間違っている部分がっあたらすみません。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる