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行かないで
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「ッ…あ、ま…まって!」
扉を開け部屋を出ていこうとするアレク様の元に走っていく。急にたったからか、めまいがして扉に足を引っ掛けて顔面から転んでしまった。
「シュカ!?大丈夫か、」
「………で…」
「ゔ…いか、ないで」
「ぅ…ふ…ぅぅぅぅ」
必死に流れてくる涙を止めようと、食いしばった口から情けない声が漏れてくる。泣くな、泣くな、と考えれば考えるほど涙は溢れてくる。
涙を拭おうとしても、面が邪魔で上手く拭えなくて、顔が濡れていく一方だった。
「…ッ…ふっ」
ダンゴムシのように丸まって泣く俺の前にしゃがんでいたアレク様から聞こえてきたのは、慰めの言葉でも怒声でもなかった。
「…ぅ…え?」
「いや、悪い…は、はは」
なぜか腹を抱えて笑い出すアレク様をみて、涙は徐々に止まっていった
その後も唖然とする俺をよそにアレク様はしばらく笑い続けていた
「…ねえ、アレク様?」
「いやぁ、久しぶりにこんな笑ったよ」
「…酷い」
「だって、顔面からつこけるし泣き始めるし泣き声は情けないし…」
「あぁダメだ、思い出したらまた笑えてくる」
「ちょっと!」
「はぁ…」
アレク様がひとつ深呼吸をして、こちらを見る
「…俺は、お前に怒ってたんだ」
「確かに、俺は軽めの気持ちでお前身請けしようとしていた」
「それにお前が怒るのは別にいいんだ。でも、さっきの話のクズ野郎なんかと一緒にされるのは絶対に嫌だ」
「…ごめん」
「いいよ」
面の下から流れた涙のあとを拭いながらアレク様は言った。
「…そういえば、その面ってなんでつけてるんだ?」
「話したことないっけ?」
「ない」
「自分じゃよくわかんないんだけど、なんか昔コーディさんに美しすぎるからって言われて、これつけさせられて」
「ふぅん」
「1度も他のやつ見られたことはないのか?」
「何回かお客さんに取られたことあるよ」
「その度に客は固まるし面は返してくれないしで。それ以来俺の面をとった人は今後出入り禁止ってルールがついたんだよ」
「へぇ」
「ていうか、帰らないでいいの?」
「行かないで、って言ったのはお前だろ」
「あ…いや、あれは…」
「冗談だよ。ほら、そんないつまでも寝そべってないで」
丸なった状態で顔だけを横に向けて話していた俺にアレク様から手を差し伸べてくれたのでありがたく手をとって立ち上がる
「…ふふ、なんか貴族様みたい」
「貴族なんだがな」
「アレク様は騎士のイメージが強いんだよ」
「そういえばいつまで様付けなんだ」
「いやぁ、なんか癖で」
「アレクって呼んだ方がいい?」
「そうしてくれ。どうしても部下と話をしてる気分になる」
「わかった」
「じゃあそろそろ帰るな。また今度」
「うん、2ヶ月後だね」
アレクを見送った後、店に出る準備を始めていると、コーディさんが部屋に来た。
「シュカ、公爵様とはどうなんだ」
「どう、って…」
「月に一度はここに来ているじゃないか。お前も受け入れているようだし」
「余程お前が気に入ったんだろう」
「そんなんじゃないですよ。ただの友達」
「…そうか。良かったな」
コーディさんは、少し口は悪いし放任主義でもあるけど、なんだかんだ優しい人だ。よそで追い出された娼夫を拾ってくることもそうそう少なくは無い。
俺にとっても、父親のような存在だ。
扉を開け部屋を出ていこうとするアレク様の元に走っていく。急にたったからか、めまいがして扉に足を引っ掛けて顔面から転んでしまった。
「シュカ!?大丈夫か、」
「………で…」
「ゔ…いか、ないで」
「ぅ…ふ…ぅぅぅぅ」
必死に流れてくる涙を止めようと、食いしばった口から情けない声が漏れてくる。泣くな、泣くな、と考えれば考えるほど涙は溢れてくる。
涙を拭おうとしても、面が邪魔で上手く拭えなくて、顔が濡れていく一方だった。
「…ッ…ふっ」
ダンゴムシのように丸まって泣く俺の前にしゃがんでいたアレク様から聞こえてきたのは、慰めの言葉でも怒声でもなかった。
「…ぅ…え?」
「いや、悪い…は、はは」
なぜか腹を抱えて笑い出すアレク様をみて、涙は徐々に止まっていった
その後も唖然とする俺をよそにアレク様はしばらく笑い続けていた
「…ねえ、アレク様?」
「いやぁ、久しぶりにこんな笑ったよ」
「…酷い」
「だって、顔面からつこけるし泣き始めるし泣き声は情けないし…」
「あぁダメだ、思い出したらまた笑えてくる」
「ちょっと!」
「はぁ…」
アレク様がひとつ深呼吸をして、こちらを見る
「…俺は、お前に怒ってたんだ」
「確かに、俺は軽めの気持ちでお前身請けしようとしていた」
「それにお前が怒るのは別にいいんだ。でも、さっきの話のクズ野郎なんかと一緒にされるのは絶対に嫌だ」
「…ごめん」
「いいよ」
面の下から流れた涙のあとを拭いながらアレク様は言った。
「…そういえば、その面ってなんでつけてるんだ?」
「話したことないっけ?」
「ない」
「自分じゃよくわかんないんだけど、なんか昔コーディさんに美しすぎるからって言われて、これつけさせられて」
「ふぅん」
「1度も他のやつ見られたことはないのか?」
「何回かお客さんに取られたことあるよ」
「その度に客は固まるし面は返してくれないしで。それ以来俺の面をとった人は今後出入り禁止ってルールがついたんだよ」
「へぇ」
「ていうか、帰らないでいいの?」
「行かないで、って言ったのはお前だろ」
「あ…いや、あれは…」
「冗談だよ。ほら、そんないつまでも寝そべってないで」
丸なった状態で顔だけを横に向けて話していた俺にアレク様から手を差し伸べてくれたのでありがたく手をとって立ち上がる
「…ふふ、なんか貴族様みたい」
「貴族なんだがな」
「アレク様は騎士のイメージが強いんだよ」
「そういえばいつまで様付けなんだ」
「いやぁ、なんか癖で」
「アレクって呼んだ方がいい?」
「そうしてくれ。どうしても部下と話をしてる気分になる」
「わかった」
「じゃあそろそろ帰るな。また今度」
「うん、2ヶ月後だね」
アレクを見送った後、店に出る準備を始めていると、コーディさんが部屋に来た。
「シュカ、公爵様とはどうなんだ」
「どう、って…」
「月に一度はここに来ているじゃないか。お前も受け入れているようだし」
「余程お前が気に入ったんだろう」
「そんなんじゃないですよ。ただの友達」
「…そうか。良かったな」
コーディさんは、少し口は悪いし放任主義でもあるけど、なんだかんだ優しい人だ。よそで追い出された娼夫を拾ってくることもそうそう少なくは無い。
俺にとっても、父親のような存在だ。
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