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序章『始まりの領地』
009 コレクター、騎士が決まる
しおりを挟む図書館で本を読み、思考を巡らせる。
この世界はやはり『トワイライト』の要素が散りばめられているようだ。
まず、この世界の文字。ちょっと崩れているが、これはローマ字だ。最初はなんだこれってなったけど、少し考えたら読めるようになった。
とまあ、ここまでは普通の異世界と同じだ。だが、一つおかしいところがある。
古代文字が“日本語”なのだ。
カリウスに聞いたところ、三種類の文字が組み合わさっている複雑な文章と言っていた。
まあ確かに、言われてみれば漢字とカタカナとひらがなに分けられるね。外国の人もこういうところに苦戦するのだとか。
間違いなく、この世界はただの異世界ではない。何か秘密があるはずなのだ。
文字以外にも、『トワイライト』を感じさせる要素はあった。
例えば、魔法の名前。ほとんどの魔法がゲーム内と同じ名称になっている。エフェクト、と言っていいのかは分からないが、炎などの動きも似たものになっていた。
あと、魔法は貴族じゃなくても使えるらしい。貴族は幼い頃から練習するためほとんどの人が魔術師になるのだとか。
次に、国について。
まず、この世界には大陸が三つ存在する。地図で見ると、左上、左下、右下に一つずつで、右上には小さな島がいくつかある程度。
俺がいるロンテギア王国は、左下のフェリン大陸だ。左上が一番大きなランオーガ大陸で、右下がデルビリア大陸。
そして、代表的な大国が三つ。
妖精の国シャムロット。
獣人の国アルゲンダスク。
悪魔の国オルタガ。
それぞれフェリン大陸、ランオーガ大陸、デルビリア大陸の順番だ。
人間の国ロンテギアは……残念ながら大国と呼べるほど大きな国ではない。
俺が今読んでいるのは各国について記された本だ。覚えきれる自信がないので、簡単な常識だけでも読んでおきたい。
各国の特徴程度は知っておいた方がいいだろう。いつか行くことになるだろうし。
ページをめくり、適当に目を通す。その国に多い種族について書かれていた。ふむふむ、妖精の国にはエルフやドワーフ、フェアリーなどが住んでいるのか。
長々と種族の説明を読み、やっとこさ後半のページ。既に飽きてしまっていた俺だが、最初の一文を読んで目を見開く。
『ロンテギア、シャムロット、アルゲンダスク、オルタガには国宝が存在する。それは元々一つだったもので、大昔に各国に散りばめられたものである。』
なんと、この世界には国宝なるものがあるらしい。日本で言う『天叢雲剣』とかだろう。
欲しい。なんだそれ、欲しいぞ。
『トワイライト』にはゲーム内に一つしかないアイテムなどなかった。
ストーリーで手に入る超重要なアイテムは人には渡せないがクリアすれば手に入るのでレア感は薄い。
だがこれはどうだろう。正真正銘、世界にたった一つしかない宝じゃないか。
そうと決まれば、偵察に行く必要があるな。
なに、別に盗みに入るわけではない。力を使ってでもその宝を一目見たいのだ。いずれ手に入れる予定のレアアイテムを。
どうせ花の栽培ができるまで俺は暇なのだ。やることもないし、そろそろ冒険がしたい。
ゲーマーの血が騒ぐのだ。最近魔法を使っていないし、剣も振るっていない。このままでは病気になってしまう。
「ん? どうしたレクト……って、なんか悪い顔してるぞ」
「そんなことないって。ああ、楽しみだなぁ……」
「嫌な予感しかしない」
嫌だなぁ、俺がそんな悪いことする奴に見えますか?
「そういえばよ、王子にやったあれ、本当に大丈夫なのか?」
あ、悪いことやってた。一国の王子に『スタングレネード』渡してた。
でもほら、正当防衛というか、記憶にないけど過去に色々酷いことされてただろうし……ね?
俺は悪くねぇ! 俺は悪くねぇ! 誰がやれって言った? 俺か。
「大丈夫でしょ。王様もあのラジオには手を焼いてるっぽいし許してくれるって」
「ルディオな」
「そうそれ。後ほら、少しは痛い目見ないと」
「……まあそれは、同意しとく」
三鳥……じゃなくて、あの三貴族の罵倒を見ていたカリウスは俺と同じ気持ちだったのだろう。
俺が落ちこぼれと言われている理由は正直分からなかった。まあ多分成績が悪いんだと思うよ。あと家系とか。
ついでに見た目でもいじめられたと。まあ正直いじめなんて理由は何でもいいんだけどね。特に理由のない罵倒が俺を襲う!
「そういうわけで、俺はトワ村を成長させてあいつらにやり返すつもりなんだ。楽しみで仕方ない」
「ふっ……本当に変わってるよな、レクト」
「よく言われる」
そう言って小さく笑う。
そんな俺を見ながらカリウスは頭を掻き、真剣な顔をする。
「……あのさ、オレ、しばらくトワ村にいていいかな?」
「いいけど、どうして?」
「愛着ってわけじゃないんだけどさ、この数日退屈しなかったんだ。村の奴らとも話して、活気があって。だから、その……騎士として初めて守りたいと思えた、みたいな?」
ふむ、長いわ。
要約すると、トワ村にいると楽しかったし守りたいって思えたから村に居させてほしいってことだ。
俺は鈍感系難聴主人公なので「え、なんだって?」とは言わない。てかこの状況で発動させる意味はない。
とにかく、察しが悪いわけではないのだ。その意図をしっかりくみ取りたい。
「そうだなぁ……ごほんっ。えー、トワ村の領主として頼みたい。我が村の騎士になってほしい」
「はっ……ははっ! よろしく、領主殿!」
「ああ!」
柄にもなく大声を出してしまった。
固い握手をし、お互いの顔を見つめる。おい、目をそらすな。顔を赤くするな。
なんて思っていると、図書館の入り口辺りからバンッ! と机を叩く音が聞こえてきた。
まさかの台パン。立ち上がってプルプルしていたのは、大人しそうな司書さんだった。
「お静かに!!!!!」
「「ごめんなさいっ!」」
あまりの迫力に反射的に謝ってしまう。そうだよね、図書館ではお静かに。それはどの世界でも常識だよね。
「はぁ、まあとにかくよろしくな」
「うん。でも本当にいいの? 今のトワ村貧相だよ?」
自分の所有物を悪く言うのは気が引けるが、トワ村には本当に何もない。
「これからが期待できるからな。それと、レクトにはストッパーが必要だろ?」
「いやいや、俺がストッパーで止まるわけないでしょ」
「それもそうだ! ははは、なんかすっきりした。怒られたけど」
「それはよかった」
清々しい顔で笑うカリウスに、俺も思わず微笑む。ああ、楽しいな。どうせ異世界に来たんだし、もっと楽しまなきゃ損だ。
各国の偵察も、楽しみたいな。
と、本以外での情報も集めなきゃいけないんだった。とりあえず情報と言えば酒場、酒場でしょ。
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