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ヨーラ湖畔にて
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「なるほど。これであの剣技会での勇者たちが、ここに二人揃ったというわけか」
フェーダー候の言葉通り、トレミリアでも指折りの騎士ブロテと、元は名もなき浪剣士であったレークが、こうして同じ目的を持つ遠征部隊の中で再会し、手を握り合うというのは、なんともドラマティックな光景であった。
「いやいや……なんとなれば、こちらに女騎士クリミナ殿もおられるのですから、名だたる三人の騎士ですな。これは……なんとも心強いことだ」
フェーダー候には、物語やドラマ的なものを賛美する気質があるらしい。すっかり感動した様子でそう付け足した。
「まったく。そう考えれば、この精鋭あらばジャリア軍も恐るるに足らずと、こういうわけですな」
つられたように言ったセルディ伯であったが、まだ対ジャリアについての言葉をおおやけに口にするのは尚早であったことに気づくと、慌てて口を閉じた。
「大丈夫。天幕の外までは聞こえてはおらんでしょう。それに、どのみちここに参加している騎士たちにも、事の成り行きと、目的とはもう薄々感じられているでしょうからな」
「ええ。ですが、やはりレード公にもくれぐれもと言われておりましたからな。トレミリア国内を出るまでは、これは極力ただの護衛部隊であって、ジャリアとの戦云々といったことは、とくに一般の兵の耳には届かぬようにしなくては。サルマの町に着く前に、騎士たちにもそれは徹底させるよう伝えておかないと」
「ですな。おそらくウェルドスラーブに入る頃には、この部隊の情報も、もう多くはジャリア側に悟られているでしょうが、少なくともそれまでは、トレミリアの出兵という事実は隠せるのならそれにこしたことはない」
ブロテの言葉に、クリミナとセルディ伯がうなずく。
「さて、これからの予定ですが」
セルディ伯はテーブルに周辺の地図を広げ、そこに記された街道を指でなぞりながら説明した。
「今日の夕刻までにはサルマに着けるかと思われます。そこで一泊し、翌朝にヨーラ湖から乗船してマクスタート川をくだって海に出る。船でいったんコス島に立ち寄って食料、その他必要物資を補給し、再び乗船してレイスラーブへ向かう……ということになります。数えて三日と半日ほどの行程ですな。なにかご質問は?」
「では」
「どうぞ、クリミナ殿」
「我々の人数に関しては、すでにサルマの町には連絡がいっているのでしょうから、騎士や兵士たち三千人が寝泊まりする場所についてはまあよしとして、問題は船ですが……」
「ヨーラ湖の港で、大型のガレー船を含む十隻がすでに完成したという報を受けています。
確かに、数についてははっきりとしなかったが、きっと問題はないかと」
セルディはやや楽観的に言った。
「ではそれに乗り込むとします。ところでガレー船であるからには漕ぎ手が必要です。そしてその人員となるのは、我等騎士たちということになる。騎士の中には……あるいは大半の傭兵たちは、ガレー船の漕手の経験がないかと思われますが、そのあたりの不安はどうなのでしょうか?」
「そうだな。俺もガレー船のあの重たい櫂を持ってみたことはあるが、ちゃんと漕いだ経験はない。あれはそうとうきついぜ」
レークの言葉に隣のブロテもうなずいた。
「確かに。なんといっても、トレミリアは内陸の国ですからな。まずガレー船に乗る経験などあまりない。ましてや、ウェルドスラーブへ行くのには、通常ならロサリイト街道を使って陸路でゆくのが最も早いわけですから」
「先日の、ロサリイト街道がジャリア軍によって封鎖されたという情報が、どうやら確かであるようなので、ウェルドスラーブへは海から行くか、そうでなければあるいは、アラムラ街道をゆくルートをとるかしかない」
地図を指さしながらセルディ伯が言った。
「アラムラ街道は……難儀ですな。最近は山賊なども多く出ると聞きますし、森林の中だけに、道もいりくんでいて、とても大軍の行軍には向かない」
「今のところ、ヨーラ湖から船でマクスタート川を下り、レイスラーブへ……あるいは潮と風向きによってはスタンディノーブルから上陸してもいい……そこから陸路でレイスラーブを目指すかということになる。そうなると、やはりこんなことなら、確かに早いうちから騎士たちにガレー船の訓練をさせておくべきだったとも思うが……それを今更言っても仕方ない」
セルディ伯は地図上をなぞって、ウェルドスラーブの北端を指した。
