弱小領主のコレクター生活~アイテムチートで冒険、領地運営をしながら最強領主に成り上がります~

瀬口恭介

文字の大きさ
34 / 160
序章『始まりの領地』

034 村娘、フラワーポーションの開発に成功する

しおりを挟む

 『十二連錬金窯』を使ったポーション作りを始めてから十数日が経過した。
 そんな朝、俺は畑の様子を見に行っていた。ちなみに台風ではないので心配しなくていい。
 この日は、『グリーンクローバー』と『ピンクブロッサム』の成長具合を見る予定だ。

「こっちが『グリーンクローバー』」

 『グリーンクローバー』は巨大な三つ葉だ。色が濃く、一度に収穫できる量も多い。
 これを大量生産し、売ったりポーションに変えたりする予定だ。

「これが『ピンクブロッサム』」

 『ピンクブロッサム』は鮮やかなピンク色が特徴的な芝桜だ。
 こちらは一度に収穫できる数が少ないので高値で取引されるだろう。

 そしてそのどちらも、収穫後はゲーム内のアイテムと見た目は変わらない。
 元の種が優秀なのだろう。きちんと育て、種も確保できるようにすれば安定して生産することもできる。
 だが、問題もある。成長スピードが分からないことだ。

 何を言っているんだ、最初の栽培でだいたい把握できるじゃないか。と思うかもしれない。
 しかしそれは間違いだった。
 俺が見ている畑には育ち切った植物ではなく、今発芽したばかりの植物が植えられている。
 一度育て切った後に手に入れた種を再び植えたものだ。

「成長スピードが遅くなっている……か」

 そもそも元がおかしいのだ。一週間と少しで収穫? ふざけんな、そんなの本当に薬草の役目が消えるじゃないか、と思うほどなのだから。
 村人には種を大量に作りながら、収穫した『グリーンクローバー』と『ピンクブロッサム』を乾燥させる作業をしてもらっている。
 なのでシウニンにはいつでも売りつけることができるのだが、まだ完全に安定しているわけではないのでそれは控えたい。

 考えられるのは、アイテムがこの世界のルールに従うようになったこと。
 ゲーム内では三日だったが、環境が違うからか、最初は一週間での収穫だった。
 しかし新しくできた種を植えた場合、一週間での発芽となった。この後も成長を観察するつもりだが、おそらく『グリーンクローバー』が一か月、『ピンクブロッサム』はそれ以上とのことだ。
 薬草の上位互換である『グリーンクローバー』が一か月なのはいい。むしろ妥当どころかめっちゃ早いまである。
 だが『ピンクブロッサム』が問題だ。こちらは元々綺麗さとポーションの効果で高級品にするつもりなのだ。それがいつ収穫できるのか把握できていないのは痛い。
 こうなったら他の植物も大量に植えて、この世界の成長スピードを調べた方がいいのかもしれない。

 まあとにかく、それほど計画に問題はない。
 少しシウニンとの取引が伸びてしまったことが悔やまれるが、エリィのスキルレベリング期間が延びたと考えればいいことだろう。

* * *

 発芽を確認してから一週間が経過した。
 なんと、村人はこの世界のルールに従って成長する『グリーンクローバー』と『ピンクブロッサム』の成長期間を把握したと言い出したのだ。
 もちろん今後変わってくる可能性はあるが、『グリーンクローバー』は変わらず一か月、『ピンクブロッサム』は三か月での収穫になるらしい。
 その調査の間に乾燥させた『グリーンクローバー』の在庫は大量にできたので、後はフラワーポーションの開発に成功すれば準備は完了だ。

 なのだが。

「はぁ……はぁ……」

 その開発を行っているエリィは、額から脂汗を流しながら息を切らしていた。

「ねえ、今日はもう『ポーションL』だけ作って明日挑戦した方がいいんじゃ……」
「はぁ、はぁ……大丈夫よ、まだやれるわ」
「ほどほどにねー」

 エリィはトワ村のために、毎日毎日倒れそうなほど体力を使ってポーションを作っている。
 『ポーションL』の作成が可能になってからはそればかりをしているため、もうポーションマスターと呼んだ方がいいかもしれない。
 流石『十二連錬金窯』とエリィの気合、経験値効率が段違いだぜ。
 いくら錬金術スキルのレベルアップが早いとはいえ、体力や精神疲労が関わってくるこの世界では時間がかかる。他の錬金術師がレベルアップしないのも頷けるね。

「もう私は『グリーンポーション』を作れるだけのすきるれべる……? なのよね?」
「多分そうだね」

 毎日ポーションを作り続けているのだ、しかも『ポーションL』の作成に成功してからしばらく経過している。ほぼ間違いなくフラワーポーションを作れるだけのスキルレベルはあるだろう。

「なら後は私の集中力の問題ね。次こそは成功させるわ!」

 シャムロットで冒険者として戦っていた時は周りが強すぎたり初めてのことだらけだったためあまり出てこなかったが、元々エリィは負けず嫌いな性格でもある。
 そのためこうなったら意地でも続ける。まあ、今日ポーションが完成するなら俺も嬉しいが、流石に身体が心配だ。

