未央記〜運命の姫は消滅する〜

涼-りょう‐

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敵の目的と婚約者

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「旦那様、昼餉のお時間です」

「…妻は?」

「奥様もじきおいでになるかと」

「分かった。準備を」

「はい」


愛する妻との昼餉は楽しみだ。

我が穆家は、この国に必要な一族である。先祖代々、我が国と皇帝陛下に仕えてきた。そのためならどんな手段でも使う。たとえ、血で染めても。邪魔をする者は誰であっても許さない。


「旦那様、奥様です」

「通せ」

「はい」


執事に妻を通させ、少し話をする。


「旦那様、今日はご機嫌のようで、何かあったのですか?」

「…いいや、何もない。お前との昼餉が楽しみだっただけだ」

「ふふ…もう旦那様ったら…」


全く、なぜこの女子が正妻でなかったのか。後妻として迎えることにどれだけ不満を持っていたか。
あの忌まわしき女子のせいで、私の人生が滅茶苦茶ではないか。


「ほら、昼餉だ、食べよう」

「ええ」

「…父上!母上!」


天祐か、今から昼餉を食べようとしたというのに何事だ…


「天祐、そんなに急いでどうした」

「ほら、落ち着きなさい。水よ」

「…はぁ…はぁ…。姉上が、何者かにさらわれたんだって!」


…あいつが何者かにさらわれた、だと?
なぜあいつのような女をさらう必要があるのだ


「…誰から聞いた」

「姉上の侍女から聞きました!」

「…だから早くこの家から追い出したいのよ、かような女子がいたらこの家は災いで滅ぶかもしれないのよ!」


妻の言うことは分かっている。だが、なぜあいつをさらったのだ、そうしたところで良いことなどないはずだ。
…待て   
良いことを思いついたぞ。


「娘をさらった者と指示した者を突き止めよ」

「御意、旦那様」

「…あなた、何をする気?」

「心配するな、この件はしっかりと片をつけるさ」

「…分かったわ」


…娘を人質に、私の所業を世に晒そうとでも言うつもりか。
ふん、甘く見られたものだ。
この私が娘なんぞのためにすべてを白状すると思うのか、本当に馬鹿者ばかりだ。


「旦那様、気を付けてくださいね。貴方が居なくなったら私…この先どうやって生きていけばいいのか分かりませんわ…」

「…安心しろ、決してお前の傍を離れない」

「ふふ、旦那様ったら」


さて、私を侮った罰を与えてやる。


         ✰


「へぇ、あんたって特殊なんだな」

「…どこが特殊なのだ、私にはこれが普通だと思うが」

「それが普通?ありえないさ、そんなの。まあ貴族様たちの世界じゃあ普通かもしれねえな」

「…こんな話をしていてつまらないだろう、聞かねば良かったと後悔するはずだ」

「どこがつまらないんだ、俺からしたら面白い話だぜ。俺たちみたいな卑しい人間には考えられない話ばかりだからな」

「……よく分からぬ」


ずっと男と話をしていたが、暇つぶしには最適だった
侍女以外に私の話を聞きたがる者がいるとは思わなかったが、私の話を聞いたところで何になる
本当によく分からぬ生き物だ


「ここで俺は失礼するぜ、そろそろ主が来る時間だ。じゃあな」

「…好きにしろ」


主がここに来るらしい
どうせ珒卿が来るのだ、詳しく話を聞いてどんな愚か者が絡んでいるのか聞き出してやるか


「……教えろ、父親のせいで怖い思いをする気分はどんな気分なのか」


…背は高め、細身、雰囲気からして強い野心を感じる
そして、声は女子のようだ、男の声ではない


「恐怖など分からぬ。それにこれは初めてではない。目的は父だろう、私は関係ないはずだが」


「お前の父親がしてきた悪行を放置する訳が無い。お前を餌にして父親を釣る。それが私たちの目的だ」

「ふん、そなたたちは意味のないことをするのだな。そなたたちは何もできまい」

「強がっていられるのも今の内だ。必ず、お前たちは破滅する」


破滅するのはそなたらだろう
それが分からぬとは、生まれながらにして愚か者というものだ


「…こんな状態になって婚約者のことはどうでも良いのか」

「…何だ」

「秋男爵の娘と婚約していると聞いた。もしお前が死んだらその娘のことはどうするつもりなんだ」


ここに来てあの女子のことを聞くか
私がどんな人間か知らないようだな


「私がどうなろうとあの女子には関係のないことだろう。それに、そなたたちの敵は私の父だろう?あの女子にどう関係するというのだ」


どうやらこの者はあの女子のことを知っているようだ、あやつが目的ならばなぜあの女子が出てくるのだ
少し黙っている様子、私の言葉で何かを感じたらしい


「…父と私のことだろう、あの女子のことなど関係あるまい。私がここを出て無事に帰ることが出来たらあの女子と話す。今ここにいる以上、あの女子が話に出てくる理由が分からぬ。…何だ、そなたらはあの女子も目的の一つなのか?」

「…何を。私たちの目的はお前の父親だ。それ以外に目的など無い」


この者はよほど私の言葉が気に障ったらしい、何か強い感情を持ち、この場を出て行った

その数分後、外で見張りが叫ぶ声がした
…珒卿が来たようだ、やっと出られる

…見張りを倒したのだろう、静かになった
だが中には入らず、その場を離れる音がした
…そしてその後、珒卿が中に入って来た


「主君!」


やっと来たか
さっきのこと、主とやらのことをそれぞれ珒卿に話して調べさせるとしよう
あの女子とも話さねばな
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