太陽の剣士さん~ライファンの冒険

緑川らあず

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11.サリエルとの対決

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 元領主だった怪物のあとをついて、ぐるぐると塔の螺旋階段を上り、たどり着いたのは城の最上階に近い一室だった。
 ライファンが扉の前に立つと、ぎしぎしと音がして重々しく扉が内側から開かれた。五感の全てが「この部屋に入るな」と警告をしていた。髪が逆立ち、首の後ろがちりちりとする気がした。
  室内に足を踏み入れると、冷たく、よどんだ空気が彼を包んだ。
「ようこそ」
  ライファンを迎えたのは、想像に反して綺麗な響きの声だった。
「お待ちしていたよ。太陽神の血を引く少年」
  すけるような淡い金髪の、秀麗な若者が部屋の中央に立っていた。紫色の目が興味深そうにくるめき、こちらを見ている。
「私がバルサゴ王国第一王子、サコース・デル・バルサゴス」
「アダラーマ王国近衛騎士、ライファンです」
  王子とライファンの目が合った。
  ライファンは注意深く室内を見渡した。黒い絨毯に黒のビロードばりの壁と天井。暗い室内を照らすのは大きな窓からのぞく月明かりだけだった。両側の壁には、まるで彫像のようにぴたりと動かない甲冑の騎士が居並んでいる。王子の後ろの豪奢な椅子に座る王女の姿を見つけると、ライファンは一瞬目を見開いた。
「どうぞ近くへ」
  王子に手招きされ、ライファンは慎重にそちらに近づいた。見ると、いつの間にか彼を案内してきた化け物は、もとの領主の姿に戻っていて、王子の側にひざまずいていた。ライファンの視線は、どうしても椅子に座ったまま動かない王女の上に注がれた。その様子を察して王子は言った。
「安心するがいい。殺してはおらぬ。殺してはな……」
「その王女様が本物だという証拠はあるのですか。それもまた骸骨だということは」
「疑り深いことだ。証拠などはないが、もはやつまらぬまやかしなどは不要。疑うのなら君自身が近づいて確かめるがよかろう」
  ライファンは剣を手にしたまま、用心深く王女の椅子に近づいた。横目で王子の動きを確認しながら、いつでも剣が抜き放てるように。
「そんなことはしないさ」
  王子はライファンの心を読んだようにうすく笑った。
「もはや君はここに来た。私の結界に入った以上はもう帰ることはできないのだから。急ぐこともあるまい」
「……」
  ライファンは王子から目をそらした。目の前には王女が座っている。
「王女様……」
  クシュルカ王女は椅子にまっすぐ腰かけ、その顔は正面を向いて目は見開いたままだ。
「王女様……クシュルカ様」
  ライファンの呼びかけにもぴくりとも動かない。眠っているのとも違うようだ。
 王女の手に触れると冷たくはなかった。確かに生きている。その瞳を覗き込むと、まばたきもせぬ目の中にかすかな光がともっている。ライファンは息を呑んだ。
 それは間違いなく本物のクシュルカ王女だった。そして、それはそのまま動かぬ彫像にされたかのように、生きたまま時を止められた姿だった。
  ぶるぶるとかすかに震えるライファンを見下ろして王子は言った。
「どうしました?再会の感激で涙を流しておられるのかな?」
「王女様を……クシュルカ様に何をした……」
  王女の手を握りしめたライファンが、絞り出すような声で言った。
「ふむ。本来なら君をここにおびき寄せた段階で殺すはずだったのだが、それもまた惜しい……なにしろこの美しさ、気高さには我といえども感服するものがある」
  その顔に魔物じみた笑みを浮かべ、王子は説明した。
「そこで我と共に生きよと永遠の命を授け、我の妃として迎えようとしたが、その頑固な娘は頑として聞かず。……いくら我々魔の者とはいえ、相手の身も心も吸収するにはその精神の許容がなくてはならぬのでな。つまりそれには誓約の言葉と行為がなされねばならん。しかし……」
  その声が変質しはじめていた。
「王女はそれを拒んだ。我のものになることを。永遠の命を。この大陸全ての征服を我と分かち合うことを。……それで、そうしてやった」
  口元ががっと開かれた。残忍な笑みが王子の顔を恐ろしいものにしていた。