「よし、行くわよ」
「今日はこれで最後だからねー」

 錬金窯に『グリーンクローバー』を五個入れ蓋をしたエリィにそう忠告する。
 シウニンに売る予定の『グリーンクローバー』を大量に消費することになるのだ。開発も、何度も『ポーションL』を作ったりして確実性を増していった方がいい。
 だから、今日の開発はこれでおしまいだ。また明日になったら何度かポーションを作った後に挑戦することになる。

 ちなみにだが、フラワーポーションの作成には水入り瓶ではなく『ポーションM』を使用する。これを知らない錬金術師は延々失敗を繰り返すこととなる。ざまあみやがれ。
 これを思い出してからはにやけが止まらなかった。なにせ黙っておけば誰かが気づくまで独占できるのだから。
 作成方法はいつか分かるとしてもそれまで稼げるのは大きい。それを取引材料として売りつけることだってできるのだ。トワ村の未来は明るい。

「ううううう!」

 エリィは歯を食いしばりながら唸る。流石にそのうーうー言うのをやめなさいとは言えない。
 極限まで高まった集中が伝わってくる。ポーションを作っていない俺まで集中してしまい、エリィの小さな唸りと錬金窯の中で錬金水が混ざる音だけが聞こえる。
 やがて水入り瓶がうっすらと緑色に変わっていく。初めての変化に希望を見出した。

「うううううりゃあああああああああ!!!!」

 エリィは最後の最後に気合を入れて魔力を注入した。
 ポーションの色が深い緑色になる。青汁のような見た目だ。
 ストレージから『グリーンポーション』を取り出し比較する。ゲーム内の『グリーンポーション』は一切ムラの無い完璧なポーションだ。
 一方エリィの作ったポーションは……色に多少ムラがあるものの、しっかりとした『グリーンポーション』だ。

「完成だ! すごいよエリィ!」
「でき、た……?」
「エリィ!?」

 完成の確認をしたその時、エリィは安心してしまったのか身体の力が抜けたように倒れる。
 隣に立っていた俺は咄嗟にエリィを抱きかかえる。なんだか今にも死にそうな勢いだが、ただの疲労と魔力不足だ。

「私、頑張ったわ……」
「うん、エリィは頑張ったよ。えらいよ」
「ふ、ふふふっ……えらいんだ。私えらいんだぁ……」

 流石に気合があっても、毎日毎日体力を限界まで使ってポーション作りをしている日々は大変だっただろう。
 もうしばらくは休んでいたい。そう思ってしまっても仕方ないほどにエリィは頑張った。

 しかし、こうやってしおらしく大人しいエリィは美少女なんだよね。
 正体がバレた時はギスギスな雰囲気にもなったが、今では普通に友達のような感覚で話すことが多い。そのため、意識してしまうのはとても恥ずかしい。
 俺は恥ずかしさを誤魔化すためにこう言った。

「明日はこれを安定して作れるように特訓しようね」
「ひぅ……」

 そんな消え入りそうなうめき声と共に、エリィは眠りについた。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

神様転生~うどんを食べてスローライフをしつつ、領地を豊かにしようとする話、の筈だったのですけれど~

於田縫紀
ファンタジー
大西彩花(香川県出身、享年29歳、独身)は転生直後、維持神を名乗る存在から、いきなり土地神を命じられた。目の前は砂浜と海。反対側は枯れたような色の草原と、所々にぽつんと高い山、そしてずっと向こうにも山。神の権能『全知』によると、この地を豊かにして人や動物を呼び込まなければ、私という土地神は消えてしまうらしい。  現状は乾燥の為、樹木も生えない状態で、あるのは草原と小動物位。私の土地神としての挑戦が、今始まる!  の前に、まずは衣食住を何とかしないと。衣はどうにでもなるらしいから、まずは食、次に住を。食べ物と言うと、やっぱり元うどん県人としては…… (カクヨムと小説家になろうにも、投稿しています) (イラストにあるピンクの化物? が何かは、お話が進めば、そのうち……)

大学生活を謳歌しようとしたら、女神の勝手で異世界に転送させられたので、復讐したいと思います

町島航太
ファンタジー
2022年2月20日。日本に住む善良な青年である泉幸助は大学合格と同時期に末期癌だという事が判明し、短い人生に幕を下ろした。死後、愛の女神アモーラに見初められた幸助は魔族と人間が争っている魔法の世界へと転生させられる事になる。命令が嫌いな幸助は使命そっちのけで魔法の世界を生きていたが、ひょんな事から自分の死因である末期癌はアモーラによるものであり、魔族討伐はアモーラの私情だという事が判明。自ら手を下すのは面倒だからという理由で夢のキャンパスライフを失った幸助はアモーラへの復讐を誓うのだった。

