無能だと追放された「雑用係」のハル、現代の知恵(ライフハック)を駆使したら、呪われた魔王城が聖域化して伝説の賢者と呼ばれ始めた

ユネ

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第1話:その「呪い」は、ただの油汚れです


​「――ハル。君のような無能な掃除係は、我が勇者パーティーには必要ない。今すぐ出て行ってくれ」
​金髪の勇者が、汚れた靴のままで豪華な絨毯を踏みつけながら言い放ちました。
私は手に持ったハタキを見つめ、静かに息を吐きます。
​「……そうですか。ですが、この拠点のメンテナンスを私以外ができるとは思えませんが」
「フン、たかが掃除だろう? 代わりなどいくらでもいる。君は魔法も使えない、ただの『知識オタク』ではないか」
​私は反論するのをやめました。
彼らは知らないのです。私が前世で「家事代行サービスのプロ」として、あらゆる汚れと戦ってきたライフハックの求道者であることを。
​私は静かに荷物をまとめ、ギルドの掲示板で見つけた「異様な安値で売りに出されている物件」へと向かいました。
​そこは、かつて魔王の軍勢が使っていたとされる、薄暗い古城でした。
壁には黒ずんだシミが広がり、不気味なオーラを放っています。村人たちは「魔王の呪いだ」と恐れ、誰も近づきません。
​「……なるほど。これが『呪い』の正体ですか」
​私は壁に指を這わせ、その感触を確かめました。
粘り気があり、鼻を突くような酸っぱい臭い。魔力測定器は異常な数値を叩き出していますが、私の目には別のものに見えています。
​これは呪いなどではなく、「長年放置され、酸化して固まった魔獣の脂」です。
​「魔法で吹き飛ばそうとするから、魔力に反応して余計にこびりつくんです。こういう時は……」
​私はカバンから、道中で調達しておいた「あるもの」を取り出しました。
重曹(に見える鉱物の粉)と、クエン酸(を含んだ果実の汁)です。
• ​まず、重曹に少量の水を混ぜた「重曹ペースト」を壁に塗り込みます。これで酸性の油汚れをじっくり分解します。
• ​しばらく置いた後、その上からクエン酸水をスプレーします。
​シュワシュワッ、と心地よい音を立てて白い泡が立ち上がりました。
中和反応によって発生した細かな炭酸ガスの泡が、分解された汚れを壁の隙間から物理的に浮かせ、押し出していきます。
​「あとは、浮いた汚れを中和された水ごと拭き取るだけです」
​一拭きした場所からは、鏡のように美しい白大理石が顔を出しました。
それと同時に、城全体を覆っていた重苦しい空気が一変します。汚れに溜まっていた澱んだ魔力が浄化され、窓から差し込む日光がキラキラと反射し始めました。
​「ふむ。やはり、中和のタイミングを合わせればライフハックは異世界でも無敵ですね」
​私が満足げに頷いていると、背後からガシャリと鎧の音がしました。
振り返ると、そこには腰を抜かした様子の騎士団の少女が立っていました。
​「な……!? 伝説の聖騎士たちが束になっても解けなかった『魔王の呪壁』を……ただの粉と水で消したというのか……!?」
​どうやら、また少しやりすぎてしまったようです。

今回のライフハック:【重曹ペースト×クエン酸のコンボ】
​解説: 最初から混ぜてしまうと中和されて意味がなくなります。まず重曹(アルカリ性)で汚れをゆるめ、後からクエン酸をかけることで、発生する泡の力で汚れを剥ぎ取るのがコツです。最後に水拭きすれば、ベタつきも残らずピカピカになります。
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