「生きたまま、人形のように動けなく、言葉も発せず、相手を見ることもできない。永遠にそこに座ったまま、美しい彫刻のように我を楽しませるおきものよ。そしてこの魔法は決して解けぬ。何故なら誰であろうと我を殺すことはできぬからな」
  くっくっくっと笑いをもらす。徐々にその声には低くゴロゴロとした響きが入り交じり、やがて不気味な唸りのようになった。
「たとえ、お前でもだ。太陽神のこせがれ。みたところお前の剣だけはすでに力を持ったようだが、それだけでは所詮我には勝てぬ」
「お前は……お前たちはなにものだ」
  ライファンは変貌をはじめる王子を睨み、叫ぶように言った。
「太陽神とは……なんのことだ。僕はそんなものは知らない」
  とたんに、「フハハハハハ」と頭のなかに響きわたる、恐ろしい笑い声がした。
(それでよい。それでこそ我の思うがまま。お前の体ごとその力を呑み込んでくれるわ)
  王子の体は、まるでその内側からつき動かされているかのように、がくがくと揺れ出していた。それとともに「ごごごごご」と部屋中が、そしてこの城そのものが揺れているような錯覚があった。いや実際に揺れていたのかもしれない。
「うわっ」
  いきなり天井が吹き飛んだ。
  冷たい風が強烈に吹きつける。塔の最上部にあるこの部屋を、高く昇った月が照らした。
  ライファンは立っていられずに、たまらず床にひざをついた。何かが沸き立つような、巨大なものが地の底から現れるかのような、すさまじい「気」が感じられる。
  目の前で、ぼこっと音がして、王子の体が変形を始めていた。その背中から翼のようなものが突き出た。
「ぐぐぐごごぉぉ」
  雄叫びのような声が部屋中に響きわたり、王子の頭からは、なにかが生えてゆく。
  「ががおおおおおぉぉ」とつんざくような叫びが上がった。
  恐ろしいまでの圧迫感と、これまでに感じたこともない邪悪な「何かが」空間に立ちいでたかのような衝撃を、ライファンは感じていた。
 そして、唐突に振動が止んだ。
  剣をついてかろうじて体を支えていたライファンが顔をあげる。
 そこに、巨大なものがいた。
  青々とした鱗に覆われた……それは、翼の生えた竜だった。
  長い首、赤く光る一対の目。頭からは鋭い角が突き出し、その口が開かれると恐ろしげな牙が顔を覗かせた。背中には黒い大きな翼。先のとがった長い尾にもびっしりと鱗が光っている。
 二本足で立つその様子は、竜そのものというよりは竜人というような姿だった。両腕は人のものとさほど変わらぬ大きさで、指の先に長い爪が生えている。
(我はサリエル)
  明らかに知性のある言葉で、竜は低く唸るように言った。その声はライファンの頭の中に直接聞こえてきた。
(神の力を持つもの)
  大きさは人の三倍はあるだろう。青黒い体に黒い翼を生やした竜人が、ライファンを見下ろして立っている。
「神……だって?」
(そう。我は月と闇夜の魔力を持つもの。つまり太陽のかけらたるお前とは正反対の存在よ)
  ライファンは竜人を見上げた。
「太陽神とか太陽のかけらとか、そんなものは知らないが、ようするにお前たちは最初から王女様ではなく、僕が狙いだったということなのか?」
(その通りよ。この王女はただの下界の女にすぎん。たとえ魂がいかに高貴で美しかろうとな。そんなものは我等にとっては従属させる対象物でしかないのだ。このバルサゴの国のようにな)
  低い笑い声が部屋中に響いた。
(人間などじつにたわいもない。この国の全ての人間の魂を呑み込み、支配するまでにほんの数刻もかからなかったわ。それもすべてはお前をここに来させるためだけにしたことだ。つまりお前のためにこのバルサゴは滅び、こうして王子は我の仮の体として殻だけの存在となった。国王もその他全ての騎士たちも今では皆骸骨よ。すべてが我の意のままに動く人形となった。お前のせいでな。そしてまたここに座る王女も……)
  竜人の言葉を聞くうちにライファンの顔が、苦悶に歪んだ。
「僕のせいで……僕一人のために……王女様も……この国もみな……」
(どうした?自責の念に苛まれたか?ならばもはや他に犠牲を出すいわれもあるまい。今ここでお前が我に従属を誓い、その体も心も我に与えると誓うなら、我もこれ以上人間を殺すまい。この大陸から手を引いてもよいぞ)
  ぶるぶるとライファンは身体を震わせていた。
(どうした。早く我の前にひざまずき、自分は身も心もあなたのものだと言え。全てをこのサリエルに与えると、言うのだ!)
