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第一章『黄金の果実編』
054 コレクター、第五魔法を連発する
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「やっと終わったぁぁぁ……」
「こりゃ、確かにシャムロットの魔術師でも対応できないわな」
全てのフラワープラントを倒し終え、エリィとカリウスは息を切らしながら座り込んだ。
無理はない、大量のプラントを倒している最中に別のフラワープラントが合流し再びプラントを呼び出し始めたのだから。
最初のプラントはそれほど苦戦することなく倒したが、流石に数が多いとど疲れもする。
俺一人が全力を出せばすぐに終わるが、あの数を魔法で倒そうと考えると大量の魔力が必要な第五魔法や第四魔法を何度か使うことになるのだ。
始まったばかりで魔力を減らすべきではないだろう。
「それよりさっきのなんだよ、あんな戦い方初めて見たぞ」
カリウスが俺に対し引きながらそう言ってくる。
あんな戦い方、と言われるのも慣れた。二刀の剣を振り回し、ただ力任せに斬る。それを繰り返しながら一気に倒す。これが俺の戦い方だ。
元ギルドメンバーからは「ごり押しにも程がある」というありがたいお言葉をいただいたこともある。
「とにかく暴れるのが俺の戦闘スタイルだからね」
「それにしたって化け物でしょ……」
間近で俺の剣術を見たエリィもドン引きしながらそう呟いた。
いやいや、エリィの戦闘もだいぶぶっ飛んでたでしょ。ほとんど光の矢連射してただけじゃん。
セラフィーの魔力のおかげで無双ができるのだ。羨ましいことで。
「落ち着いたし、探索しようか」
二人共息切れをしていたが、もうだいぶ落ち着いてきたようだ。
さて、探索探索。『黄金の果実』はどこだろうか。
「おい、なんか揺れてないか?」
「ほんとだ、地震かな」
カリウスが地面の揺れに気が付いた。
ドシンドシンと地面が揺れ、森が揺れる。
遠くに見える木が大きく揺れ……倒れ……倒れ?
倒れてる! 木が倒れてるよ!!!
しかもこっちに近づいてきてるよ! 明らかにモンスターだよ!
「うがああああああああ!!! 助けろテメーらああああ!!!」
「何してんだあいつ」
「後ろの、後ろのやばいわよ!」
先頭にジャスターいるよ! 何してんだよ!!!
背後には巨大なトカゲのような地竜が木をなぎ倒しながら走っていた。まあつまり、ゲーム用語でいうトレイン行為である。
ジャスターが焦っているのを見るに、モンスターを押し付けてプレイヤーを倒す行為であるMPKではないらしい。
だとしても迷惑すぎる。
「お前それトレインだからね?」
「トレインってなんだよ! それより助けろ!」
合流するように逃げながらトレイン行為を指摘するが、意味が伝わっていない。
なんだ、ジャスターはプレイヤーじゃないのか。てっきり関係があると思っていたのに。
それはそれとしてこのままではいけない。空に逃げることができないカリウスがやられる。
こんなことなら〈浮遊〉の飛び方教えておけばよかった。
「押し付けといて助けろだぁ? 何言ってやがる!」
「でも私たちも危ないわよ! ああもう、私飛ぶからね!」
ジャスターに怒るカリウスと、空に逃げるために天使の羽を出し飛び立つエリィ。
うーん、カオス。何もかもジャスターが悪い。
「仕方ない、やりますかぁ」
走りながら『職業の書』を取り出し、職業を【魔術師《ウィザード》】に変更する。
いつもの魔術師ローブに身を包み、後ろ目に地竜、おそらくフォレスドラゴンに狙いを定める。
「潰れろ! 〈隕石〉!」
標的であるフォレスドラゴンの全身に大中様々な大きさの魔法陣が展開される。
中心に巨大な魔法陣、その周りに中くらいの魔法陣が沢山だ。
視線を空に向けると、何かが落ちてくるのが見える。巨大な隕石が一つと、比べると小さい、十分大きな隕石が複数。
宇宙空間に巨大な岩を召喚し、魔力を纏わせ地上に落とす。これが〈隕石〉だ。
「グオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!」
魔法陣に着弾した巨大隕石に押し潰されながら、フォレスドラゴンは咆哮を轟かせる。
最初にこの世界に来た時はドラゴンの咆哮を怖がっていたが、今となってはさほど恐怖を感じなくなってしまった。
「私も!」
隕石に押し潰されているフォレスドラゴンに、エリィが追撃を加える。
お得意の光の矢連射だ。いくつもの光の矢が、空中に線を描きながらフォレスドラゴンを襲う。
まだ足りない。レイドボスモンスターなのだから、これくらいで足りるわけがない。
「じゃ、ちょっと行ってくるね!」
「おう、やってこいやってこい」
カリウスにその場を離れることを伝え、俺はフォレスドラゴンに近づく。
ちょうど〈隕石〉の効果が終わり、ダメージによるスタンが消えるタイミングだったため、フォレスドラゴンは俺めがけて巨大な爪を振りかざしてくる。
それを避けながら、足元に潜り込んで魔法の準備をする。〈隕石〉のクールタイムも終わり、魔法のチャージをする時間も取れる。勝ったな。
「〈疑似神雷〉」
勝利を確信し、思わず笑みを浮かべながら魔法を唱える。
身体が雷に包まれ、身体を中心に超絶巨大な稲妻を巻き起こす。
地上から天空へ昇っていく落雷。人間が疑似的に神雷を再現する魔法、〈疑似神雷〉。
まさかこの世界で使う時が来るなんて思わなかった。
「グ、オ……ォォォォォン……」
「うっし、終わり!」
口から煙を吐き、白目をむきながら倒れたフォレスドラゴンを背後に伸びをする。
久々に魔力を大量に消費した。どっと疲れるこの感覚、モンスターを倒したという爽快感も相まって気持ちがいい。
問題は、この後も戦わなければならないことだ。そう考えるとこの疲労感は気持ち良くない。悲しみ。
気だるげにカリウスのいる場所に戻ると、ジャスターがカタカタと震えていた。
「は、はは……想像以上だぜ」
そう呟きながら、ジャスターは腰を抜かしたようでぺたんと座り込んでしまった。
なんだ、いきなり勝負を仕掛けてきたからプレイヤーくらい強いと思ったのに。
それはそれとしてジャスターには気になることがたくさんあるんだ。いい機会だし聞かせてもらおう。
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