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トゥーリス、ログラーツ大戦編
44.氷花の鬼神(3)〜真紅と剣姉妹の本心〜
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すべてが終わったと思われた。
しかし、
一時退却のログラーツ王。ログラーツにて。
(我が孫たちはトゥーリスに懐柔されたのだ…。許しておけん…!)
勝利したトゥーリス王。トゥーリスにて。
(ログラーツは我らの主戦力であったジリアスを殺したのだ…。エレミヤがボコボコにしたとはいえ、怒りが収まらん…!)
終戦どころか、二国はお互いに対する怒りをさらに倍増させていたのだ。
((殲滅する!))
❅❅❅❅❅❅❅❅❅❅❅❅❅❅❅❅❅❅❅❅❅❅❅
『ふん、手強かったがこんな物で私を倒そうと?驕り高ぶり過ぎたな。』
戦いが一時的に終わった次の日の夜。
エレミヤは言われた祖父の言葉を思い出し、ガルゴス家の自分の部屋でベッドに倒れ込んだ。
「そんなこと思っていない。もっと、もっと強くならなきゃ…。」
エレミヤは少し目をからを細め、
(多分、戦いの本番はこれからだ。爺様の暴走を止めないと…。)
エレミヤはゆっくり体を起こし、ベッドの上のカーテンを開ける。
時は夕方。
月が赤色に染まっている。
まるで、これからこの国を染める色を宣言するかのように。
❅❅❅❅❅❅❅❅❅❅❅❅❅❅❅❅❅❅❅❅❅❅❅
「パパ…。」
「父様…。」
アーシリアとダリアはエレミヤの中からエレミヤの様子をうかがっていた。
「…あのジジイ、パパにあんなこと言うなんて…。」
とアーシリアが歯ぎしりをながら犬歯をむき出しにして呟く。
「父様は驕り高ぶってなんかいません。落ち着いて…。」
しかし、そんな彼女たちの会話に割り込んでくる声があった。
〔本当にそうか?〕
と。
「ルティーエス!あなたはどっちの味方なの?!」
とアーシリアが叫ぶ。
〔勿論、エレミヤさ。〕
とルティーエスは当然のように言う。
〔ただ、エレミヤは偶に相手を見下すような行動を起こすことがある。例えば…。そうだな、ラニアの時とか。エレミヤはこう言ったろう?
『あれ?今まで僕が手加減してたの、知りませんでした?』
ってな。怒りに己を支配できていなかった故にこのような言葉が出てきたんだろう。しかし、実際にエレミヤは力を抑えていた。〕
アーシリアとダリアは下を向く。
〔エレミヤの中にはそういう感情があるのかもしれない、そう言いたかったんだ。〕
アーシリアは悔しそうにした唇を噛む。
ダリアは俯いたまま動かない。
「でも、私達はパパを信じるから。これが私達の本心よ。」
ルティーエスが薄く笑ったのがわかった。
〔それでいい。エレミヤには君たちが必要だ。もし、あいつが驕り高ぶることがあったら叱ってやれ。〕
「当然、そんな事は起きないけど、分かったわ。」
フッとルティーエスが消えたことが分かった。
「姉様…。」
ダリアが震える声を出す。
アーシリアは無言で妹を抱き寄せる。
「う…うぅ………。」
ダリアは姉の胸ですすり泣く。
「ダリア、なんの弁護もできませんでした…。ダリアは悪い子です…。」
泣きながらそう言うダリアにアーシリアは目を瞑って薄く笑う。
「全く…。大丈夫よ、ダリア。あなたが泣いてくれているだけでパパは喜ぶわ。」
しかし、ダリアは首を横に振る。
「父様はダリアが泣いて喜ぶ人じゃないです…。」
アーシリアはその言葉にフフ、と笑いを漏らす。
「そうだね。だったら笑おうよ。パパが喜んでくれるよ。」
「…はい!」
ゆっくりと顔を上げ、ニッコリと笑ったダリアと微笑むアーシリア。
二人の様子を見てルティーエスと氷蓮は穏やかな気持ちになった。
エレミヤ達の戦いからニ週間後、トゥーリス王国とログラーツ王国は本格的に戦争の準備を始めた。
そして、トゥーリスとログラーツの中間にある国、フォルスワーム王国の近くの『トフロ平野』での戦争が決まった。
そのトフロ平野は魔物が多数出現することで有名な平野で、エレミヤとギリウスが通った場所でもあった。
今まで戦いはいわゆる余興。これから始まる戦いこそが「トゥーリス、ログラーツ大戦」の本戦である。
❅❅❅❅❅❅❅❅❅❅❅❅❅❅❅❅❅❅❅❅❅❅❅
「…はぁ…。」
エレミヤは大きくため息をついた。
「パパー。どうしたの~?」
お菓子を両手いっぱいに抱えたアーシリアが聞いてきた。
「いや…。また戦争始まるんだって思ってさ…。あまり人を殺したくないんだよね…。」
