無能だと追放された「雑用係」のハル、現代の知恵(ライフハック)を駆使したら、呪われた魔王城が聖域化して伝説の賢者と呼ばれ始めた

ユネ

文字の大きさ
13 / 45

第13話:古文書の守護者、チョークとパンの耳

「ハル様、大変です! 地下の宝物庫に保管していた重要な『領地割当書』に、カビのようなものが……! それに、湿気でページがくっついて開けなくなっています!」
​カレンが真っ青な顔で駆け込んできました。
異世界の紙は羊皮紙や質の悪いパルプが多く、梅雨時のような湿気には滅法弱いのです。
​「大切な書類ですね。魔法で無理に乾かすと、紙がパリパリに割れて文字が剥がれ落ちてしまいますよ」
​私は落ち着いて、キッチンから「パンの耳」と、アイアン(ゴーレム)の補修に使った「チョーク(石灰の棒)」を取り出しました。
​「ハル様、まさか国家機密の書類をパンの耳で食べようというのでは……」
「食べませんよ。これは『吸着魔法』の代わりです」
• ​まず、湿ったページの間に、粉状に砕いたチョークを薄く振りかけます。チョークが余分な湿気を吸い取り、ページ同士が癒着するのを防ぎます。
• ​次に、カビが浮いてしまった部分を、軽く焼いた「パンの耳」で優しく叩くように押さえます。
​「なっ……カビの胞子が、パンの耳に吸い寄せられて消えていく!? 魔法の洗浄液でも落ちなかった汚れが……!」
​「パンの耳は多孔質といって、細かい穴がたくさん空いているんです。これが汚れや湿気を絡め取る『吸着材』になるんですよ。仕上げに、書類の棚にチョークを数本置いておけば、もう湿気は溜まりません」
​数時間後、領地割当書は新品のようなサラサラの質感を取り戻しました。
「ハル様……あなたは文字通り、この国の歴史(記録)まで守ってしまわれるのですね……」
​その頃、勇者パーティーの拠点は。
​「クソッ! ギルドからの依頼書がカビて読めねぇ! 報酬がいくらかわかんねぇぞ!」
「勇者様、魔力で強引に乾かしたら、依頼書が燃えて灰になってしまいましたわ……」
​彼らは、ハルが毎日こっそり「炭」や「チョーク」を棚に忍ばせ、大事な書類を湿気から守っていたことなど、永遠に知ることはないのでした。

​今回のライフハック:【チョークの除湿とパンの消しゴム】
• ​解説: チョーク(炭酸カルシウム)は湿気を吸い取る性質があり、靴箱やクローゼットの除湿剤として優秀です。
• ​パンの耳: 実は「消しゴム」が普及する前、デッサンなどの汚れを落とすにはパンが使われていました。多孔質な構造が、紙を傷めずに表面の汚れだけを吸着してくれます。
感想 0

あなたにおすすめの小説

「お前がいると息が詰まる」と追放された令嬢——翌週から公爵家の予定が全て狂った

歩人
ファンタジー
クラリッサは公爵家の日程管理を一手に担う令嬢。前世の社畜経験を活かし、行事計画、来客対応、予算管理まで完璧にこなしていた。 だが婚約者ヴィクトルは言った。「お前がいると息が詰まる。もっと華やかな女がいい」 追放されたクラリッサが去った翌週、公爵家の予定が全て狂い始める。 舞踏会の招待状は届かず、外交晩餐会の料理は手配されず、決算書類は行方不明。 一方クラリッサは、若き領主の元で「定時退社」という夢を叶えていた。 「もう、残業はしません」

「通訳など辞書で足りる」と追放された令嬢——三国会談で、婚約者は一言も話せなくなった

歩人
ファンタジー
宮廷通訳官エレノーラは五つの言語を操り、婚約者クラウスの外交を陰で支えてきた。 だがクラウスは言った。「通訳など辞書で足りる。お前は要らない」 追放されたエレノーラは隣国で新たな道を歩み始める。 一方、クラウスは三国会談の場で辞書片手に立ち往生。 誤訳が外交問題に発展し、窮地に陥ったその場に、隣国の通訳官として現れたのは——。 「その言葉は、もう翻訳できません」