「最新の情報では、このバーネイ付近にジャリア軍が布陣したということだ。つまり、奴らはここを押さえることで、ロサリイト街道を封鎖し、事実上、我々トレミリアとセルムラードからのウェルドスラーブへの援軍を陸路では阻むことができるわけだ」
「この際、ロサリイト草原でジャリアと一戦交える、という手もありましたがな」
いかにも勇猛な戦士らしくブロテは言った。だが、セルディ伯は首を振った。
「これは陛下ともども、すでに会議でくだされた決定だ。戦は最終的な手段にすぎん。まずはウェルドスラーブに行き、そこでジャリア側の出方を待つ。受け身ではあるが、今の我々には他の方法はない」
人々は黙り込んだ。こうして聞かされると、大陸の情勢の推移が、そうそう悠々閑々と構えていられるものではないと、あらためて実感せざるを得ない。
「陸路なら、即交戦。海路でウェルドスラーブに着いても、結局は交戦と……そういうことなんだろう。要は。なら俺だったら、さっさとロサリイト草原で戦いをおっぱじめたいけとね。まあ、お偉方の決めたことだ。こちとらはどうしたってそれに従うまでさな。せいぜい船の上で剣を磨いておくことにするよ」
そう言ってレークがにやりと笑うと、
「実に頼もしい」
フェーダー候がぱちぱちと手を叩いた。
「こういう戦士が我がウェルドスラーブにも欲しかった。どうだなレーク殿、いっそのこと我が国の騎士にならぬか。なんなら土地も名誉も地位も、そして望みの女でも、なんでも与えるぞ」
「うほっ、それはいいや」
半ば本気の顔つきで言ったレークを、横からじろりと女騎士が睨み付ける。
「いや、冗談。冗談だってば……」
呆れたようにセルディ伯は口をゆがめ、ブロテは笑いだした。
にやにやとしながら頭を掻く浪剣士のその目は、しかし、どこか戦いへの昂りをかみしめるように、鋭く遠くを見据えていた。
トレミリアの遠征隊一行は、その後も順調に街道を南下していった。
マクスタート川に沿ったこの街道は、南へ向かってゆるやかな下り勾配が続くので、徒歩のものでもさほど体力は消耗せずにすむ。寄り集めの傭兵たちをまとめる騎士たちにとっては、彼らから不平の声が上がらないのは、それだけでも大変有り難いことだった。傭兵たちの中には、他国から参加の騎士や、そこそこ名のある地方の貴族などもいたが、基本的には一般市民や、もとは浪剣士であるような連中が大半だったから、こうした規律を重んじる行軍にどれだけの者が粛々と従うかということに、とくに全体の指揮官でもあるセルディ伯などは内心で苦慮していたのであった。
しかし、行軍はまったく順調だった。街道を下る一行の列は綺麗なまでに整い、脱落するものもなく、やがて予定通り、夕刻にはその眼下にヨーラ湖の青い広がりを見ることになった。
南の国境ぞいに位置するヨーラ湖は、トレミリア最大の湖である。ガーマン山地を下ってきたマクスタート川は、この青き湖を中継するように、その水量を増して南海へと流れ込む。湖の南東にはアラムラ大森林……神々の深遠な静寂を太古より守り続ける深き森が延々と広がり、美しい大自然の景観を人々に見せつけている。
ヨーラ湖畔の都市サルマは、内陸の国家であるトレミリアにおいては最も大きな交易都市で、国内からの物産もその多くはいったんはこのサルマに集められ、船に積まれて川を下り、海路を通って西側の小都市国家地帯や、あるいは東のウェルドスラーブへと運ばれる。さらに言えば、トレミリアの東側に広がるロサリイト大草原を東西に横切る、ロサリイト街道の始点でもあるのも、このサルマの町であった。
つまり、この湖畔の町は、単なるトレミリアの一都市ではなく、海路へ出るための船の出発点であり、東側へ行くための陸路の入り口でもあるという、いうなれば「世界への玄関」のような都市であるのだった。かつてレークとアレンが、フェスーンでの大剣技会の噂を聞きつけ、トレミリアに最初に足を踏み入れたのも、ここサルマであったのだ。
「おお、ヨーラ湖だ。なんだか、久しぶりに見たって感じだな」
下りはじめた街道の先に、青々と広がるヨーラ湖と、夕日に照らされるサルマの街並みを見下ろして、レークはつぶやいた。かつてこの町にやってきた時には、まだ自分が旅の浪剣士でしかなかったことを、今は感慨深げに思い返すように、彼は、きらきらと光る湖面をまぶしそうに見つめた。
遠征隊一行は、そのまま街道ぞいにサルマの市門をくぐるかと思いきや、街道を外れて町を迂回しはじめた。どうやら、先頭の騎士たちが先導しているらしい。
「あれ、町には入らないのか?」