とエレミヤはぼやく。
「しょーがないよ。あのジジイが悪いんだよ。パパはなぁーんにも悪くないから片手でグシャってひねり潰せばいいの!」
「それはまた…。恐ろしい…。」
エレミヤは半眼になり、アーシリアを膝に乗せる。
「わぁーい!」
と嬉しそうにはしゃぎ、ポス、と背中をエレミヤに預けるアーシリア。
「むむっ!ずるいです!そこはダリアの特等席なのです!」
と言い、アーシリアをどかそうとするダリア。
「やぁーのぉー!!!」
嫌々言い、エレミヤにしがみつくアーシリアと不満そうに顔を顰めるダリア。
最終的にはそれぞれの膝に一人ずつ座ることになった。
「はい、お菓子もダリアと半分こ!」
「わぁ!ありがとうございます、姉様!」
(なんだかんだ言って仲いいんだよな、この二人。)
エレミヤがそう思い破顔した時、ドアがノックされた。
「まっくん?今いい?」
ミイロだった。
「いいよ。」
と返事をするエレミヤ。
そしてドアを開け、入ってくるミイロにエレミヤは笑いかける。
「どうしたんだい?みぃ。」
「いや、そういえばアーシリアちゃんとダリアちゃんにちゃんと挨拶できてなかったなーって。」
はにかみながら言うミイロ。
エレミヤはミイロの言葉に笑って紹介する。
「右にいる子がアーシリア。左にいる子がダリアだ。アーシリアはグラム、ダリアはミストルティンっていう地球でも有名な武器だったんだ。知ってるだろ?」
ミイロはエレミヤの説明を一通り聞いたあと、
「ふぅーん。人間が転生して人外になるのは聞いたことあるけど、人外が転生して人外になるってあまり聞かないなぁ…。」
するとそれにアーシリアたちが反応する。
「本当はアーシ達も人間が良かったの!なのに、剣がまた剣に転生だなんて…。こんな悔しいこと、ある?!」
ダリアも隣で大きく頷いている。
するとミイロがクスクス笑うと、
「そっかぁ、かわいい子で良かったあ!始めまして!私、ミイロって言います!まっくん、君達のお父さんとは婚約関係にあります!」
「だぁぁぁ!何言っちゃってるの!」
「だってホントだし!」
「うぅぅぅ……。……はい、そうです…。」
するとミイロはエレミヤの腕に抱きついてきた。
ポカーンとしていた剣姉妹だったが、
「じゃあ、ママだね!」
「母様って呼んでもいいですか?」
「もっちろーん!」
コトン、とエレミヤの肩に頭を預けたミイロが幸せそうに笑った。
エレミヤはミイロの頭を撫でつつ、もう片方の手でベッドの上のカーテンを開ける。
時は夕方。
月が赤色に染まっている。
まるで、これから染まる色を宣言するかのように。
しかし、
一時退却のログラーツ王。ログラーツにて。
(我が孫たちはトゥーリスに懐柔されたのだ…。許しておけん…!)
勝利したトゥーリス王。トゥーリスにて。
(ログラーツは我らの主戦力であったジリアスを殺したのだ…。エレミヤがボコボコにしたとはいえ、怒りが収まらん…!)
終戦どころか、二国はお互いに対する怒りをさらに倍増させていたのだ。
((殲滅する!))
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『ふん、手強かったがこんな物で私を倒そうと?驕り高ぶり過ぎたな。』
戦いが一時的に終わった次の日の夜。
エレミヤは言われた祖父の言葉を思い出し、ガルゴス家の自分の部屋でベッドに倒れ込んだ。
「そんなこと思っていない。もっと、もっと強くならなきゃ…。」
エレミヤは少し目をからを細め、
(多分、戦いの本番はこれからだ。爺様の暴走を止めないと…。)
エレミヤはゆっくり体を起こし、ベッドの上のカーテンを開ける。
時は夕方。
月が赤色に染まっている。
まるで、これからこの国を染める色を宣言するかのように。
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「パパ…。」
「父様…。」
アーシリアとダリアはエレミヤの中からエレミヤの様子をうかがっていた。
「…あのジジイ、パパにあんなこと言うなんて…。」
とアーシリアが歯ぎしりをながら犬歯をむき出しにして呟く。
「父様は驕り高ぶってなんかいません。落ち着いて…。」
しかし、そんな彼女たちの会話に割り込んでくる声があった。
〔本当にそうか?〕
と。
「ルティーエス!あなたはどっちの味方なの?!」
とアーシリアが叫ぶ。
〔勿論、エレミヤさ。〕
とルティーエスは当然のように言う。
〔ただ、エレミヤは偶に相手を見下すような行動を起こすことがある。例えば…。そうだな、ラニアの時とか。エレミヤはこう言ったろう?