異世界でのんびり暮らしてみることにしました

松石 愛弓
ファンタジー
アラサーの社畜OL 湊 瑠香(みなと るか)は、過労で倒れている時に、露店で買った怪しげな花に導かれ異世界に。忙しく辛かった過去を忘れ、異世界でのんびり楽しく暮らしてみることに。優しい人々や可愛い生物との出会い、不思議な植物、コメディ風に突っ込んだり突っ込まれたり。徐々にコメディ路線になっていく予定です。お話の展開など納得のいかないところがあるかもしれませんが、書くことが未熟者の作者ゆえ見逃していただけると助かります。他サイトにも投稿しています。 https://www.alphapolis.co.jp/novel/793391534/466596284/episode/5320962 https://www.alphapolis.co.jp/novel/793391534/387029553/episode/10775138 https://www.alphapolis.co.jp/novel/793391534/84576624/episode/5093144 https://www.alphapolis.co.jp/novel/793391534/786307039/episode/2285646

実家から絶縁されたので好きに生きたいと思います

榎夜
ファンタジー
婚約者が妹に奪われた挙句、家から絶縁されました。 なので、これからは自分自身の為に生きてもいいですよね? 【ご報告】 書籍化のお話を頂きまして、31日で非公開とさせていただきますm(_ _)m 発売日等は現在調整中です。

大自然を司る聖女、王宮を見捨て辺境で楽しく生きていく!

向原 行人
ファンタジー
旧題:聖女なのに婚約破棄した上に辺境へ追放? ショックで前世を思い出し、魔法で電化製品を再現出来るようになって快適なので、もう戻りません。 土の聖女と呼ばれる土魔法を極めた私、セシリアは婚約者である第二王子から婚約破棄を言い渡された上に、王宮を追放されて辺境の地へ飛ばされてしまった。 とりあえず、辺境の地でも何とか生きていくしかないと思った物の、着いた先は家どころか人すら居ない場所だった。 こんな所でどうすれば良いのと、ショックで頭が真っ白になった瞬間、突然前世の――日本の某家電量販店の販売員として働いていた記憶が蘇る。 土魔法で家や畑を作り、具現化魔法で家電製品を再現し……あれ? 王宮暮らしより遥かに快適なんですけど! 一方、王宮での私がしていた仕事を出来る者が居ないらしく、戻って来いと言われるけど、モフモフな動物さんたちと一緒に快適で幸せに暮らして居るので、お断りします。 ※第○話:主人公視点  挿話○:タイトルに書かれたキャラの視点  となります。

【完結】追放された子爵令嬢は実力で這い上がる〜家に帰ってこい?いえ、そんなのお断りです〜

Nekoyama
ファンタジー
魔法が優れた強い者が家督を継ぐ。そんな実力主義の子爵家の養女に入って4年、マリーナは魔法もマナーも勉学も頑張り、貴族令嬢にふさわしい教養を身に付けた。来年に魔法学園への入学をひかえ、期待に胸を膨らませていた矢先、家を追放されてしまう。放り出されたマリーナは怒りを胸に立ち上がり、幸せを掴んでいく。

何もしなかっただけです

希臘楽園
ファンタジー
公爵令嬢であり王太子の婚約者であった私は、「地味だ」という理由で婚約を破棄され、王宮を去った。 それまで私が担っていた役目を、誰も知らないまま。 ――ただ何もしなくなっただけで、すべては静かに崩れていく。 AIに書かせてみた第14弾は、「追放ざまぁ」系の短編。

積みかけアラフォーOL、公爵令嬢に転生したのでやりたいことをやって好きに生きる!

ぽらいと
ファンタジー
アラフォー、バツ2派遣OLが公爵令嬢に転生したので、やりたいことを好きなようにやって過ごす、というほのぼの系の話。 悪役等は一切出てこない、優しい世界のお話です。