「いくら大都市のサルマとはいえ、三千人ぶんの宿屋はない。それに、騎士姿の我々が大挙して押し寄せ、無用に町の人々を驚かせるのもまずいだろう。今宵は町の外で野営になるな」
レークの横をゆくクリミナが言った。夕刻となって、遠くからでは誰とも判別できないだろうと、彼女は兜は外し、その顔をすっかりあらわにしている。
「なんだ、せっかくヨーラ湖名物のブラバスの串焼きを食えると思っていたのによ」
「なんだそれは?」
「知らないのか?旨いんだぜ。けっこうでっかい魚なんだけどよ、塩を付けた串焼きがこれまたうめえんだ。甘いタレを塗って固パンに挟んで食べるのもいいぜ。香草を忘れずに挟むとひときわ……うう」
湯気の立つ串焼きの香ばしい香りを想像し、レークはずるりと舌なめずりをした。
「よく知っているな。さすが旅をなりわいにしていた浪剣士」
「まあな。海のもの山のもの、湖のもの。一通りは味わったぜ。これから行くウェルドスラーブだと、そうだな……魚もうまいが、クオビーンて飲み物が最高だな。知ってるか?クオビーン」
「ああ。一度飲んだことがある。苦いやつだろう」
「そう。そこにクリームとか蜂蜜を入れたりすると、これが実にうまいのよ。ああ楽しみだ。クオビーンに、甘辛い揚げパンに、魚のから揚げ。それからきっといいワインも運ばれてくるだろう。なんたって騎士待遇だしな……むふふ」
未来の食べ物に思いを馳せるレークを横目に、馬上の女騎士はくすりと笑った。
遠征軍一行は、サルマの町の市壁をぐるりと迂回し、そこでいったん停止した。左手にサルマの町の市壁、前方にはヨーラ湖の広がりを黄昏色の空の下に見やりながら、馬を降りた騎士たちはそれぞれに腰を下ろして、長い騎乗で疲れた体を休めていた。だが、それから少しもたたぬうちに、「全員騎乗、このまま出発する!」という、せわしない伝令の声が上がった。
「なんだって?たった今着いたばっかだってのに、どういうことだよ?」
馬を降りてひと息ついていたレークは眉をひそめた。
クリミナは辺りを見回して、通り掛かった伝令を呼び止めた。だが伝令役の騎士は、命令を隊列に伝えて回る以外には何も聞かされてはおらず、「とにかく、すぐに出立するとのことです」と繰り返すだけで、また「全員騎乗!」と叫びながら隊列の後方へ走り去って行った。
再び騎乗した騎士たちは、不平をつぶやく傭兵隊の連中を叱咤しながら、また隊列を整えていった。
一行は再び動きだした。向かうのは正面のヨーラ湖の方向である。沈みはじめた夕日を背にして、隊列は長い影を伸ばして進んでいった。
ヨーラ湖畔の草地まで来ると、再び「全体停止」の触れが上がった。剣士たちは今度こそ休めるぞとばかりに、やれやれとその場に座り込んだ。
「まったく、どういうことだ?今夜はこの湖の真ん前で野営するってのかね」
そうぼやきながらレークは馬を降りた。
夕闇がおりはじめた湖畔に、騎士たちの命令の声や、傭兵たちのざわめきが、馬のいななきにに混じって上がり始め、辺りはにわかににぎやかになった。
レークは、眼前に広がるヨーラ湖の、そのどこまでも続く青い広がりを見渡した。
トレミリアで最大の湖、そしてリクライア大陸全体でも最大の部類に入るこの湖は、その湖畔に立つと、ほとんど海とみまごうばかりの巨大さだった。対岸は遠くかすんで見えず、風が水面を騒がせると、それがまるで波のようにも見える。全体的にひっそりとした静かな感じなのは、すでに夕暮れになり湖面に見える船の数も少ないからだろう。これが朝になれば、マクスタート川を伝って南海へ下る漁船や、逆にサルマに物資を運んでくる他国からの貿易船などが、その白い帆を競うようにして行き交う光景が見られるはずである。
「ああ、やっぱ空気がうまいや。この前ここに来たのは、もう五ヵ月も前だったか」
湖畔に立って、レークは気持ち良さそうに息を吸い込んだ。
ヨーラ湖を渡ってくる涼やかな風を感じながらここに立っていると、たった数カ月まえであるが、もうだいぶ昔のことのように思える事々……このサルマの町で剣技会の噂を知ったこと、そしてアレンと共に首都フェスーンへ赴き、様々な陰謀や暗躍の果てに剣技会で優勝したこと……それらがあらためて思い返される。それが今では、こうしてトレミリアの騎士となり、ウェルドスラーブへ向かう遠征軍の一員として再びこの湖を見ることになるとは。その変遷を感慨深げに思いながら、レークは暗くなりゆく湖面を眺めていた。
「なるほど。風が心地よいな」
そばに来たクリミナが、心地よさそうに髪をかきあげる。
「このサルマは、フェスーンよりもずっと海に近い。マクスタート川の流れとヨーラ湖の恵み、それに、アラムラ大森林の豊かな緑……、のんびりと暮らすには、ここはなかなかいい土地だろうな」
