無能だと追放された「雑用係」のハル、現代の知恵(ライフハック)を駆使したら、呪われた魔王城が聖域化して伝説の賢者と呼ばれ始めた

ユネ

文字の大きさ
7 / 45

第7話:魔王城、文明開化の音がする

レストランが大繁盛し、魔王城には潤沢な資金が貯まりました。
「ハル様、さすがに客が増えすぎて、玄関の開け閉めだけでアイアンの関節が消耗してしまいます」
カレンが困り顔で報告してきます。
​「そうですね。では、少しばかり城を『自動化』しましょうか」
「ジドウカ……? また新しい魔法ですか?」
​私はニヤリと笑い、市場で買ってきた「滑車」と「重り用の石」、そして「丈夫な紐」を取り出しました。
• ​ドアの裏側に滑車を設置し、紐を通します。
• ​紐の先には、ドアを閉めるのにちょうど良い重さの石を吊るします。
• ​ドアが開くと石が持ち上がり、手を離せば石の重み(重力)で勝手に閉まる。
​「これぞ、現代……いえ、魔王城式『自動ドア(オートクローザー)』です」
「な、なんて滑らかな動き……! 魔法の気配が一切ないのに、ドアが生きているようです!」
​勢いに乗った私は、さらに城の一番の問題点に着手しました。
「次は、トイレです。あの汲み取り式の悪臭、耐えられません」
​私は城の屋上に大きな水槽を設置し、雨水を貯める仕組みを作りました。そこから細い管を階下の個室まで引き、S字に曲げた配管を設置します。
​「カレンさん。ここに水を流すと、このS字の部分に水が溜まって、下の配管からの悪臭を遮断する『水の結界(封水)』ができるんです。これが『水洗トイレ』の基礎ですよ」
​「水の結界でおぞましい臭いを封じ込める……!? ハル様、あなたはもしや、文明の神の化身なのですか!?」
​カレンが膝をついて拝み始める中、魔王城はついに「自動ドア完備、水洗トイレ付き」という、王宮すら凌駕する超快適空間へと進化したのでした。
​その頃、勇者パーティーは。
​「くそっ、この拠点のドア、建て付けが悪くて開かねぇぞ! 誰か魔法でぶっ壊せ!」
「勇者様、トイレの臭いも限界ですわ……。あぁ、ハルがいた頃は、なぜかいつも爽やかなミントの香りがしていたのに……」
​彼らは、ハルが毎日こっそり「ハッカ油」で消臭し、ドアの蝶番に「鉛筆の芯(黒鉛)」を塗って滑りを良くしていたことなど、知る由もなかったのでした。

​今回のライフハック:【重力式ドアクローザーとS字トラップ】
• ​解説: 紐と重りを使った単純な仕組みですが、立派な自動ドアになります。
• ​S字トラップ: 配管をS字に曲げて水を溜めるだけで、下水からの臭いや虫の侵入を完璧に防げます。現代の排水システムの基本中の基本です。
• ​おまけ: 鍵穴や蝶番の滑りが悪い時は、鉛筆の芯を削って粉を入れると、黒鉛が潤滑剤の代わりになってスムーズになります(油を差すと埃が固まる場所に向いています)。

感想 0

あなたにおすすめの小説

「お前がいると息が詰まる」と追放された令嬢——翌週から公爵家の予定が全て狂った

歩人
ファンタジー
クラリッサは公爵家の日程管理を一手に担う令嬢。前世の社畜経験を活かし、行事計画、来客対応、予算管理まで完璧にこなしていた。 だが婚約者ヴィクトルは言った。「お前がいると息が詰まる。もっと華やかな女がいい」 追放されたクラリッサが去った翌週、公爵家の予定が全て狂い始める。 舞踏会の招待状は届かず、外交晩餐会の料理は手配されず、決算書類は行方不明。 一方クラリッサは、若き領主の元で「定時退社」という夢を叶えていた。 「もう、残業はしません」

