無能だと追放された「雑用係」のハル、現代の知恵(ライフハック)を駆使したら、呪われた魔王城が聖域化して伝説の賢者と呼ばれ始めた

ユネ

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第9話:勇者御一行、呪いの除霊(お掃除)を依頼する

「た、頼む! 腕利きの『賢者』がいると聞いて来た! 我々の拠点を救ってくれ!」
​魔王城のテラスに、ボロボロの格好をした一団が駆け込んできました。
かつての仲間、勇者エドワードと聖女ルナ、そして戦士たちです。彼らは私の正体に気づかないよう、深いフードを被った私の足元に縋り付きました。
​「拠点が呪われている……? 具体的にはどのような現象ですか?」
私は声を少し低くして問いかけます。
​「ああ! 鏡にはおぞましい顔が浮かび、キッチンからは死臭が漂い、夜な夜なパチパチと謎の怪火が上がるんだ! 聖女の祈りも全く通じない!」
​……全部、私が第1話から第3話で解説した水垢と生ゴミと静電気ですね。
​「わかりました。その『呪い』、私が払いましょう。ただし、報酬は高くつきますよ?」
「金ならある! 頼む、助けてくれ!」
​数ヶ月ぶりに訪れたかつての拠点は、見るも無残な「ゴミ屋敷」と化していました。
エドワードが怯えながら、壁にある「怪火」を指差します。
​「ひいぃっ! ほら見ろ、ドアノブに触れようとすると、青白い衝撃と共に激痛が走るんだ! 悪霊の攻撃に違いない!」
​「……カレン、あれを」
私はアイアン(ゴーレム)に持たせていた「霧吹き」と、「グリセリン(保湿剤)」を取り出しました。
• ​まず、空中にシュッとひと吹き。湿気を与えて電気を逃がします。
• ​次に、ドアノブの周辺に薄くグリセリンを塗ります。
• ​ついでに、彼らの着ている安物のウール服に、「薄めた柔軟剤」をスプレーしました。
​「さあ、触ってみてください」
「な、なんだと……!? 痛くない! 悪霊が……消えたのか!?」
​「呪いではありません。乾燥した空気の中で、服と体がこすれて溜まった『静電気』です。湿気と保湿剤で、電気を逃がす『結界』を張っただけですよ」
​その後も、私は「重曹」で死臭を消し、「新聞紙」で鏡の幽霊(ただの水垢)を消し去りました。
​「おおお……! 聖女でも無理だった呪いを、たった数分で……! あなたこそ真の賢者だ!」
​エドワードたちは涙を流して感謝していますが、私は冷ややかな目でそれを見ていました。
「これで除霊は完了です。……ところでエドワードさん。以前ここにいた『ハル』という雑用係なら、これくらい毎日無料でやっていたはずですが?」
​「ハ、ハル……? あんな無能、関係ないだろう! あいつがいなくなってから呪いが始まったんだ、きっとあいつの生霊が――」
​私はフードを脱ぎ、静かに微笑みました。
​「いいえ。私が掃除をやめたから、汚れた。ただ、それだけのことですよ」
​凍りつく勇者たちの前で、私はアイアンに命じて彼らを門の外へと「掃き出し」ました。
​今回のライフハック:【静電気対策】
• ​解説: 静電気は乾燥すると発生しやすくなります。霧吹きで湿度を上げる、あるいはドアノブに触れる前に「壁」などの広い面積を触って放電するのがコツです。
• ​グリセリン・柔軟剤: これらは表面をコーティングして摩擦を減らし、電気を溜まりにくくする効果があります。

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