自らが守る王国の一都市を誇らしげに見渡し、彼女は言った。その横顔はいつになく美しく、湖畔の緑の背景にその白い騎士姿はよく映えた。
「ふむ。風景がいいと、女も綺麗に見えるもんだ」
「ほう、では殺風景な場所では、私も醜く見えるということか?」
「そ、そんなことは言ってねえよ」
レークはややぶっきらぼうに首を振った。
「そうか。ならいいが」
くすりと笑ったクリミナは、普段の彼女よりはずっと楽しげだった。心地よい風と空気、緑の森林と青い湖の美しい景観がしばし行軍の緊張を忘れさせるのだろうか、その微笑は柔らかで、ゆるやかに風になびく栗色の髪に手をやる様子は、とても女性らしく見えた。
「……」
レークはその女騎士の横顔を、まるで一幅の絵画をでも見るように、しばらくうっとりと見つめていた。
「問題が起こった」
集められた主立った隊長クラスの者たちを前にして、セルディ伯が苦々しく言った。
「船が足りない」
眉間に皺を寄せた伯は、いかにも苦渋の決断を迫られている指揮官然とした様子だった。そこにいたレークにブロテ、クリミナらも思わず顔を見合わせる。
「予定していた、ガレー船十隻、帆船五隻のうち、すぐに出せるのはガレー船五隻に帆船が三隻だけということなのだ。これでは三千人の兵を乗せてゆくことはまずできない。町の連中はあと三日待ってくれれば、ガレー船の方は残り五隻も完成するというのだが、帆船の方は分からないという。そこでこの際、漁船を借りることも考えたが、百人単位で乗り込めそうな船はどこにも見当たらない。つまり……我々は、さらに数日ここに留まるか、あるいは別のルートでウェルドスラーブまでゆくかの、そのどちらかを選択しなくてはならない」
人々を見渡して、セルディ伯は嘆息まじりにそう計画の変更を告げた。
「しかし、この町に留まるといっても、フェスーンから持参した食料には限りがありますし、数日とはいえ三千人の食料となると、サルマの町には大変な負担になりますな」
騎士ブロテの言葉に、セルディ伯もうなずく。
「それに、先程フェーダー侯ともお話ししたが、ここで数日も待っていられる余裕は我々にはない。ロサリイト草原にやらせていた斥候からの報告では、やはりジャリア軍はすでにウェルドスラーブの北端のバーネイに軍を進め始めているということだ。最悪、このままでは数日中には戦闘が始まりそうな情勢にもなってきた」
戦闘という言葉に、居並んだ騎士たちの顔が引き締まる。
「そこでだ、」
セルディ伯の声が響いた。
「我々は海路を断念し、ロサリイト街道からアラムラ街道とへ入る、陸路にてスタンディノーブルを目指すことにする」
一瞬、騎士たちからどよめきが起こるが、そこはみな隊長クラスの者たちであるので、余計に騒ぎ立てることもない。彼らを見回してセルディ伯は言葉を続けた。
「どうやら方策はこれしかない。このサルマで数日の時を無為に過ごすよりは、一日二日は海路よりも余計にかかるとはいえ、ロサリイト街道からアラムラ街道へ入って、スタンディノーブルを経由し、それから首都のレイスラーブへと向かうのが得策と思う。異論、疑問のある者はいるか?」
進み出たのはクリミナだった。
「宮廷騎士長どの、なにか?」
「はい、では……当初の予定では、このヨーラ湖から船で海上へ出てコス島に立ち寄り、そこで食料、物資の補給をするはずでしたが、もし陸路でアラムラ森林を越えるとなると、それもできません。兵たちの食料は無論、レイスラーブへ運ぶはずだった援助物資などはあきらめるということなのでしょうか」
「それだ。肝心なのは」
セルディ伯は大きくうなずいた。
「兵たちの食料に関しては、あと数日くらいはもつだろう。明日の朝すぐに出立すれば、翌々日の夕刻にはスタンディノーブルに着けるはず。それよりも重要なのは、我らがレイスラーブに入城して後のことだ。万が一籠城戦にでもなれば、兵たちを支える膨大な食料が必要になる。かえってトレミリアが援軍をやったことが、ウェルドスラーブの穀物を食い荒らしてしまうことにもなりかねない。そうならぬためにこそ、コス島で充分な糧食を積み、それと共にウェルドスラーブへ入りたい。その方針は今は変わらぬし、変えるつもりもない。だが、このとおり、ここには兵士たち全員を乗せてゆける船はないという。あるいは、この隊を海路と陸路の二つに分けるという方法も考えたが、それはやはり得策ではない。もしどちらかの合流が遅れた場合、万一すでに敵と交戦状態になっていたときには半数では心もとない。戦力をわざわざ分断するのは危険が大きすぎる。そこでだ……」