異世界転生~チート魔法でスローライフ

玲央
ファンタジー
【あらすじ⠀】都会で産まれ育ち、学生時代を過ごし 社会人になって早20年。 43歳になった主人公。趣味はアニメや漫画、スポーツ等 多岐に渡る。 その中でも最近嵌ってるのは「ソロキャンプ」 大型連休を利用して、 穴場スポットへやってきた! テントを建て、BBQコンロに テーブル等用意して……。 近くの川まで散歩しに来たら、 何やら動物か?の気配が…… 木の影からこっそり覗くとそこには…… キラキラと光注ぐように発光した 「え!オオカミ!」 3メートルはありそうな巨大なオオカミが!! 急いでテントまで戻ってくると 「え!ここどこだ??」 都会の生活に疲れた主人公が、 異世界へ転生して 冒険者になって 魔物を倒したり、現代知識で商売したり…… 。 恋愛は多分ありません。 基本スローライフを目指してます(笑) ※挿絵有りますが、自作です。 無断転載はしてません。 イラストは、あくまで私のイメージです ※当初恋愛無しで進めようと書いていましたが 少し趣向を変えて、 若干ですが恋愛有りになります。 ※カクヨム、なろうでも公開しています

異世界転移物語

月夜
ファンタジー
このところ、日本各地で謎の地震が頻発していた。そんなある日、都内の大学に通う僕(田所健太)は、地震が起こったときのために、部屋で非常持出袋を整理していた。すると、突然、めまいに襲われ、次に気づいたときは、深い森の中に迷い込んでいたのだ……

神様から転生スキルとして鑑定能力とリペア能力を授けられた理由

瀬乃一空
ファンタジー
普通の闇バイトだと思って気軽に応募したところ俺は某国の傭兵部隊に入れられた。しかし、ちょっとした俺のミスから呆気なく仲間7人とともに爆死。気が付くと目の前に神様が……。 神様は俺を異世界転生させる代わりに「罪業の柩」なるものを探すよう命じる。鑑定スキルや修復スキル、イケメン、その他を与えられることを条件に取りあえず承諾したものの、どうしたらよいか分からず、転生した途端、途方にくれるエルン。

ジャングリラ~悪魔に屠られ魔王転生。死の森を楽園に変える物語~

とんがり頭のカモノハシ
ファンタジー
「別の世界から勇者を召喚する卑怯な手口」に業を煮やした堕天使・ルシファーにより、異世界へ魔王として転生させられた大学生・左丹龍之介。 先代・魔王が勇者により討伐されて100年――。 龍之介が見たものは、人魔戦争に敗れた魔族が、辺境の森で厳しい生活を余儀なくされている姿だった。 魔族の生活向上を目指し、龍之介は元魔王軍の四天王、悪魔公のリリス、フェンリルのロキア、妖狐の緋魅狐、古代龍のアモンを次々に配下に収めていく。 バラバラだった魔族を再び一つにした龍之介は、転生前の知識と異世界の人間の暮らしを参考に、森の中へ楽園を作るべく奔走するのだが……

おっさん武闘家、幼女の教え子達と十年後に再会、実はそれぞれ炎・氷・雷の精霊の王女だった彼女達に言い寄られつつ世界を救い英雄になってしまう

お餅ミトコンドリア
ファンタジー
 パーチ、三十五歳。五歳の時から三十年間修行してきた武闘家。  だが、全くの無名。  彼は、とある村で武闘家の道場を経営しており、〝拳を使った戦い方〟を弟子たちに教えている。  若い時には「冒険者になって、有名になるんだ!」などと大きな夢を持っていたものだが、自分の道場に来る若者たちが全員〝天才〟で、自分との才能の差を感じて、もう諦めてしまった。  弟子たちとの、のんびりとした穏やかな日々。  独身の彼は、そんな彼ら彼女らのことを〝家族〟のように感じており、「こんな毎日も悪くない」と思っていた。  が、ある日。 「お久しぶりです、師匠!」  絶世の美少女が家を訪れた。  彼女は、十年前に、他の二人の幼い少女と一緒に山の中で獣(とパーチは思い込んでいるが、実はモンスター)に襲われていたところをパーチが助けて、その場で数時間ほど稽古をつけて、自分たちだけで戦える力をつけさせた、という女の子だった。 「私は今、アイスブラット王国の〝守護精霊〟をやっていまして」  精霊を自称する彼女は、「ちょ、ちょっと待ってくれ」と混乱するパーチに構わず、ニッコリ笑いながら畳み掛ける。 「そこで師匠には、私たちと一緒に〝魔王〟を倒して欲しいんです!」  これは、〝弟子たちがあっと言う間に強くなるのは、師匠である自分の特殊な力ゆえ〟であることに気付かず、〝実は最強の実力を持っている〟ことにも全く気付いていない男が、〝実は精霊だった美少女たち〟と再会し、言い寄られ、弟子たちに愛され、弟子以外の者たちからも尊敬され、世界を救って英雄になってしまう物語。 (※第18回ファンタジー小説大賞に参加しています。 もし宜しければ【お気に入り登録】で応援して頂けましたら嬉しいです! 何卒宜しくお願いいたします!)

つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました

蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈ 絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。 絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!! 聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ! ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!! +++++ ・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)

処理中です...