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序章『始まりの領地』
015 コレクター、鍛冶屋に行く
店内は、照明こそ暗いが剣や盾などの金属製品が大量に並んでいてコレクターの俺からしたら楽しくて仕方がない。
剣や盾の形は『トワイライト』で見たことがあった。しかしそれは特殊な名前が付けられるようなランクではない。
アイアンソードや、プラチナソードなど……ランク2辺りだろうか。
武器にも質があるのか、同じ武器でも輝きが異なっている。なるほど、興味深い。
「おっ、これが鍋か」
「すごい、全部高級品ね……ちょっと陳列は雑だけど」
木箱の中に乱雑に収納されていたのは、料理に使う鍋などだった。
その中に、錬金窯も入っている。水入り瓶をセットできるのは……八つ。ふむ、単純にエリィの錬金窯の二倍か。
これを買ってもいいが、エリィの口ぶりからして八個は高級品だがロンテギアにもあるんだよな。
ポルシン鉱石を使った錬金窯ならば十や十二個同時に作れるかもしれない。
「すみません、一番いい錬金窯ってどこにありますかね」
「……ああ、今残ってるのはその手に持ってる錬金窯だ。それよりいいもんは全部売れちまったよ」
重々しく口を開いたドワーフの店主は、ため息をつきながらそんなことを言った。
なんと、これが一番いいやつとは。しかし言い方からしてこれよりいい錬金窯はあるということ。
なければ作ってもらえばいいのだ。
「じゃあ、これよりいい錬金窯って作れますか」
「……そりゃ、無理な話だ。少し前、商売道具の鍛冶ハンマーを無くしちまったんだ」
鍛冶ハンマーを無くしたと。盗まれたとか、落としたとかだろうか。
とにかく、鍛冶において鍛冶ハンマーは命だ。
これはゲーム内での話になるが、鍛冶スキルを使い道具を作成するには鍛冶ハンマーが必要になる。
アイテムのレア度、つまりランクによって必要な鍛冶ハンマーのランクが変わってくる。
ランク4の鍛冶ハンマーならランク4以下のアイテムを作ることはできるが、ランク5のアイテムを作ることはできない。という感じだ。
ちなみに、ランクが一つ下のハンマーで一部のランクが一つ上のハンマーを作ることはできる。全て一人で完結させるための運営の粋な調整である。
なお、誰もその仕様を利用していない。皆店売りの鍛冶ハンマーを使っていたのだ。悪いな運営。
もしもこの世界でその設定が適用されるとしたら……悲惨だ。
「あらら。じゃあ他の店を紹介してください。そこに行きます」
「他の店じゃあそれと同じ性能の錬金窯しか作れねぇぞ」
はい、悲惨だ。
やはり、この店主が無くしたのは高ランクの鍛冶ハンマーなのだ。
「な、なら別の鍛冶ハンマーで作ればいいんじゃ……」
「あの鍛冶ハンマーじゃねぇと強力な武器も、高性能な錬金窯も作れねぇんだよ。腕に自信がねぇわけじゃねぇが……こればっかりはどうしようもねぇ」
やはり、この世界でも鍛冶のシステムは同じのようだ。
『トワイライト』では金属と素材を溶かして固めて叩くだけだったため作り方は流石に違うかもしれないが、それ以外は一緒と考えていい。
「鍛冶ハンマーの性能によって作れる道具も変わるんだ。その無くしたっていう鍛冶ハンマーと同等の鍛冶ハンマーがないと目的の錬金窯は作ってもらえないよ」
「そ、そんな……」
「へっ、詳しいじゃねぇか。分かったらその錬金窯で妥協しな」
妥協? 妥協だって?
「それは困る。アイテムに妥協はあんましたくないんだよね、俺」
「なにぃ?」
「無くした鍛冶ハンマーはどこにあるの? 探してきてあげるけど」
どうせ他の店に行っても目的の錬金窯は手に入らないのだ。それならば、さっさとその鍛冶ハンマーを探してこのドワーフに渡した方がいい。
「言うじゃねぇか嬢ちゃん。だが諦めな、ワシの鍛冶ハンマーを奪っていったのは炎竜ドレイクだ。火山の頂上に住む四竜の一頭。最上位の冒険者も行こうとしないんだからな」
四竜……ドレイクか。
ドレイクと言えば、『トワイライト』のストーリーボスの印象が強い。
ストーリー自体はそこまでレベルは必要とされなかったし、複数人で挑めば楽勝という難易度だった。
ソロで挑めばそれなりに苦戦する難易度だろうが、それも今となっては昔の話。
今の俺のレベルならばドレイクは楽勝とまではいかずともまあ倒せるだろう。そもそも負けるほどのダメージを受けないはずだ。
よし、じゃあ行こうか。目的は鍛冶ハンマーなんだし、殺さずとも奪い返すことはできるだろう。
「おっさん、約束してよ。俺が鍛冶ハンマーを取り返して来たらタダで錬金窯を作ってくれるってね」
「それは構わんが……本気か?」
「本気も本気。まあ楽しみに待ってなー。行くぞ」
「えっ、ああ、うん」
困惑するエリィを引きづり、俺は店の外に出る。
扉が閉まると同時に、エリィは俺の胸ぐらを掴んできた。おいどうした、痛いぞ?
「ああああああんた! 何言ってんのよ!?」
「いやだから、ドレイクから鍛冶ハンマーを取り返せばいいんだよね? 楽勝楽勝」
「どんだけ強いのよ……」
一応第五魔法まで使えることは言ったので一番強いことは知ってるはずだけど。
それでも負けるかもしれないって思われてるとは、この世界の四竜はどうなっているんだ。
おそらく、『トワイライト』のストーリーに出てきた竜はドレイクだけだ。四竜という概念は『トワイライト』にはなかった。
「別に俺一人で行くからいいよ」
「ちょ、ちょっと待ってよ。私も、行っちゃダメ?」
「止めはしないけど、死ぬかもよ?」
いや死んでも蘇生はできるんだけど、死んだ場合スキルのレベルが下がったりするからあんまり死んでほしくないんだよね。
少しは上がっていた錬金術スキルのレベルが下がったりしたら目も当てられない。
「それは……でも、私も戦えた方がいいかなって……。少しは役に立ちたいし……」
「はぁ……まあ守りながら戦えばいっか。アイテムがあればそれなりに援護もできるだろうし。うん、実戦経験も大事だから来てよ」
「わ、分かったわ!」
なんでそんなに嬉しそうな顔するんですかね。
それはともかくとして、確かに戦闘に慣れることは大事だ。いざとなったら戦えるようになるし、力があれば安心感も段違いになる。
現時点での戦力は俺と、カリウスだけだ。俺のゴーレムだけでは守れないかもしれないので、村の戦力も強化したい。
俺自身も生き物を殺すということに慣れていないから今のうちに慣れておきたいな。
そのうち人も殺すことになるのだろか。ま、その時はその時だ。覚悟だけはしておこう。
なんて物騒なことを考えながら、俺は隣の冒険者ギルドのある酒場へ向かった。
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