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第11話:王立魔導院の調査、氷なしで冷やす魔法
魔王城が「聖域」として有名になりすぎて、ついに王都から最高峰の研究機関『王立魔導院』の調査員がやってきました。
「私が、主任調査員のゼノスだ。ハル殿、あなたの『知恵』とやらは、魔法の秩序を乱しているという報告がある。例えば、この夏場に氷魔法も使わず、どうやって客に冷たい飲み物を出しているのかね?」
ゼノスは、冷気魔法の魔石を何十枚も仕込んだ豪華なマントを羽織り、汗ひとつかかずに尊大に言いました。
「ああ、それなら……。アイアン、『あれ』を持ってきて」
私は、二重に重ねた「素焼きの植木鉢」と、その間に詰めた「砂」を持ってこさせました。
「ほう、ただの泥の器か。これで飲み物を冷やすと? 滑稽だな」
• 外側の鉢と内側の鉢の隙間に砂を詰め、そこにたっぷりと水を注ぎます。
• 飲み物の瓶を内側の鉢に入れ、濡れた布を被せて日陰に置きます。
「……ゼノスさん、1時間ほど城の案内をしますので、その後に飲んでみてください」
一時間後。案内を終えて戻ってくると、ゼノスは半信半疑で鉢の中の瓶を手に取りました。
「なっ……!? 冷たい……。魔法の気配は一切ないのに、井戸水よりも遥かに冷えているだと……!?」
「これは『気化熱』を利用した知恵です。素焼きの鉢から水が蒸発するときに、周りの熱を奪っていくんですよ。湿った砂がその効果を持続させます。高価な魔石なんてなくても、水と土があれば冷気は作れます」
ゼノスはショックのあまり、ガクガクと膝をつきました。
「我々が一生をかけて研究する冷却術式が……たった二つの植木鉢に敗北したというのか……。ハル殿、あなたは……あなたは一体……!」
「私はただの、物を大事にする掃除係ですよ」
私は、キンキンに冷えた麦茶を彼に差し出しました。
その後、ゼノス調査員は「魔導院を辞めて、ここで庭師からやり直したい」と泣きつき、カレンを困らせることになるのでした。
一方その頃。
勇者パーティーの拠点は、夏場の猛暑で地獄と化していました。
「暑い……! 魔石を買う金がないから冷気魔法が使えねぇ!」
「勇者様……お肉が全部腐って、またあの『呪いの臭い』がしてきましたわ……」
彼らが、植木鉢と水だけで「冷蔵庫」が作れることを知るのは、ずっと先の話です。
今回のライフハック:【ジール・ポット(砂冷やし鉢)】
• 解説: アフリカなどの電気が通らない地域で実際に使われている「電気のいらない冷蔵庫」です。水分が蒸発する際に周囲の温度を下げる性質を利用したもので、中に入れた野菜や飲み物を驚くほど新鮮に保てます。
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「ほう、ただの泥の器か。これで飲み物を冷やすと? 滑稽だな」
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• 飲み物の瓶を内側の鉢に入れ、濡れた布を被せて日陰に置きます。
「……ゼノスさん、1時間ほど城の案内をしますので、その後に飲んでみてください」
一時間後。案内を終えて戻ってくると、ゼノスは半信半疑で鉢の中の瓶を手に取りました。
「なっ……!? 冷たい……。魔法の気配は一切ないのに、井戸水よりも遥かに冷えているだと……!?」
「これは『気化熱』を利用した知恵です。素焼きの鉢から水が蒸発するときに、周りの熱を奪っていくんですよ。湿った砂がその効果を持続させます。高価な魔石なんてなくても、水と土があれば冷気は作れます」
ゼノスはショックのあまり、ガクガクと膝をつきました。
「我々が一生をかけて研究する冷却術式が……たった二つの植木鉢に敗北したというのか……。ハル殿、あなたは……あなたは一体……!」
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その後、ゼノス調査員は「魔導院を辞めて、ここで庭師からやり直したい」と泣きつき、カレンを困らせることになるのでした。
一方その頃。
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「暑い……! 魔石を買う金がないから冷気魔法が使えねぇ!」
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彼らが、植木鉢と水だけで「冷蔵庫」が作れることを知るのは、ずっと先の話です。
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