  魔神サリエルの言葉など聞こえていないように、ライファンは頭を抱えたままぶるぶると震えていた。
「僕が……僕が……皆を……王女様を……僕のせいで……僕が、僕が!」
  ライファンはやにわに絶叫した。
「わああああっ!」
  そして、やにわに剣を振り上げ、竜人に斬りかかっていた。
「うわあああああっ」
  思い切り飛び上がり、真上から剣を叩き下ろす。竜人はよけもせずそれを受けた。
 固い鱗に剣が当たり、火花が散った。
 ダメージを与えた手ごたえはなかったが、かまわず狂ったようにライファンは剣を振り下ろし続けた。
 ガッ、ガガッと鈍い響きが何度も上がった。だが竜人の体はびくともしない。
 その鱗に剣先はすべてはじかれ、ライファンは何度も吹っ飛ばされた。
(愚か者が……)
 唸りのような笑いが響く。
(いくらスカイソードであろうと、そこに宿る力をお前が信じなくてはただのなまくらにすぎぬ。しかも……いまは夜)
  今度は竜人が動いた。起き上がって再び打ちかかるライファンを、その長い尾を振って軽々とはじき飛ばした。
「ぐっ」
  手ひどく壁に叩きつけられて、思わずライファンは呻いた。
(今は夜。そして、月は我が力の源。お前は我に勝てぬ。太陽の子よ)
  竜人の頭上に青白い月が光っている。天井の抜けた室内に、冷たい風が吹き抜けてゆく。
「さすがはサリエル様。太陽神のこせがれなど敵ではありませんな」
  パチパチと領主……魔物ダイモンが手を叩いた。
(お前はどうあっても我には勝てぬ)
「く……」
(あきらめろ。お前さえ我のものになるというのなら、この王女の命だけは助けてやる。それに……そうだ。これを見るがいい)
  突如空中に浮かび上がった映像を、ライファンは痛みに顔をゆがめながら見つめた。
「これは……」
「空の目ですよ」
  ダイモンが解説した。
 そこに映し出されたのは、まぎれもなくアダラーマ王国の、それもライファンにも見覚えのある王宮の光景だった。しかしその映像に映っていたのは、夜だというのに王宮の周りで赤々と燃えている火だった。そしてその画面が徐々に映像を拡大してゆくにつれ、その惨状が明らかになった。
「これは……アダラーマが……燃えている」
  それは大規模な戦いだった。彼もよく知る王国の甲冑を着た騎士たちが、ぞろぞろと押し寄せてくる敵軍と激しく戦っている。その敵軍の兵士がすべて骸骨であることを、ライファンはすぐに見てとった。
「ちなみに、この映像は今現在のもの、実にタイムリィなものですよ。このサリエル様が空の目を飛ばして、それをじかにここに映しているんですから」
  得意そうにダイモンが答えた。
 ライファンにはそれどころではなかった。画面を見ていると、アダラーマの騎士たちは大変な苦戦をしいられ、今や敵軍は都市内を占拠し、さらに王宮を取り囲みつつあることが分かった。王宮内には市民たちが逃げ込んでいて、大写しにされた映像には泣き叫ぶ女たちや子供たち、そしてそれを守ろうと壁をつくり、敵骸骨兵に向かってゆく騎士たちの必死の表情さえも映し出されていた。
  それは絶望的な戦いに見えた。骸骨の兵たちは、斬られても斬られてもまた、機械仕掛けの人形のように恐怖することなく前進し続けている。そして王宮を守っている騎士たちは、いくら叩き伏せ、切り捨てても、のろのろとだが確実に押し寄せる波のような敵兵に対し、しだいにその防衛の輪を狭めさせられていた。今や最後の砦は小高い丘の上にある王宮の城壁のみだった。市街地はすでに骸骨たちに埋めつくされ、火をかけられ燃え上がっている。そしてまさに今、骸骨兵たちは王宮の城壁すべてに取り付いて、門を破り、城内になだれ込もうとしていたのだ。