『あれ?今まで僕が手加減してたの、知りませんでした?』
ってな。怒りに己を支配できていなかった故にこのような言葉が出てきたんだろう。しかし、実際にエレミヤは力を抑えていた。〕
アーシリアとダリアは下を向く。
〔エレミヤの中にはそういう感情があるのかもしれない、そう言いたかったんだ。〕
アーシリアは悔しそうにした唇を噛む。
ダリアは俯いたまま動かない。
「でも、私達はパパを信じるから。これが私達の本心よ。」
ルティーエスが薄く笑ったのがわかった。
〔それでいい。エレミヤには君たちが必要だ。もし、あいつが驕り高ぶることがあったら叱ってやれ。〕
「当然、そんな事は起きないけど、分かったわ。」
フッとルティーエスが消えたことが分かった。
「姉様…。」
ダリアが震える声を出す。
アーシリアは無言で妹を抱き寄せる。
「う…うぅ………。」
ダリアは姉の胸ですすり泣く。
「ダリア、なんの弁護もできませんでした…。ダリアは悪い子です…。」
泣きながらそう言うダリアにアーシリアは目を瞑って薄く笑う。
「全く…。大丈夫よ、ダリア。あなたが泣いてくれているだけでパパは喜ぶわ。」
しかし、ダリアは首を横に振る。
「父様はダリアが泣いて喜ぶ人じゃないです…。」
アーシリアはその言葉にフフ、と笑いを漏らす。
「そうだね。だったら笑おうよ。パパが喜んでくれるよ。」
「…はい!」
ゆっくりと顔を上げ、ニッコリと笑ったダリアと微笑むアーシリア。
二人の様子を見てルティーエスと氷蓮は穏やかな気持ちになった。
エレミヤ達の戦いからニ週間後、トゥーリス王国とログラーツ王国は本格的に戦争の準備を始めた。
そして、トゥーリスとログラーツの中間にある国、フォルスワーム王国の近くの『トフロ平野』での戦争が決まった。
そのトフロ平野は魔物が多数出現することで有名な平野で、エレミヤとギリウスが通った場所でもあった。
今まで戦いはいわゆる余興。これから始まる戦いこそが「トゥーリス、ログラーツ大戦」の本戦である。
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「…はぁ…。」
エレミヤは大きくため息をついた。
「パパー。どうしたの~?」
お菓子を両手いっぱいに抱えたアーシリアが聞いてきた。
「いや…。また戦争始まるんだって思ってさ…。あまり人を殺したくないんだよね…。」
とエレミヤはぼやく。
「しょーがないよ。あのジジイが悪いんだよ。パパはなぁーんにも悪くないから片手でグシャってひねり潰せばいいの!」
「それはまた…。恐ろしい…。」
エレミヤは半眼になり、アーシリアを膝に乗せる。
「わぁーい!」
と嬉しそうにはしゃぎ、ポス、と背中をエレミヤに預けるアーシリア。
「むむっ!ずるいです!そこはダリアの特等席なのです!」
と言い、アーシリアをどかそうとするダリア。
「やぁーのぉー!!!」
嫌々言い、エレミヤにしがみつくアーシリアと不満そうに顔を顰めるダリア。
最終的にはそれぞれの膝に一人ずつ座ることになった。
「はい、お菓子もダリアと半分こ!」
「わぁ!ありがとうございます、姉様!」
(なんだかんだ言って仲いいんだよな、この二人。)
エレミヤがそう思い破顔した時、ドアがノックされた。
「まっくん?今いい?」
ミイロだった。
「いいよ。」
と返事をするエレミヤ。
そしてドアを開け、入ってくるミイロにエレミヤは笑いかける。
「どうしたんだい?みぃ。」
「いや、そういえばアーシリアちゃんとダリアちゃんにちゃんと挨拶できてなかったなーって。」
はにかみながら言うミイロ。
エレミヤはミイロの言葉に笑って紹介する。
「右にいる子がアーシリア。左にいる子がダリアだ。アーシリアはグラム、ダリアはミストルティンっていう地球でも有名な武器だったんだ。知ってるだろ?」
ミイロはエレミヤの説明を一通り聞いたあと、
「ふぅーん。人間が転生して人外になるのは聞いたことあるけど、人外が転生して人外になるってあまり聞かないなぁ…。」
するとそれにアーシリアたちが反応する。
「本当はアーシ達も人間が良かったの!なのに、剣がまた剣に転生だなんて…。こんな悔しいこと、ある?!」
ダリアも隣で大きく頷いている。
するとミイロがクスクス笑うと、
「そっかぁ、かわいい子で良かったあ!始めまして!私、ミイロって言います!まっくん、君達のお父さんとは婚約関係にあります!」
「だぁぁぁ!何言っちゃってるの!」
「だってホントだし!」
「うぅぅぅ……。……はい、そうです…。」
するとミイロはエレミヤの腕に抱きついてきた。
ポカーンとしていた剣姉妹だったが、
「じゃあ、ママだね!」
「母様って呼んでもいいですか?」
「もっちろーん!」
コトン、とエレミヤの肩に頭を預けたミイロが幸せそうに笑った。
エレミヤはミイロの頭を撫でつつ、もう片方の手でベッドの上のカーテンを開ける。
時は夕方。
月が赤色に染まっている。
まるで、これから染まる色を宣言するかのように。
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