セルディ伯はいったん言葉をきって、人々を見渡すと、ひとつの提案を口にした。
フェーダー候の言葉通り、トレミリアでも指折りの騎士ブロテと、元は名もなき浪剣士であったレークが、こうして同じ目的を持つ遠征部隊の中で再会し、手を握り合うというのは、なんともドラマティックな光景であった。
「いやいや……なんとなれば、こちらに女騎士クリミナ殿もおられるのですから、名だたる三人の騎士ですな。これは……なんとも心強いことだ」
フェーダー候には、物語やドラマ的なものを賛美する気質があるらしい。すっかり感動した様子でそう付け足した。
「まったく。そう考えれば、この精鋭あらばジャリア軍も恐るるに足らずと、こういうわけですな」
つられたように言ったセルディ伯であったが、まだ対ジャリアについての言葉をおおやけに口にするのは尚早であったことに気づくと、慌てて口を閉じた。
「大丈夫。天幕の外までは聞こえてはおらんでしょう。それに、どのみちここに参加している騎士たちにも、事の成り行きと、目的とはもう薄々感じられているでしょうからな」
「ええ。ですが、やはりレード公にもくれぐれもと言われておりましたからな。トレミリア国内を出るまでは、これは極力ただの護衛部隊であって、ジャリアとの戦云々といったことは、とくに一般の兵の耳には届かぬようにしなくては。サルマの町に着く前に、騎士たちにもそれは徹底させるよう伝えておかないと」
「ですな。おそらくウェルドスラーブに入る頃には、この部隊の情報も、もう多くはジャリア側に悟られているでしょうが、少なくともそれまでは、トレミリアの出兵という事実は隠せるのならそれにこしたことはない」
ブロテの言葉に、クリミナとセルディ伯がうなずく。
「さて、これからの予定ですが」
セルディ伯はテーブルに周辺の地図を広げ、そこに記された街道を指でなぞりながら説明した。
「今日の夕刻までにはサルマに着けるかと思われます。そこで一泊し、翌朝にヨーラ湖から乗船してマクスタート川をくだって海に出る。船でいったんコス島に立ち寄って食料、その他必要物資を補給し、再び乗船してレイスラーブへ向かう……ということになります。数えて三日と半日ほどの行程ですな。なにかご質問は?」
「では」
「どうぞ、クリミナ殿」
「我々の人数に関しては、すでにサルマの町には連絡がいっているのでしょうから、騎士や兵士たち三千人が寝泊まりする場所についてはまあよしとして、問題は船ですが……」
「ヨーラ湖の港で、大型のガレー船を含む十隻がすでに完成したという報を受けています。
確かに、数についてははっきりとしなかったが、きっと問題はないかと」
セルディはやや楽観的に言った。
「ではそれに乗り込むとします。ところでガレー船であるからには漕ぎ手が必要です。そしてその人員となるのは、我等騎士たちということになる。騎士の中には……あるいは大半の傭兵たちは、ガレー船の漕手の経験がないかと思われますが、そのあたりの不安はどうなのでしょうか?」
「そうだな。俺もガレー船のあの重たい櫂を持ってみたことはあるが、ちゃんと漕いだ経験はない。あれはそうとうきついぜ」
レークの言葉に隣のブロテもうなずいた。
「確かに。なんといっても、トレミリアは内陸の国ですからな。まずガレー船に乗る経験などあまりない。ましてや、ウェルドスラーブへ行くのには、通常ならロサリイト街道を使って陸路でゆくのが最も早いわけですから」
「先日の、ロサリイト街道がジャリア軍によって封鎖されたという情報が、どうやら確かであるようなので、ウェルドスラーブへは海から行くか、そうでなければあるいは、アラムラ街道をゆくルートをとるかしかない」
地図を指さしながらセルディ伯が言った。
「アラムラ街道は……難儀ですな。最近は山賊なども多く出ると聞きますし、森林の中だけに、道もいりくんでいて、とても大軍の行軍には向かない」
「今のところ、ヨーラ湖から船でマクスタート川を下り、レイスラーブへ……あるいは潮と風向きによってはスタンディノーブルから上陸してもいい……そこから陸路でレイスラーブを目指すかということになる。そうなると、やはりこんなことなら、確かに早いうちから騎士たちにガレー船の訓練をさせておくべきだったとも思うが……それを今更言っても仕方ない」
セルディ伯は地図上をなぞって、ウェルドスラーブの北端を指した。
「最新の情報では、このバーネイ付近にジャリア軍が布陣したということだ。つまり、奴らはここを押さえることで、ロサリイト街道を封鎖し、事実上、我々トレミリアとセルムラードからのウェルドスラーブへの援軍を陸路では阻むことができるわけだ」
