友人になりたかったのに

Koko

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両親

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アレクセイside


「…そういえば、なんでアレク…公爵様はうちのアメリア領に来てたの?」

執務室の椅子に腰掛け、暖かいホットミルクを口にしながらそう聞いてきた。さすがに俺の屋敷で愛称で呼ぶのはやめた方がいいと思ったのか公爵様、と呼び方を変えてきた。

「…領主の犯罪への関与の疑いがあったんだ」
「捜査の結果、犯罪への関与が確認されたから、あの領地は隣の領地を治めるスィーリア伯爵が管理する」

「…そうなんだ」

そう言うシュカの言葉からは特に残念だとか嬉しいだとかそうゆう感情は伝わってこなかった。だが、調査の上で彼もあの領主のせいで酷い生活を送っていたことも分かっている。少なからずあの人には憎みがあっただろう。

「シュカ、お前は産みの両親にあったことがあるか?」

調査する上で、彼の両親だけなんの情報もなかったことを思い出し、なにか知らないかと聞いてみた。

「ないよ」
「でもよくコーディさんが言ってた。『お前は尊い子だ。きっといつか両親の元へ戻る時が来るだろう』って」

「……そうか」
「店主に苗字はあるか?」

「え?」

本来、苗字をもつのは貴族のみである。平民であるはずの店主が苗字を持ちうるはずがないが、もしかしての可能性を考え聞いてみる。

「なかったと思う」
「なんで?」

「…いや、シュカの血筋が気になってな」

「…クロン孤児院の人に聞いてみたらいいんじゃない?」
「俺を預かったのも10歳まで育てたのもそこの人だし」

シュカを冷遇してきた彼らがシュカの血筋を知るわけが無い。シュカの血筋を少しでも知っていればあんなに酷いことはできないはずだ。

「ねえ、アレク」
「顔を隠せるものとかないかな」

屋敷に来てから、やはり使用人の視線が気になっていたのか、目元を触りながらこちらに問いかけてくる。

「…その目、やはり人が惹かれるな」
「まあ、そんなに綺麗なら仕方もないかな」

「目?」

「?あぁ」

彼の目はとても綺麗だ。それに加えその美貌に16の少年だとは思えないその色香。平民だと言うには色々礼儀正しいし所作もきちんとしている。見たくなるのも無理がない。

「青い目、好きなんだ」

「……もしかしてシュカ、知らないのか?」

どこかピンときてない様子で尋ねてくる彼にそう問いた。もしかしたらわかっていないのかもしれないと思い説明すると

「シュカの瞳、日が当たると金色になっているんだが」

「…は?」

そんなこと初めて知った、という風に彼のその金色混じりの瞳が見開かれた。日光が入りやすいこの部屋で彼の瞳は宝石のように輝いている。

「初めて知った…」
「…だからアレク…様も俺の血筋が気になったんだ?」

彼の言うことは間違っていない。ただ、その特殊な瞳をもつ血筋に心当たりがあった。
我が国の隣にある、フィンツェル帝国。その皇族と昔会ったことがあった。彼らは、シュカと同じ黒髪に、日に当たると金色になる瞳を持ちえていた。

当時4歳であった俺でも知っている、あの大事件。16年前、フィンツェル帝国で起こった「第3皇子誘拐事件」彼がその第3皇子であるなら、彼がその特殊な瞳をもつことにも納得が行く。

1度、店主に話を聞いてみなければ。

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