無能だと追放された「雑用係」のハル、現代の知恵(ライフハック)を駆使したら、呪われた魔王城が聖域化して伝説の賢者と呼ばれ始めた

ユネ

文字の大きさ
5 / 45

第5話:伝説の守護者、食用油で目覚める

「……ハル様、これはこの城の守護兵『アイアンゴーレム』です。ですが、見ての通り数百年前に魔力が尽き、今やただの鉄の塊。動かすには国家予算並みの魔力石が必要と言われています」
​カレンが指し示したのは、城の地下室に鎮座する巨大な鋼鉄の人形でした。
全身が赤錆(あかさび)に覆われ、関節部分は固着して、指一本動かせそうにありません。
​「なるほど。国家予算、ですか。……私なら市場の買い物ついでに直せそうですが」
「えっ、今なんと?」
​私はカレンの驚きを背に、カバンから「安価な食用油」と「使い古した歯ブラシ」、そして「細い針金」を取り出しました。
• ​まず、関節の隙間にたっぷり油を注します。これは魔法の伝達を妨げている「物理的な摩擦」を取り除くためです。
• ​次に、魔法陣が刻まれた胸のプレートの隙間に針金を差し込み、詰まっていた埃を「かき出し」ます。
• ​最後に、錆びついた接続部に油を塗り、布でひたすら磨き上げました。
​「カレンさん、少しだけ魔力を流してみてください。ほんの、指先に灯す程度の火種でいいですよ」
「そ、そんな微々たる魔力では、起動はおろか火花すら……。……えいっ」
​カレンが半信半疑で指を触れた瞬間。
ガコンッ、と重厚な金属音が地下室に響き渡りました。
​「……再起動……完了。主(マスター)、命令を……」
​錆びついていたはずの巨体が、驚くほど滑らかに動き出したのです。
​「な……ななな、なぜ!? 伝説の魔導技師でも匙を投げたゴーレムが、そんな安物の油で!? 聖遺物級の魔力源もなしに動くなんてあり得ません!」
​「どんなに強力な魔力があっても、関節が錆びて物理的に固まっていれば動きませんよ。私はただ、『詰まり』を取って滑りを良くしただけです。これで、この子は消費電力……いえ、消費魔力100分の1で動く『省エネモデル』になりました」
​ゴーレムは私の手元にある油の瓶を見て、心なしか嬉しそうに目を光らせました。
「掃除、洗濯、料理……ハル様の知恵を、実行します」
​こうして、魔王城に「ライフハック・メイド(鋼鉄製)」が加わったのでした。
​その頃、勇者パーティーは。
​「くそっ、この聖剣、サビて抜けないぞ!? 誰か研ぎ師を呼んでこい!」
「勇者様、研ぎ師はみんな、ハル様がいる魔王城に『伝説の潤滑油』を求めて弟子入りしに行ってしまいましたわ!」
​彼らは、剣を抜くために必要なのが「神の祝福」ではなく、ただの「油」であることに、まだ気づいていないようでした。
​今回のライフハック:【固着したネジや関節の潤滑】
• ​解説: 動かなくなった金属の関節やネジは、無理に回すと壊れます。食用油や潤滑剤を染み込ませて時間を置くことで、隙間に油が浸透し(毛細管現象)、摩擦が劇的に減って動くようになります。
• ​埃の除去: 精密機械(魔導具)の不調の多くは、単なる埃による接触不良や熱のこもりです。掃除するだけで直るケースは意外と多いのです。
感想 0

あなたにおすすめの小説

「お前がいると息が詰まる」と追放された令嬢——翌週から公爵家の予定が全て狂った

歩人
ファンタジー
クラリッサは公爵家の日程管理を一手に担う令嬢。前世の社畜経験を活かし、行事計画、来客対応、予算管理まで完璧にこなしていた。 だが婚約者ヴィクトルは言った。「お前がいると息が詰まる。もっと華やかな女がいい」 追放されたクラリッサが去った翌週、公爵家の予定が全て狂い始める。 舞踏会の招待状は届かず、外交晩餐会の料理は手配されず、決算書類は行方不明。 一方クラリッサは、若き領主の元で「定時退社」という夢を叶えていた。 「もう、残業はしません」