「この際、ロサリイト草原でジャリアと一戦交える、という手もありましたがな」
いかにも勇猛な戦士らしくブロテは言った。だが、セルディ伯は首を振った。
「これは陛下ともども、すでに会議でくだされた決定だ。戦は最終的な手段にすぎん。まずはウェルドスラーブに行き、そこでジャリア側の出方を待つ。受け身ではあるが、今の我々には他の方法はない」
人々は黙り込んだ。こうして聞かされると、大陸の情勢の推移が、そうそう悠々閑々と構えていられるものではないと、あらためて実感せざるを得ない。
「陸路なら、即交戦。海路でウェルドスラーブに着いても、結局は交戦と……そういうことなんだろう。要は。なら俺だったら、さっさとロサリイト草原で戦いをおっぱじめたいけとね。まあ、お偉方の決めたことだ。こちとらはどうしたってそれに従うまでさな。せいぜい船の上で剣を磨いておくことにするよ」
そう言ってレークがにやりと笑うと、
「実に頼もしい」
フェーダー候がぱちぱちと手を叩いた。
「こういう戦士が我がウェルドスラーブにも欲しかった。どうだなレーク殿、いっそのこと我が国の騎士にならぬか。なんなら土地も名誉も地位も、そして望みの女でも、なんでも与えるぞ」
「うほっ、それはいいや」
半ば本気の顔つきで言ったレークを、横からじろりと女騎士が睨み付ける。
「いや、冗談。冗談だってば……」
呆れたようにセルディ伯は口をゆがめ、ブロテは笑いだした。
にやにやとしながら頭を掻く浪剣士のその目は、しかし、どこか戦いへの昂りをかみしめるように、鋭く遠くを見据えていた。
トレミリアの遠征隊一行は、その後も順調に街道を南下していった。
マクスタート川に沿ったこの街道は、南へ向かってゆるやかな下り勾配が続くので、徒歩のものでもさほど体力は消耗せずにすむ。寄り集めの傭兵たちをまとめる騎士たちにとっては、彼らから不平の声が上がらないのは、それだけでも大変有り難いことだった。傭兵たちの中には、他国から参加の騎士や、そこそこ名のある地方の貴族などもいたが、基本的には一般市民や、もとは浪剣士であるような連中が大半だったから、こうした規律を重んじる行軍にどれだけの者が粛々と従うかということに、とくに全体の指揮官でもあるセルディ伯などは内心で苦慮していたのであった。
しかし、行軍はまったく順調だった。街道を下る一行の列は綺麗なまでに整い、脱落するものもなく、やがて予定通り、夕刻にはその眼下にヨーラ湖の青い広がりを見ることになった。
南の国境ぞいに位置するヨーラ湖は、トレミリア最大の湖である。ガーマン山地を下ってきたマクスタート川は、この青き湖を中継するように、その水量を増して南海へと流れ込む。湖の南東にはアラムラ大森林……神々の深遠な静寂を太古より守り続ける深き森が延々と広がり、美しい大自然の景観を人々に見せつけている。
ヨーラ湖畔の都市サルマは、内陸の国家であるトレミリアにおいては最も大きな交易都市で、国内からの物産もその多くはいったんはこのサルマに集められ、船に積まれて川を下り、海路を通って西側の小都市国家地帯や、あるいは東のウェルドスラーブへと運ばれる。さらに言えば、トレミリアの東側に広がるロサリイト大草原を東西に横切る、ロサリイト街道の始点でもあるのも、このサルマの町であった。
つまり、この湖畔の町は、単なるトレミリアの一都市ではなく、海路へ出るための船の出発点であり、東側へ行くための陸路の入り口でもあるという、いうなれば「世界への玄関」のような都市であるのだった。かつてレークとアレンが、フェスーンでの大剣技会の噂を聞きつけ、トレミリアに最初に足を踏み入れたのも、ここサルマであったのだ。
「おお、ヨーラ湖だ。なんだか、久しぶりに見たって感じだな」
下りはじめた街道の先に、青々と広がるヨーラ湖と、夕日に照らされるサルマの街並みを見下ろして、レークはつぶやいた。かつてこの町にやってきた時には、まだ自分が旅の浪剣士でしかなかったことを、今は感慨深げに思い返すように、彼は、きらきらと光る湖面をまぶしそうに見つめた。
遠征隊一行は、そのまま街道ぞいにサルマの市門をくぐるかと思いきや、街道を外れて町を迂回しはじめた。どうやら、先頭の騎士たちが先導しているらしい。
「あれ、町には入らないのか?」
「いくら大都市のサルマとはいえ、三千人ぶんの宿屋はない。それに、騎士姿の我々が大挙して押し寄せ、無用に町の人々を驚かせるのもまずいだろう。今宵は町の外で野営になるな」
レークの横をゆくクリミナが言った。夕刻となって、遠くからでは誰とも判別できないだろうと、彼女は兜は外し、その顔をすっかりあらわにしている。