  ライファンは見た。空中から映されたその城壁内で戦う騎士たちの映像のなかに、それと分かる彼の友人の女騎士の姿を。
「レアリー!」
 思わず声を上げた。
  城門や穴の開いた城壁からわらわらと進入してくる骸骨たちを、騎士たちは手分けして中に入れるまいと戦っていたが、レアリーもその一人だった。剣をとり、いさましく敵兵士に斬りかかってゆく。傷のついた兜の中で必死に歯を食いしばり剣を振り上げる彼女の姿に、ライファンはぎゅっと拳を握りしめた。もちろんレアリーだけではなく、その中には彼の知る騎士隊の面々が何人もいた。皆どこかに怪我を負い、体のあちこちから血を流しながら、押し寄せてくる骸骨兵たちに勇ましく立ち向かっていた。
「……くそ」
  ライファンは歯を食いしばった。今ここにいて、映像を見ている自分には何もすることができないのだ。
  唐突に、はたと映像が消え、しばらくすると竜人の目に光が戻った。
(……どうだ?これを見てもまだ我に立ち向かおうというのか)
  「空の目」といわれる力はかなりのエネルギーを使用するのか、サリエルの体はするすると小さくなり、いままた竜人からもとの王子の姿へと戻っていた。しかし背中からは黒い翼が生えたままで、王子の頭はどことなく尖っていて、その口からは獰猛な牙が覗いていた。
「ふむ。力を休めるときはこの体の方が都合がよい。どちらにしろ、お前のその様子ではもう、この我に逆らおうという気は失せたようだしな」
  王子は、いくぶん優しげな口調で言った。
「どうだ、ライファン。いや……太陽神の力をもつもの、ライファーンよ」
「……」
「このサリエルに全てを委ねると誓うか?今ならまだ間に合おう。この王女の命も、あの王国も、お前の返事次第で助けてやる。お前さえ手に入れればあのようなちっぽけな国にはもう用はない」
  ライファンは黙ったまま、じっとうなだれていた。その手がかすかに震え、手にした剣の先が床に当たってかちかちと鳴った。
「……本当に、僕のせいなのか」
 絞り出すような声。
「僕さえ、言うことを聞くなら、他の皆は……王女様も、レアリーも、アダラーマの国も助かるというのか」
「その通りだ。約束しよう」
「……わかった」
  ライファンは顔を上げた。肌はずいぶん蒼ざめ、その眼の光は弱かった。
「ただ、一つだけ教えてくれ」
「ふむ」
「……僕は、僕はいったい何者なんだ。お前たちがそれほどまでに僕を……太陽神の力というのを欲しがるのは何故だ」
「いいだろう」
  王子はアルカイックににやりと笑った。
「その前にお前の持っているスカイソードをこちらに投げ捨てろ」
  ライファンは従った。城に入るときに聞こえたあの「声」が言った(スカイソードをけっして手放してはいけない……)という言葉が一瞬頭によぎったが仕方がなかった。
  ライファンは剣を床に投げた。王子はそれを自分の後ろに蹴飛ばした。青く輝いていた剣から光が消えた。
「これでよい。スカイソードなどはどうでもよい。重要なのはお前自身の力の方なのだからな、ライファーン」
  もはや恐れるに足らずといった足取りで、つかつかとライファンに近づき、王子はまっすぐその顔を近づけた。