「通訳など辞書で足りる」と追放された令嬢——三国会談で、婚約者は一言も話せなくなった

歩人
ファンタジー
宮廷通訳官エレノーラは五つの言語を操り、婚約者クラウスの外交を陰で支えてきた。 だがクラウスは言った。「通訳など辞書で足りる。お前は要らない」 追放されたエレノーラは隣国で新たな道を歩み始める。 一方、クラウスは三国会談の場で辞書片手に立ち往生。 誤訳が外交問題に発展し、窮地に陥ったその場に、隣国の通訳官として現れたのは——。 「その言葉は、もう翻訳できません」

異世界でのんびり暮らしてみることにしました

松石 愛弓
ファンタジー
アラサーの社畜OL 湊 瑠香(みなと るか)は、過労で倒れている時に、露店で買った怪しげな花に導かれ異世界に。忙しく辛かった過去を忘れ、異世界でのんびり楽しく暮らしてみることに。優しい人々や可愛い生物との出会い、不思議な植物、コメディ風に突っ込んだり突っ込まれたり。徐々にコメディ路線になっていく予定です。お話の展開など納得のいかないところがあるかもしれませんが、書くことが未熟者の作者ゆえ見逃していただけると助かります。他サイトにも投稿しています。 https://www.alphapolis.co.jp/novel/793391534/466596284/episode/5320962 https://www.alphapolis.co.jp/novel/793391534/387029553/episode/10775138 https://www.alphapolis.co.jp/novel/793391534/84576624/episode/5093144 https://www.alphapolis.co.jp/novel/793391534/786307039/episode/2285646

実家から絶縁されたので好きに生きたいと思います

榎夜
ファンタジー
婚約者が妹に奪われた挙句、家から絶縁されました。 なので、これからは自分自身の為に生きてもいいですよね? 【ご報告】 書籍化のお話を頂きまして、31日で非公開とさせていただきますm(_ _)m 発売日等は現在調整中です。

大自然を司る聖女、王宮を見捨て辺境で楽しく生きていく!

向原 行人
ファンタジー
旧題:聖女なのに婚約破棄した上に辺境へ追放? ショックで前世を思い出し、魔法で電化製品を再現出来るようになって快適なので、もう戻りません。 土の聖女と呼ばれる土魔法を極めた私、セシリアは婚約者である第二王子から婚約破棄を言い渡された上に、王宮を追放されて辺境の地へ飛ばされてしまった。 とりあえず、辺境の地でも何とか生きていくしかないと思った物の、着いた先は家どころか人すら居ない場所だった。 こんな所でどうすれば良いのと、ショックで頭が真っ白になった瞬間、突然前世の――日本の某家電量販店の販売員として働いていた記憶が蘇る。 土魔法で家や畑を作り、具現化魔法で家電製品を再現し……あれ? 王宮暮らしより遥かに快適なんですけど! 一方、王宮での私がしていた仕事を出来る者が居ないらしく、戻って来いと言われるけど、モフモフな動物さんたちと一緒に快適で幸せに暮らして居るので、お断りします。 ※第○話:主人公視点  挿話○:タイトルに書かれたキャラの視点  となります。

【完結】追放された子爵令嬢は実力で這い上がる〜家に帰ってこい?いえ、そんなのお断りです〜

Nekoyama
ファンタジー
魔法が優れた強い者が家督を継ぐ。そんな実力主義の子爵家の養女に入って4年、マリーナは魔法もマナーも勉学も頑張り、貴族令嬢にふさわしい教養を身に付けた。来年に魔法学園への入学をひかえ、期待に胸を膨らませていた矢先、家を追放されてしまう。放り出されたマリーナは怒りを胸に立ち上がり、幸せを掴んでいく。

何もしなかっただけです

希臘楽園
ファンタジー
公爵令嬢であり王太子の婚約者であった私は、「地味だ」という理由で婚約を破棄され、王宮を去った。 それまで私が担っていた役目を、誰も知らないまま。 ――ただ何もしなくなっただけで、すべては静かに崩れていく。 AIに書かせてみた第14弾は、「追放ざまぁ」系の短編。

積みかけアラフォーOL、公爵令嬢に転生したのでやりたいことをやって好きに生きる!

ぽらいと
ファンタジー
アラフォー、バツ2派遣OLが公爵令嬢に転生したので、やりたいことを好きなようにやって過ごす、というほのぼの系の話。 悪役等は一切出てこない、優しい世界のお話です。