「なんだ、せっかくヨーラ湖名物のブラバスの串焼きを食えると思っていたのによ」
「なんだそれは?」
「知らないのか?旨いんだぜ。けっこうでっかい魚なんだけどよ、塩を付けた串焼きがこれまたうめえんだ。甘いタレを塗って固パンに挟んで食べるのもいいぜ。香草を忘れずに挟むとひときわ……うう」
湯気の立つ串焼きの香ばしい香りを想像し、レークはずるりと舌なめずりをした。
「よく知っているな。さすが旅をなりわいにしていた浪剣士」
「まあな。海のもの山のもの、湖のもの。一通りは味わったぜ。これから行くウェルドスラーブだと、そうだな……魚もうまいが、クオビーンて飲み物が最高だな。知ってるか?クオビーン」
「ああ。一度飲んだことがある。苦いやつだろう」
「そう。そこにクリームとか蜂蜜を入れたりすると、これが実にうまいのよ。ああ楽しみだ。クオビーンに、甘辛い揚げパンに、魚のから揚げ。それからきっといいワインも運ばれてくるだろう。なんたって騎士待遇だしな……むふふ」
未来の食べ物に思いを馳せるレークを横目に、馬上の女騎士はくすりと笑った。
遠征軍一行は、サルマの町の市壁をぐるりと迂回し、そこでいったん停止した。左手にサルマの町の市壁、前方にはヨーラ湖の広がりを黄昏色の空の下に見やりながら、馬を降りた騎士たちはそれぞれに腰を下ろして、長い騎乗で疲れた体を休めていた。だが、それから少しもたたぬうちに、「全員騎乗、このまま出発する!」という、せわしない伝令の声が上がった。
「なんだって?たった今着いたばっかだってのに、どういうことだよ?」
馬を降りてひと息ついていたレークは眉をひそめた。
クリミナは辺りを見回して、通り掛かった伝令を呼び止めた。だが伝令役の騎士は、命令を隊列に伝えて回る以外には何も聞かされてはおらず、「とにかく、すぐに出立するとのことです」と繰り返すだけで、また「全員騎乗!」と叫びながら隊列の後方へ走り去って行った。
再び騎乗した騎士たちは、不平をつぶやく傭兵隊の連中を叱咤しながら、また隊列を整えていった。
一行は再び動きだした。向かうのは正面のヨーラ湖の方向である。沈みはじめた夕日を背にして、隊列は長い影を伸ばして進んでいった。
ヨーラ湖畔の草地まで来ると、再び「全体停止」の触れが上がった。剣士たちは今度こそ休めるぞとばかりに、やれやれとその場に座り込んだ。
「まったく、どういうことだ?今夜はこの湖の真ん前で野営するってのかね」
そうぼやきながらレークは馬を降りた。
夕闇がおりはじめた湖畔に、騎士たちの命令の声や、傭兵たちのざわめきが、馬のいななきにに混じって上がり始め、辺りはにわかににぎやかになった。
レークは、眼前に広がるヨーラ湖の、そのどこまでも続く青い広がりを見渡した。
トレミリアで最大の湖、そしてリクライア大陸全体でも最大の部類に入るこの湖は、その湖畔に立つと、ほとんど海とみまごうばかりの巨大さだった。対岸は遠くかすんで見えず、風が水面を騒がせると、それがまるで波のようにも見える。全体的にひっそりとした静かな感じなのは、すでに夕暮れになり湖面に見える船の数も少ないからだろう。これが朝になれば、マクスタート川を伝って南海へ下る漁船や、逆にサルマに物資を運んでくる他国からの貿易船などが、その白い帆を競うようにして行き交う光景が見られるはずである。
「ああ、やっぱ空気がうまいや。この前ここに来たのは、もう五ヵ月も前だったか」
湖畔に立って、レークは気持ち良さそうに息を吸い込んだ。
ヨーラ湖を渡ってくる涼やかな風を感じながらここに立っていると、たった数カ月まえであるが、もうだいぶ昔のことのように思える事々……このサルマの町で剣技会の噂を知ったこと、そしてアレンと共に首都フェスーンへ赴き、様々な陰謀や暗躍の果てに剣技会で優勝したこと……それらがあらためて思い返される。それが今では、こうしてトレミリアの騎士となり、ウェルドスラーブへ向かう遠征軍の一員として再びこの湖を見ることになるとは。その変遷を感慨深げに思いながら、レークは暗くなりゆく湖面を眺めていた。
「なるほど。風が心地よいな」
そばに来たクリミナが、心地よさそうに髪をかきあげる。
「このサルマは、フェスーンよりもずっと海に近い。マクスタート川の流れとヨーラ湖の恵み、それに、アラムラ大森林の豊かな緑……、のんびりと暮らすには、ここはなかなかいい土地だろうな」
自らが守る王国の一都市を誇らしげに見渡し、彼女は言った。その横顔はいつになく美しく、湖畔の緑の背景にその白い騎士姿はよく映えた。