「お前は太陽神の息子。いや正確には太陽神の父たる天帝の後継者、というべきかな」
「天帝……」
  王子はうなずいた。
「天帝とは、人間どものいう神たる存在よ。この大陸の人間どもの名ではデッラ・ルーナと呼ばれ、我々はユピテルと呼ぶもの。しかしそれはシンフォニアのみならず、この惑星全てを司る神だ。天帝は、十二の星座と三十六の精霊を治め、それぞれの部署に個別の神を置き、時と事象を運用する。太陽神もその一人だ。そしてお前はその太陽神の力を受け継いだ者」
「ぼ、僕が?」
「私が知っているのは、お前が名義上の父たる太陽神に背き、その罪により記憶と力を封印され地上に落とされたということだ。そして奴隷として人間に買われ、その罪をつぐなうことを定められた。お前が今投げ捨てた剣は、お前が太陽神によって地上に落とされる際、天帝が密かにその力を込めて与えた剣。天帝の剣スカイソードだ」
「スカイ……ソード」
「さよう。そしてそのおかげで、我はお前の存在をこの地上で発見することができた。いくら力を失い、人間にまじっていても、その剣の一瞬の輝きは、たとえどこにいても我にはいまいましいほどにまぶしく見えるのでな。つまり天帝の下した仁恕の結果が、皮肉にもこの我をして、このようにお前を手中にする機会を得たわけだな」
  王子は愉快そうに低い笑いをもらした。
「そして我はサリエル。もとは天帝に仕えたもの。しかし今は……奴の治めるこの地上を逆に支配してやることに決めた。復讐だ」
「復讐……」
「そう。もとはれっきとした月神たるこの我をおしのけ、天帝は自分の快楽のため女神をその位につけた。そしてこのサリエルをヘリコンから追い出したのだ。怒りと復讐にかりたてられ、我は魔神となり地上に降りた」
  そう話す王子の目が、赤紫に爛々と光った。
「月と夜の魔力を持つ我。足りないのは陽の力。お前を呑み込めばそれが手に入る。そうして我は天帝と戦う力を得る。ついにこの時がきた……」
  王子の体からすさまじいほどの邪気が吹き上がった。思わずライファンは後ずさりしたが、王子は鉤爪の手を伸ばし、ライファンの肩を掴んで強引に引き寄せた。
「さあ、物語は終わりだ。誓え、ライファーン。我のものになると」
  恐るべき妖気を前にして、ライファンはくらくらとなった。王子の双眸が彼を捕まえ、かっと開かれたその口には暗黒の夜空が広がっているように見えた。
  もはや、抵抗のしようもなかった。
 たとえ自分がなんであろうと、たとえこの魔物の言うとおりに、自分には太陽神の力があり、この怪物がそれを呑み込んで強大になろうとしていたとしても、もうどうでもよかった。王女様が助かるのなら、レアリーが、アダラーマの人々が助かるのであれば、それでよかった。
「誓え。ライファーン。お前は我のものか?」
「ち……誓う……」
「お前の……ものだ」
  ぼんやりとした意識の中でライファンはつぶやいた。これでよいのだ。これで。
「よかろう。では誓約の儀式だ。お前の魂をいただく」
  王子の口が大きく開かれると、鋭い牙がのぞいた。その口をライファンの喉元に当てる。
(王女様……レアリー……みんな……)
  ライファンはかべてをあきらめた。
 そして目を閉じた。
  王子の牙がのどに食い込みはじめる。
  そのとき
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