「通訳など辞書で足りる」と追放された令嬢——三国会談で、婚約者は一言も話せなくなった

歩人
ファンタジー
宮廷通訳官エレノーラは五つの言語を操り、婚約者クラウスの外交を陰で支えてきた。 だがクラウスは言った。「通訳など辞書で足りる。お前は要らない」 追放されたエレノーラは隣国で新たな道を歩み始める。 一方、クラウスは三国会談の場で辞書片手に立ち往生。 誤訳が外交問題に発展し、窮地に陥ったその場に、隣国の通訳官として現れたのは——。 「その言葉は、もう翻訳できません」

異世界でのんびり暮らしてみることにしました

松石 愛弓
ファンタジー
アラサーの社畜OL 湊 瑠香(みなと るか)は、過労で倒れている時に、露店で買った怪しげな花に導かれ異世界に。忙しく辛かった過去を忘れ、異世界でのんびり楽しく暮らしてみることに。優しい人々や可愛い生物との出会い、不思議な植物、コメディ風に突っ込んだり突っ込まれたり。徐々にコメディ路線になっていく予定です。お話の展開など納得のいかないところがあるかもしれませんが、書くことが未熟者の作者ゆえ見逃していただけると助かります。他サイトにも投稿しています。 https://www.alphapolis.co.jp/novel/793391534/466596284/episode/5320962 https://www.alphapolis.co.jp/novel/793391534/387029553/episode/10775138 https://www.alphapolis.co.jp/novel/793391534/84576624/episode/5093144 https://www.alphapolis.co.jp/novel/793391534/786307039/episode/2285646

実家から絶縁されたので好きに生きたいと思います

榎夜
ファンタジー
婚約者が妹に奪われた挙句、家から絶縁されました。 なので、これからは自分自身の為に生きてもいいですよね? 【ご報告】 書籍化のお話を頂きまして、31日で非公開とさせていただきますm(_ _)m 発売日等は現在調整中です。

大自然を司る聖女、王宮を見捨て辺境で楽しく生きていく!

向原 行人
ファンタジー
旧題:聖女なのに婚約破棄した上に辺境へ追放? ショックで前世を思い出し、魔法で電化製品を再現出来るようになって快適なので、もう戻りません。 土の聖女と呼ばれる土魔法を極めた私、セシリアは婚約者である第二王子から婚約破棄を言い渡された上に、王宮を追放されて辺境の地へ飛ばされてしまった。 とりあえず、辺境の地でも何とか生きていくしかないと思った物の、着いた先は家どころか人すら居ない場所だった。 こんな所でどうすれば良いのと、ショックで頭が真っ白になった瞬間、突然前世の――日本の某家電量販店の販売員として働いていた記憶が蘇る。 土魔法で家や畑を作り、具現化魔法で家電製品を再現し……あれ? 王宮暮らしより遥かに快適なんですけど! 一方、王宮での私がしていた仕事を出来る者が居ないらしく、戻って来いと言われるけど、モフモフな動物さんたちと一緒に快適で幸せに暮らして居るので、お断りします。 ※第○話:主人公視点  挿話○:タイトルに書かれたキャラの視点  となります。

【完結】追放された子爵令嬢は実力で這い上がる〜家に帰ってこい?いえ、そんなのお断りです〜

Nekoyama
ファンタジー
魔法が優れた強い者が家督を継ぐ。そんな実力主義の子爵家の養女に入って4年、マリーナは魔法もマナーも勉学も頑張り、貴族令嬢にふさわしい教養を身に付けた。来年に魔法学園への入学をひかえ、期待に胸を膨らませていた矢先、家を追放されてしまう。放り出されたマリーナは怒りを胸に立ち上がり、幸せを掴んでいく。

何もしなかっただけです

希臘楽園
ファンタジー
公爵令嬢であり王太子の婚約者であった私は、「地味だ」という理由で婚約を破棄され、王宮を去った。 それまで私が担っていた役目を、誰も知らないまま。 ――ただ何もしなくなっただけで、すべては静かに崩れていく。 AIに書かせてみた第14弾は、「追放ざまぁ」系の短編。

積みかけアラフォーOL、公爵令嬢に転生したのでやりたいことをやって好きに生きる!

ぽらいと
ファンタジー
アラフォー、バツ2派遣OLが公爵令嬢に転生したので、やりたいことを好きなようにやって過ごす、というほのぼの系の話。 悪役等は一切出てこない、優しい世界のお話です。