「ふむ。風景がいいと、女も綺麗に見えるもんだ」
「ほう、では殺風景な場所では、私も醜く見えるということか?」
「そ、そんなことは言ってねえよ」
レークはややぶっきらぼうに首を振った。
「そうか。ならいいが」
くすりと笑ったクリミナは、普段の彼女よりはずっと楽しげだった。心地よい風と空気、緑の森林と青い湖の美しい景観がしばし行軍の緊張を忘れさせるのだろうか、その微笑は柔らかで、ゆるやかに風になびく栗色の髪に手をやる様子は、とても女性らしく見えた。
「……」
レークはその女騎士の横顔を、まるで一幅の絵画をでも見るように、しばらくうっとりと見つめていた。
「問題が起こった」
集められた主立った隊長クラスの者たちを前にして、セルディ伯が苦々しく言った。
「船が足りない」
眉間に皺を寄せた伯は、いかにも苦渋の決断を迫られている指揮官然とした様子だった。そこにいたレークにブロテ、クリミナらも思わず顔を見合わせる。
「予定していた、ガレー船十隻、帆船五隻のうち、すぐに出せるのはガレー船五隻に帆船が三隻だけということなのだ。これでは三千人の兵を乗せてゆくことはまずできない。町の連中はあと三日待ってくれれば、ガレー船の方は残り五隻も完成するというのだが、帆船の方は分からないという。そこでこの際、漁船を借りることも考えたが、百人単位で乗り込めそうな船はどこにも見当たらない。つまり……我々は、さらに数日ここに留まるか、あるいは別のルートでウェルドスラーブまでゆくかの、そのどちらかを選択しなくてはならない」
人々を見渡して、セルディ伯は嘆息まじりにそう計画の変更を告げた。
「しかし、この町に留まるといっても、フェスーンから持参した食料には限りがありますし、数日とはいえ三千人の食料となると、サルマの町には大変な負担になりますな」
騎士ブロテの言葉に、セルディ伯もうなずく。
「それに、先程フェーダー侯ともお話ししたが、ここで数日も待っていられる余裕は我々にはない。ロサリイト草原にやらせていた斥候からの報告では、やはりジャリア軍はすでにウェルドスラーブの北端のバーネイに軍を進め始めているということだ。最悪、このままでは数日中には戦闘が始まりそうな情勢にもなってきた」
戦闘という言葉に、居並んだ騎士たちの顔が引き締まる。
「そこでだ、」
セルディ伯の声が響いた。
「我々は海路を断念し、ロサリイト街道からアラムラ街道とへ入る、陸路にてスタンディノーブルを目指すことにする」
一瞬、騎士たちからどよめきが起こるが、そこはみな隊長クラスの者たちであるので、余計に騒ぎ立てることもない。彼らを見回してセルディ伯は言葉を続けた。
「どうやら方策はこれしかない。このサルマで数日の時を無為に過ごすよりは、一日二日は海路よりも余計にかかるとはいえ、ロサリイト街道からアラムラ街道へ入って、スタンディノーブルを経由し、それから首都のレイスラーブへと向かうのが得策と思う。異論、疑問のある者はいるか?」
進み出たのはクリミナだった。
「宮廷騎士長どの、なにか?」
「はい、では……当初の予定では、このヨーラ湖から船で海上へ出てコス島に立ち寄り、そこで食料、物資の補給をするはずでしたが、もし陸路でアラムラ森林を越えるとなると、それもできません。兵たちの食料は無論、レイスラーブへ運ぶはずだった援助物資などはあきらめるということなのでしょうか」
「それだ。肝心なのは」
セルディ伯は大きくうなずいた。
「兵たちの食料に関しては、あと数日くらいはもつだろう。明日の朝すぐに出立すれば、翌々日の夕刻にはスタンディノーブルに着けるはず。それよりも重要なのは、我らがレイスラーブに入城して後のことだ。万が一籠城戦にでもなれば、兵たちを支える膨大な食料が必要になる。かえってトレミリアが援軍をやったことが、ウェルドスラーブの穀物を食い荒らしてしまうことにもなりかねない。そうならぬためにこそ、コス島で充分な糧食を積み、それと共にウェルドスラーブへ入りたい。その方針は今は変わらぬし、変えるつもりもない。だが、このとおり、ここには兵士たち全員を乗せてゆける船はないという。あるいは、この隊を海路と陸路の二つに分けるという方法も考えたが、それはやはり得策ではない。もしどちらかの合流が遅れた場合、万一すでに敵と交戦状態になっていたときには半数では心もとない。戦力をわざわざ分断するのは危険が大きすぎる。そこでだ……」
セルディ伯はいったん言葉をきって、人々を見渡すと、ひとつの提案を口にした。
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